【試乗インプレッション】 PAJERO
2015.7.26
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四輪駆動車
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三菱
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常に時代の先端を走る、パジェロの進化
パジェロは三菱ジープ譲りのオフロード走破性を備えながら、日常で快適に乗れることをコンセプトに掲げてデビューを果たしたモデルだ。
90年代に入ると大ヒットを果たし、RVブームを牽引する存在となり、三菱ジープに並び、パジェロというブランドを打ち立てた。
そして、99年には、そのコンセプトを変えることなく、ラグジュアリーというキーワードを掲げて、4輪独立懸架サスペンション、ラダーフレームビルトイン モノコックボディといった、オンロードでの快適性を語る際に不可欠なハードウェアをいち早く採用したモデルへとスイッチ。
最新モデルは、そのバランスをさらに追求したモデルへと進化している。
Stage 1:オンロード〜重厚感があふれるパジェロらしい快適性
試乗してみると、オンロードでは、オフローダーたる豊かなサスペンションストロークを、上手に乗り心地へ仕立ていることが印象に残った。
と言っても、それは”揺れ”が大きいというフィーリングではなく、路面からの衝撃を確実にいなしながら、余計な動きをきっちりと抑え込んでおり、まさに快適性を強く感じ取れるものだった。
駆動モードは前後トルク配分を33:67としたフルタイム4WDを選んだが、4WDたる安定性とFRライクな自然なハンドリングを上手くバランスさせており、そのフィーリングがとてもいい。
ハンドリングは、クイックさがもたらす意図的なスポーティさではなく、パジェロらしいゆったりとした乗り味に見合ったもので、まさに素直、意のままのハンドリングと表現できるものだ。
オフロードコースへ、パジェロのポテンシャルを検証
パジェロのオフロード走破性は期待以上のものだった。
オフロード走破性を語る際にキーとなるのは、まずはグランドクリアランスだ。いくら優れた4WDシステムをもってしても、ボディが路面に触れてしまっては、その機能を生かすことはできない。
テスト車両は、ロングボディであり、さらにサイドステップが付いていたため、オフロード走行において、路面にボディをヒットさせないかと、気を遣うシーンがあった。
しかし、バンパー下、フロア下のクリアランスがしっかりと確保されており、実際に走らせてみると、ボディをヒットさせてしまうことはなく、そこに最低地上 高や3アングル(アプローチ/ディバーチャー/ランプブレークオーバーアングル)には表現されない部分に至るまでの”クリアランス”へのこだわり、つま り、オフローダーたる”こだわり”と”らしさ”を感じた。
Stage 2:ダート〜安定感あるシャシーによる高い操縦性
ダートランのフィールドは、少々凹凸があって、フラットと表現するには気が引けるシーンだったが、スピードを高めていっても、サスペンションのストローク量としなやかさによって、タイヤは路面をしっかりと捉えつつ、その入力をしっかりと受け止めてくれる。
ボディはフラット感を保ちながらタイヤのみを上下させているといったフィーリングからは、タイヤのばたつきを感じさせることなく、操縦性はもちろんのこ と、ダートでありながら、乗り心地の良さが印象に残ったほどだ。これは、4輪独立懸架サスペンションの恩恵はもちろんのこと、シャシーを支えるボディ剛性 のレベルの高さの証でもある。
もちろん、グリップ力、グリップ感も的確であり、そこに意のままに操れるという愉しさがある。このダートでは、ラリーシーンで培われた性能が、最新パジェロにも活かされていることを強く感じた。
Stage 3:モーグル〜4輪独立懸架サスペンションでも頼もしさあり!
モーグルのような、タイヤが路面から簡単に浮いてしまうようなシーンでは、リジッドサスペンションのメリットである、縮んだ方のタイヤが、伸びた側のタイ ヤを路面へと強く押し付ける効果が有利であり、パジェロに採用にされている4輪独立懸架サスペンションは不利な面がある。
しかし、その分をトラクションコントロールがフォローしてくれる。
タイヤが少々路面から離れようとも、アクセルペダルを踏み込んで待っていると、トラクションコントロールシステムが作動して、エンジン出力とグリップを失っているタイヤ側のブレーキを制御し、グリップしているタイヤへと的確なトルクを伝達させ、クルマを前進させてくれる。
つまり、4輪独立懸架サスペンションでも、オフロード走破性において不足を感じなかった。
と書くと、多くのSUVにも同様の機能があり、それらと同じでは!? と思われるかもしれないが、パジェロのトラクションコントロールシステムはかなりハイレベルだ。
分かりやすい例(違い)を挙げると、テストフィールドに選んだモーグルは、最後に一段上りきって終わるのだが、そこでリアタイヤが路面から離れようとも、トラクションコントロールによって、なんとボディを持ち上げるかのように前進させてしまうのだ。
こういったシーンで活躍する駆動モードはもちろんローギア直結4WD(4LLc)であり、ローレンジを備えていることも、パジェロのアドバンテージとなっ ている。今回は活躍させる出番はなかったが、オプションとして設定されているリアデフロックをオンにすると、オフロード走破性は、さらに引き上げることが 出来るのだ。
Stage 4:ヒルクライム&ダウン〜ディーゼル、ローギアがもたらす安心感
ヒルクライム、ヒルダウンといったシーンは、「走れることが当たり前ですが、何か?」とパジェロに問われているかのように、難なくこなしてしまった。
特にヒルクライムにおいては、低回転域から発生している太いトルクによって、アクセルを少し踏み込んだだけで上っていってしまった。
そして、そこに多少の凹凸があろうとも、しなやかなサスペンションがタイヤをしっかりと接地させてくれるため、グリップを失うようなシーンを見せることもなかった。
パジェロのディーゼルエンジンは、改良を重ね、太いトルクというディーゼルらしさを残したままに、かつて不得意としていた扱いやすさを高めていた。それは オンロードはもちろんだが、時にじんわりとしたアクセルワークが求められ、時に大きなトルク(瞬発力)が求められるオフロード走行においても、ドライバー の期待に応えてくれるものだったこともお伝えしておきたい。
試乗を終えて、パジェロのアドバンテージとは、オフローダーとしてのハイレベルなオフロード走破性を備えながらも、オンロードでの快適性(オフロードも含めてかも……)も極めてしまうという、そのバランスの高さにあることを感じた。
それは、まさにパジェロでしか味わえない、愉しめないことばかりであり、似たようなハードウェアやスペックを持ったモデルとは異なるもの。
そして、パジェロには、安易な比較だけでは評価できない、”奥深さ”がたくさんあることも、見つけることが出来た。
オフローダーたるポテンシャルとして、渡河性能も十分に確保してあり、災害時といった万が一の時にも、心強さがある。泥濘地では、グリップしているタイヤへと的確にトルクを伝達し、クルマを前進させる。
タイヤは、オンロードからオフロードまで、まさにオールラウンドなシーンを考慮したキャラクターではあるが、写真のような泥シーンレベルでも、ドライバーの期待に十分に応えてくれるポテンシャルを持つ。
4世代目となる現行型パジェロ。2世代目に搭載したスーパーセレクト4WDをスーパーセレクト4WD IIへと進化させ、3世代目にて採用したラダーフレームビルトインモノコックボディ 、4輪独立懸架サスペンションを踏襲しながら、今に求められる快適性と、パジェロらしさであるオフロード走破性を高次元で両立させている。
タイヤが簡単に路面から離れてしまうようなモーグル地形では、パジェロの4輪独立懸架サスペンションは、リジットサスと比較すると、トラクションの面で少々の不利があるのも事実。
しかし、サスペンションストローク量をしっかりと確保した上で、ローギア&デフロック機構といった4WDシステム、さらにトラクションコントロールによるフォローによって、4輪独立懸架サスながらも高い走破性を手に入れている。
写真に写っているリアサス(右リア)の縮みもポイントだ。
今回のテストコースには、北アルプスの麓、長野県大町にある信州大町チャレンジフィールドを選んだ。山間地形を活かしたコースは、ロングヒルクライム、 ダート、様々なレベルのモーグルなど、ノーマル車であっても、オフロードランを存分に愉しむことができる。ちなみにオーナーの結城氏は、偶然にも三菱自動 車のパジェロミニオーナーだ。
◆取材協力:信州大町チャレンジフィールド
テスト車両のパワーユニットは3.2Lコモンレール式クリーンディーゼルエンジン。最高出力は140kw(190ps)/3500rpm、最大トルクは441N・m(45.0kg-m)/2000rpmを誇る。
7月16日に一部改良が行われ、オートマチックハイビーム、内装の質感アップ、新外板色の追加などを行っている。
◆三菱自動車 パジェロ ホームページ