【紹介/試走】 BMW X5 xDrive40e
2016.9.10
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プレミアムSUV
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BMW
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スポーツ・ハイブリッド
日本では13モデルをラインナップ
i8の技術をxDriveと融合させた
BMW初のクロスオーバー4×4として2000年にデビューしてから早16年。今や5種類のモデルを擁する大所帯Xファミリーの長として、充分な貫禄と実力を備えたX5。都心部では、その姿を見かけない日はない…と言っても良いほど“馴染みの顔”となっているXシリーズだが、見分け方を知っているか、あるいは並べて比較してみないことには、パッと見X3やX1と見分けが付きにくいクルマでもある。
しかし、実際に乗り込むと、サイズはもちろんのこと、乗り込む際のドアの重さや、インテリアの質感、密度だけでもそれと分かるくらいの“X5感”が伝わってくる。
日本市場での現行型X5は、3リッター直6ディーゼルターボ搭載の「35d」、3リッター直6ガソリンターボ搭載の「35i」、2リッター直4ガソリンターボ+電気モーター搭載の「40e」、そして4.4リッターV8ガソリンターボ搭載の「50i」の4タイプをラインナップ。それぞれに「SE(35dのみ)」「Standard」「xLine」「M Sport」のグレードが用意され、計13モデルが存在する。全車8速AT、右ハンドル仕様だ。
今回の試乗車両は、ちょうど1年前に登場し、日本では9月に発売されたプラグインハイブリッド車(PHV)である「40e」。同じBMWのEV「i8」でお馴染みのPHV技術(BMW eDriveテクノロジー)を、独自の4×4システムである「xDrive」に採り入れた高効率パワートレインを持ったPHVモデルだ。
エンジンは2リッター直4DOHCガソリンターボで、最高出力180kW(245PS)、最大トルク35.7kgm(350Nm)というスペック。これにリチウムイオンバッテリーで駆動する電気モーター(113PS/250Nm)がエンジン出力軸の後部に配置される。
フル充電状態でスタートし、120km/h以下の走行であれば、電気モーターの駆動力だけで30.8km走行可能とのことで、走り方によっては相当の省燃費運転も期待できるわけだ。
ハイブリッドを制御する3モード
完全EV走行も可能なPHV
40eのハイブリッド機構は「インテリジェント・エネルギー・マネジメント・システム」と呼ばれる電子制御システムによってパワートレインを制御しており、ドライバーは3つのモードを選択できる。
「AUTO eDrive モード」は、速度とバッテリー充電状態に応じてモーターとエンジンを効率的に相互制御するモード。バッテリー充電状態が12%~100% の場合は、最高70km/h の速度までモーターのみの走行が可能。70km/h 以上の走行やフル加速時には、エンジンが始動。
「MAX eDrive モード」は、モーターだけのドライビング・モード。最高120km/h までは、完全なゼロ・エミッション走行が可能。ただし、120km/h以上、あるいはフル加速時にはエンジンが始動する。
そして、「SAVE BATTERY モード」は、バッテリー残量の低減を抑制しつつ、エンジンブレーキ回生システムを効率良く働かせてバッテリーを積極的にチャージする。バッテリー充電量が低下した時に選択するモードだ。
これらはフロアコンソールにある「eDrive」ボタンで切り換え操作をすると、インパネ中央のスクリーンにそれぞれのモードでのエネルギーフローチャートが表示されるので、充電状況/エンジン駆動/モーター駆動がよく分かり、現時点で自分が必要としているモードがどれなのかが理解しやすい。つまり、ドライバーは、各モードの機能を暗記しておく必要はない。
試乗時は基本的に「AUTO eDrive モード」で走行したが、街中でおとなしく流している分には、つまり、急加速や“猛暑日にエアコン全開”等を試みたりしなければ、ほとんどエンジンは始動しないまま走り続ける。これなら、「平日は近所の買い物にしか使わない」というオーナーの場合、給油は2〜3ヶ月に1回なんてケースもあるかも知れない。
2リッターでもパワフル
電子制御の脚も絶妙セッティング
発進加速、追い越し加速時における回転の立ち上がりの鋭さはもちろん、常用回転域での余裕あるパワー/トルク感は実に快適で、エンジンとモーターの制御の絶妙さを感じる部分でもある。2リッターガソリンターボでは苦しそうな低中回転域を、発進時から最大トルクを発揮するモーターがうまくカバーし、上から下まで全体的な力強さを感じる。
このことは、アップダウンの激しいワインディング路などでうっかりエンジン回転を落としてしまったときなどにも実感できる。
サスペンションはフロント:ダブルウィッシュボーン+コイル、リア:マルチリンクのエアサスが採用されている。手元のCOMFORT/SPORTスイッチにより、ATシフトスケジュールとともにダンパーの減衰力やエアサスのばねレートも変化するが、ソフトで乗り心地の良いCONFORTのままでもコーナーではしっかり踏ん張り、ローリングも瞬時に収まるので、これは電子制御ダンピングコントロール機構が確実に仕事をしているようだ。
落ち着いたインテリア
微調整可能なフロントシート
インテリアは、豪華な中にも落ち着きのある機能的なデザインが踏襲されていて、一種の安心感がある。最近ではメーターパネル全体が液晶スクリーンであることも珍しくなくなっており、BMWのアナログ二眼メーターを見る度に“バッテリーがダウンしても消えないメーター”であることに安堵する。
このほか、背もたれに“関節”が追加され、背中と腰の角度がより細かく調整できるようになっているフロントシートの出来の良さは、硬めのクッションとホールド性能の優秀さも含めて特筆しておきたい。
【細部写真】
最高出力180kW(245PS)/5,000rpm、最大トルク350Nm/1,250〜4,800rpmを発生する1,997cc 直列4気筒DOHCガソリンターボエンジン。エンジン後方に配置される電気モーターは最高出力113PS、最大トルク250Nm。
【騒音計測データ】
●車内・・・・39.0dB
●ボンネット閉・・・・60.0dB
●ボンネット開・・・・66.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。
上:シンプルなアナログ二眼メーター。視認性、信頼性は抜群だ。
下:ドライビングポジションがカチッと決まるコックピット。落ち着いたデザインと質感の高いトリムが高級感を高める。
トランスミッションは、8 速ATを採用。シフトレバーの手前右端は「eDrive」スイッチ。ハイブリッドシステムを制御する3つのモードが選べる。
ダッシュボード中央の大型スクリーンには、カーナビ地図のほか、多岐にわたる情報を表示できる。燃費のほか「電費」も!
背もたれの中央部分にも関節のあるフロントシート(右)。リアシート(左)は3人掛けでスライド不可。
リアシートの背もたれは40:20:40分割式。4人乗車+長尺物積載も可能になっている。ラゲッジルームの床下収納スペースには充電用ケーブルが。
フロントサスは、ダブルウィッシュボーン式(左)、リアサス(右)はマルチリンク式エアサス。
タイヤサイズは255/50R19。これはホイ-ルは9.0J×19サイズの「スター・スポークスタイリング490」を装着。
文/内藤知己
写真/佐久間清人