【紹介/試走】 LAND CRUISER 300 『OFF ROAD TEST DRIVE』
2021.10.27
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トヨタ
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磨かれた “素のポテンシャル”
お馴染みSAFでオフロード試走
この夏、先代の200系から14年振りのフルモデルチェンジを果たしたトヨタ・ランドクルーザー300系。前回のオンロード試走(※下記リンク参照)に続き、今回はオフロード試走である。
トヨタが用意した試乗コースである「さなげアドベンチャーフィールド(SAF)」は、初心者からベテラン向けまで幅広い難易度のセクションが設定されたクロスカントリーコースとして知られるが、今回はこのランクル300系試乗のための特設セクションなども用意され、主に極低速で走破する系統のオフロード性能を体感しやすく、また視覚的にも確認しやすいコースレイアウトとなっていた。
今回の試乗車両は、GR SPORT(ガソリン/ディーゼル)、VX(ガソリン)、AX(ガソリン)の3グレード4タイプ。今回のようなオフロードで威力を発揮する電子制御システムを全て標準装備しているGR SPORTに対して、AVS(Adaptive VariableSuspension=アダプティブ・バリアブル・サスペンションシステム)やE-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System=エレクトロニック・キネティック・ダイナミック・サスペンションシステム)といったサスまわりの電子制御システムの設定がないVXやAXでは、「素の実力」も試すことができたので有意義なクロカン試走となった。
TEST DRIVE 1:ダウンヒル
まず最初に試乗したステージは、林間コースに常設されている全長55m、斜度15度のダウンヒル・セクション。L4/1速でも、ATということもあって降坂速度が速すぎるため、ここはダウンヒルアシストコントロール(DAC)スイッチをオンにする。
5段階(約1〜5km/h)に速度を設定でき、途中で切り替えも可能。アクセルやブレーキ操作を行えば、そちらが優先となるのでスムースに操作できる。速度を切り換えても徐々に、ごく自然に設定値まで加減速するので安心感がある点が好印象。
加えて、システム作動時、先代の200系ではアクチュエーターが「ガリガリガリ」と盛大な作動ノイズを発したが、この300系で進化したそれは非常に静かだった。
この下り勾配は、途中、掘れていたり滑る場所が数か所あり、4輪のグリップは必ずしも一定していない路面コンディションだったが、DACによるきめの細かい制御で車体の安定はもちろん、速度調整等、ドライバーの意思でコントロールする安心感も加味されたダウンヒル走行が体感できた。
TEST DRIVE 2:ウォーターハザード
近頃では「最大渡河性能」という言葉をあまり聞かなくなった気がするが、四駆が “働くクルマ” の象徴だった時代は、4×4のカタログに必ず明記されていた重要な性能のひとつだった。
雑な言い方をすれば、要は「最大で水深何センチまでの河を渡ることができるか」という数値の話だ。そして、ランクル300のカタログにはその数値が700mmと明記されており、そのために電装系部品の防水処理やエンジンまわりのオイルシールの防水対策強化などがきちんと行われている。
林間コース内に特設された巨大な水溜まりは、試乗車両が履いている265/65R18サイズのタイヤがほぼ水没する深さに設定されていたので、おそらく水深700mmは超えていたと思われる。しかし、水の中特有のハンドルを取られる感覚も無く、ほとんど通常時と変わらないまま操舵でき、接地感も充分なステア・フィーリングと言って良い。また、ヘッドライトや車幅灯が高いポジションに配置されていることも、この渡河性能にひと役買っているようだ。
TEST DRIVE 3:L4走行
道幅の狭い林間コースをL4で移動していると、ガソリン車はさほどエンジン回転も上がらずスイスイ走るのに対して、ディーゼル車は回転が上がり気味でスピードも乗らない、気がする。
はて? ATの変速比からトランスファー、そして最終減速比まで(もっと言えばタイヤ外径も)、ガソリン車とディーゼル車の設定は全く同じはずだが… と、首をかしげたが、これは単に両者のシフトスケジュールの違いだった。
つまり、同じ10速ATながら、ガソリン車は比較的早めにシフトアップするのに対して、ディーゼル車はある程度1速で引っ張らないとシフトアップしない。したがって、フラットな林道をスイスイ走るにはガソリン車が快適で、逆にジワジワ進む必要がある地形や勾配では、ディーゼル車の方が抜群の安定感を発揮する感じだ。
ちなみにこれは林道でのL4走行時のみに感じたことであり、オンロードのH4走行時には感じなかった。むしろオンロードではディーゼルであることを忘れるほどの俊敏さと軽快さ、そして静粛性の高さが際立っているのだ。
TEST DRIVE 4:モーグル
さて、ランクル300の真骨頂、つまり最注目ポイントはこのモーグル・ステージと言っても過言ではないだろう。
前回のオンロード試走でお伝えしたとおり、運転操作や走行状況に応じて4輪それぞれのダンパー減衰力を瞬時に最適化するAVSという電子制御システムは、直進時にはソフトな設定、コーナーではしっかり踏ん張ってロールを抑制する…H4走行ではそんな制御を行う。
ところがこのAVS、L4シフト時には全く異なる制御に切り替わる。それもとりわけモーグル走行時に安定するようダンパー減衰力の最適化を行うのだ。
これは車内より車外から観察した方が分かりやすいのだが、モーグル地形特有の、いわゆる対角線上の2車輪が浮いたとき、空転する車輪の上下動および車体の傾きを最小限に抑えるための減衰力最適化が瞬時に行われる。
このAVS効果は、AVS設定のないAXグレード車との比較で、より明確に体感できた。クロカン走行経験の豊富なドライバーなら誰もが経験するモーグルでのシーソー運動…いわゆるギッコンバッタン状態が抑えられ、目に見えて安定感が増すのだ。
また、GR SPORTグレードに標準装備されるE-KDSSは、前後スタビライザーを制御することでモーグル走行時の車輪の接地性を高め、さらに車体姿勢の安定をもたらす。
簡単に言えば、オンロードやフラットダートをハイスピードで走行するようなときは、スタビライザーをしっかり効かせて安定させ、逆に長いホイールストローク量が必要になるようなオフロードではスタビライザーを解除状態にして、接地性を高めるわけだ。
このE-KDSS効果も、装着車と非装着車では、その差は歴然としており、あらためてスタビライザーというパーツの重要性を痛感する。
この他、このモーグルステージであらためて確認できたことは、ランクル300系の脚の長さである。写真でも確認できるとおり、とりわけスタビ解除時のリアサスのストローク量は非常に大きい。これにATC(アクティブトラクションコントロール)の恩恵が加わることでも、ランクル300系のサスペンションが持つポテンシャルの高さが窺い知れるだろう。
TEST DRIVE 5:岩場でクロール!
最後のステージはロックセクションである。ここでは主にクロールコントロールを試してみた。マルチテレインセレクトで「ROCK」を選択すると、駆動力、サスペンション、ブレーキ油圧等が統合制御され、ロック走行に適した走破性を確保。DACと同様、5段階の速度設定が選べるクロールコントロールのスイッチを入れれば、あとはステア操作だけでクルマが勝手に前進してくれる…というシステムだ。
地形や速度設定によっては、いずれかのタイヤが浮いてトラクションを失い、一旦停止する場面もある。ついアクセルを踏みたくなるが、そこをグッとこらえて待っていると、接地輪に効率良くトラクションが掛けられ、またそろりそろりと前進する。
この岩場は上り勾配だったので、どうしても勢いを付けて上りたくなるのだが、接地輪はしっかりグリップするので、結局は電子制御に身を任せた方が無駄のないトラクション確保ができるようだ。
L4でクロールコントロール作動時はターンアシスト機能が働くので、ライン取りがキモとなるロックセクションでは都合が良い。ちなみにターンアシスト機能とは、ステア操作に合わせて内側の車輪(左にフルステアすると左後輪)にブレーキをかけて曲がりやすくする機能だ。
そんなわけで、ギア選択もアクセル操作も不要、ステア操作に集中できる…というのが最大の特長なシステムで、ついでに先ほどのモーグルと急坂にもトライしてみたが、いずれもジワジワと難なくクリアしてくれた。そう、まさに「してくれた」という感じであり、味気なさも味わうハメになる。
しかし、真剣に難所を走破しなければならないとき、スタックから脱出したいときには、強い味方になってくれるだろう。
ただし、このクロールコントロールとて万能ではなく、急勾配の途中に滑りやすい土壌のモーグルがある地形では、一旦前進が止まると再発進できず、助走で勢いを付けないことにはクリアできないケースもあった。
電子制御式トラクションコントロールの恩恵により、短足でもモーグルで前進可能…そんな4×4が標準になり、それを良しとする風潮が当たり前になって久しい。
しかし、そんな電子制御機構がやたらと目立つランクル300系も、じっくり向き合ってみると、“素のポテンシャル” が徹底して磨かれているクルマだと分かった。
たとえ電子制御なしの状態でも最低限のポテンシャルを発揮する4×4として、開発されていることが要所要所に見られる4×4なのだ。
(文:内藤知己/写真:佐久間清人、写真提供:トヨタ自動車)
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