【紹介/試走】RANGE ROVER SPORT(レンジローバー・スポーツ)
2014.11.7
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プレミアムSUV
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LAND ROVER
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日本仕様はV8&V6ガソリン
ローレンジはオプション設定
レンジローバースポーツは、オンロード・パフォーマンスに主眼を置くスポーツ・ツアラーとして2005年に登場した、ランドローバーとしては5番目のモデル。
初代モデルは当時のディスカバリー3とシャーシーを共有し、日本では、NAとスーパーチャージャージャー付のV8ガソリンを搭載するモデルがラインナップされた。
“オンロードに特化”を堂々と宣言しつつもオフロード性能を犠牲にしていない…というアピールにランドローバーらしさを感じるモデルだったが、2013年春にデビューした2代目では、よりオンロード寄りに専用設計され、75%のパーツが専用化されている。
この2代目レンジローバースポーツ、日本では昨年11月に発表され、現在2種類のエンジン、3タイプのグレードで販売されている。
最上級グレードの「Autobiography Dynamic(オートバイオグラフィーダイナミック)」には、最高出力510PSの5リッターV8スーパーチャージド・ガソリン、そして「HSE」「SE」には、同340PSの3リッターV6スーパーチャージド・ガソリンユニットを搭載、全車とも電子制御式8速ATが組み合わされている。
この2代目レンジローバースポーツ日本仕様が、”よりオンロード寄り”であることを示す最たるモノとしては、最上級モデル以外は「Loレンジがオプション」であること、つまり、クロカン走行で必須となる2速トランスファーは、「HSE」「SE」には標準装備されない(=Hiレンジのみ)…という点だろう。
スポーツツアラーと言えども「オフロード性能を犠牲にしない」コンセプトを貫いてきたランドローバーも、いよいよ時代の波には抗えず…の感もあるが、同社としては最低限のラインとして2速トランスファーを廃止せず、オプション設定にとどめた、ということなのだろう。
なお、本国では、3リッターV6ディーゼル+電気モーターのハイブリッド・モデルや、最高出力550PSを誇る5リッターV8モデル(レンジローバースポーツSVR)等が存在するが、ご存知のとおり現状日本ではラインナップされていない。
アルミ製モノコックで大胆な軽量化
ルックスも独自のデザインに進化
先代、つまり初代モデルは、シャーシーはディスカバリーながら当時のレンジローバーをそのままローダウンしたような外観と、レンジローバーのそれを簡素化したインテリア…といった印象のクルマであったが、現行モデルは、先にデビューしたイヴォーク似のルックスにレンジローバーの流れを汲むシルエットが融合し、現行レンジローバーとはひと味違った堂々たる存在を放っている。
ちなみに、車体サイズとしてはレンジローバーより全長で150mm短く、全高で65mm低くなっており、また、同型エンジン搭載のレンジローバーより90kg軽いという仕様。
この軽量化については、レンジローバーと同じオール・アルミニウム製モノコック構造の採用によって、先代モデルより240kgもの軽量化を果たしているとのことで、ウインドシールド傾斜角やルーフラインによる空力特性の改善も相まって、よりオンロード性能に特化したことが数値的にも容易に見てとれる仕様と言える。
数ある”進化項目”の中には、「渡河水深限界が850mmに引き上げられ、業界初の水深レベル・モニタリング機構も採用(オプション)」が謳われており、Loレンジを標準装備から外しておきながら何が渡河性能だ? と失笑を誘うが、これもギミックのひとつと理解すべきなのだろう。
強烈なV8パワーは要注意!?
“踏める” V6こそストレスフリー
0→100km/h加速5.3秒を誇るスーパーチャージャー付き5リッターV8の加速性能は強烈のひと言に尽きる。急勾配の直線をまるで平地を走っているかのように加速する。
ただし、強烈ではあるが凶暴ではない。SUVの中には、もともとのベースがトラックで、シャーシーの進化が追いついていないまま、現代のハイパワーエンジンを載せてしまったようなモデルもあり、その手のSUVでは凶暴な加速を示すモノもある。
このレンジローバースポーツV8には、そのようなハイパワーモデルとは一線を画す安定感があり、ほとんど不安を感じることなくとんでもない速度域に達することがあるので、逆に注意が必要だ。
電子制御によってセッティングを最適化するエアサスがコーナリング時のロールをキッチリ抑えると同時に、前後左右輪へのトルク配分や制動を細かく行ってアンダーステアを軽減する…という合わせ技が、ごく自然にスムーズに行われるため、不安を感じることなく、効率良く曲がることができる。
3リッターV6に関しても、V8と比較すれば加速性能に大きな差を感じるものの、こちらもスペックとしては0→100km/h加速7.2秒と、ストレスのないドライビングが約束されていることに変わりはない。
と言うより、むしろ、V8よりもアクセルを踏める分、ストレスがなく気持ちが良い…というのが正直な印象である。
RRの名に恥じないインテリア
“SPORT”が果たす重要な役割
“スポーツ”の名が冠されたからと言って、居住性やユーティリティー面での心配はご無用。そこはやはりレンジローバーである。
伝統のコマンドポジションは、SPORTであっても健在。グレードによって多少の質感差はあるものの、「レンジローバーをスポーティーに演出するとこうなるだろう」というラインがきっちり押さえられている。
また、電動展開・収納式のサードシート(2座)が全車にオプション設定されており、電動である必要性はともかく、ユーザーにとって有益な設定であると思う。
なお、少々気になったのは、メーターパネルが全て液晶画面というバーチャル・インストルメントパネル。多様な情報を効率良く表示できるスグレモノだが、これ表示が消えてしまったら…と思うとやや不安。計器類は昔ながらの指針式が安心だし、何より高級感の演出はアナログの方がやりやすいのでは? と個人的には思ったりする。
目新しいところでは、ディスカバリー・スポーツのデビューが話題だが、この「SPORT」というコンセプトの派生モデルは、単に”オンロード用4×4”ということだけでなく、さまざまな可能性を感じさせる。
原則的に全てが四駆であるというランドローバーの場合は、オンロード向けのSPORTが設定されることによって、その母体、つまりここで言えばレンジローバーの立ち位置や存在意義がより明確になるはず。そういった意味でも、このレンジローバーSPORTは重要な役割を果たすことになりそうだ。
SEのインパネ。デザインのベースはレンジローバーだが、スポーティーな仕上がり。
テレインレスポンスの操作ダイアル。HSE、SEはオプションのオフロードパックを選ばないとLoレンジが装備されない。
左はSE、HSEに標準装備の5インチ液晶付きアナログメーター。右はオプションのバーチャル・インストルメントパネル(オートバイオグラフィーダイナミックには標準装備)。
前後とも包み込まれるような感覚のレザーシート。シートヒーターに加えてシートクーラーも装着可能。
リアシートは分割可倒式。オプションで電動式展開/格納可能なサードシートを選ぶこともできる。
エアサスは、最も低いアクセスハイト(右)から、標準のオフロードハイト(左)まで最大115mmの車高調整が可能。
フロントサス(左)はダブルウイッシュボーン式エアサス。リア(下)はマルチリンクを採用したエアサス。
5.0リッターV8・DOHC スーパーチャージャー付きガソリンエンジン。最高出力375kW(510PS)/6,500rpm、最大トルク625Nm(63.8kgm)/2,500rpmを誇る。
3.0リッターV6・DOHC スーパーチャージャー付きガソリンエンジン。こちらは最高出力250kW(340PS)/6,500rpm、最大トルク450Nm(45.0kgm)/3,500rpmを発生。
オートバイオグラフィーダイナミックに設定される標準タイヤは、前後とも275/45R21サイズ。