【紹介/試走】BMW X1 xDrive 18d
2016.11.26
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プレミアムSUV
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BMW
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痛快!コンパクトディーゼルスポーツ
待ちに待ったクリーンディーゼル
グレードは他と同様3タイプを用意
昨年10月にその第2世代モデルが発表され、エンジンをはじめ駆動系からシャーシーに至るまで大きく変貌したBMW X系のエントリーモデルX1。
今年4月に試乗レポート(xDrive20i)をお届けした時点では未導入だったディーゼルモデルの輸入が9月から開始され、さらにラインナップの充実が図られている。
というわけで、今回はクリーンディーゼル搭載の4×4モデルである「xDrive18d」だ。わざわざ“4×4モデル”との断り書きが必要なのは、このX1にはFF(つまり4×2)モデルの「sDrive18i」が存在するためだ。もはやX系=4×4ではないわけで、その存在意義は別としても、選択肢の多さに驚く。
2リッター直4DOHCディーゼルを搭載するxDrive18dには、内外装やサスペンション設定等により「Standard(スタンダード)440万円」「xLine(エックスライン)468万円」「M Sport(エムスポーツ)486万円」の3グレードが設定されていおり、エンジンパワーなどの基本スペックは同一だ。
試乗車は「xLine」で、ボディーカラー(メディテレニアン・ブルー)を始め、アドバンスアクティブセーフティーパッケージや電動パノラマガラスサンルーフ等のオプション(総額56.1万円)装備が施された、中間グレードとは言えフル装備に近い豪華仕様である(価格は全て消費税込/諸費用別)。
ディーゼルMINIを凌ぐパワー
アイドリング音はちょい大きめ
さっそく市街路から試乗を開始。アイドリング時に車外で聞くエンジン音は、詳しい人ならすぐにディーゼルと分かるアイドリング音だ。遮音性能の良さもあって、車内ではさほど気にならないが、いわゆるディーゼル特有のカラカラ音が確認できる。ただし、実測値を見ても不快に感じるほどの騒音レベルではない。
発進加速はすこぶる軽快で、この時点ではディーゼルであることを忘れそうなほどだ。BMWの2リッター・ディーゼルと言えば、8月にお届けしたMINI COOPER-DクロスオーバーALL4(オールフォー)の試走が記憶に新しいところだが、同じ直4DOHCディーゼルながらミニのそれとは明らかに瞬発力も加速フィーリングも一枚上手だ。立ち上がりの低回転域からトルクが湧き上がる感覚や、回転を落としたときの粘りは似ているものの、絶対的なパワー/トルクは明らかにX1の方が勝っていることが分かる。
高速道路走行での追い越し加速も実にパワフルで、乗り心地、静粛性とも、4月に試乗した20iに遜色ない快適さである。レッドゾーンが5,400rpmから始まるタコメーターを見ても、これがディーゼルなのか? と疑うレベルのスムーズなエンジンだ。
オプションのACC(アクティブクルーズコントロール)作動時に機能する先行車追従機能は、初期の頃のような渋滞で停止するとキャンセルされるシステムではなく、スイッチを入れるような感覚でちょんとアクセルを踏むだけで、セットした速度と車間距離をキープしたまま、引き続き先行車に追従してくれるシステムに進化している。
やはり楽しいワインディング
絶妙セッティングのサスペンション
ワインディング走行は、X1が最も楽しいステージのひとつであり、この点に関してはガソリンもディーゼルも大きな違いはない。
ステップトロニック付きの8速ATはあくまでもスムーズに、そしてシームレスにシフトアップ/ダウンをこなし、マニュアル感覚の操作も楽しい。
都会のタワーパーキングに入庫できるよう全高を抑えていた初期モデルから、SUVらしく全高を上げ、高いアイポイントや乗員のヘッドルームを稼ぐ方向へと進化した現行型X1ながら、ほとんどスポーツクーペ感覚でワインディングを走ることができるポテンシャルは健在である。
コーナリング中のロールを最小限に抑えるためのタイトさはありつつ、しかし乗り心地はしなやかさを失っていない…そんな脚まわりのセッティングも絶妙と言える。
ダートで実感できるDSC効果
峠もダートも給油も楽しいSUV
4×4システムは、今やセダンやワゴン系にも採用しているお馴染みの「xDrive(エックスドライブ)」だ。前輪駆動をベースに、必要に応じてリアアクスルへも駆動力配分を行う方式で、DSC (ダイナミック・スタビリティ・コントロール)と連携し、ステアリング舵角やホイールの回転速度などの車両データからオーバーステアやアンダーステアなどを察知し、適切な駆動力配分やブレーキ制御等によりトラクションを確保、挙動を安定させるシステムである。
ダートに乗り入れると、オンロードでは分かりにくかったその効果が、非常に具体的な形でドライバーに伝わってくる。トラクションが逃げやすく滑りやすいダートでも、オンザレール感覚でステアリング操作どおりにコントロール可能なのだ。
これらの電子制御によるトラクションデバイスの介入はごく自然に行われるため、アクセルを踏んでもエンジン回転が上がらなかったりする以外は、ほとんど違和感なく走ることができた。
楽しいドライブを終え、欧州車の場合は特に気が重い給油(多くがハイオクガソリンだ…)に立ち寄る。いつもなら、燃料警告灯が点滅してハラハラしながら高速出口に向かうところだが、この日の燃料計は余裕の1/3残。しかもリッター80円の軽油とくれば、心はお得感で満たされるというもの。
ワインディングも、ダートも、そして給油も楽しい1台なのだった
【細部写真】
1,995cc 直列4気筒DOHCディーゼルエンジン。最高出力110kW(150PS)/4,000rpm、最大トルク330Nm(33.7kgm)/1,750〜2,250rpmを発生する。立ち上がりの鋭さはガソリン並み。
【騒音計測データ】
●車内・・・・44.0dB
●ボンネット閉・・・・70.5dB
●ボンネット開・・・・78.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。
上:シンプルなアナログ2眼メーターがBMWらしさを主張。飽きの来ないデザイン。
下:グレードによってステアリングホイール等のデザインが異なる。試乗車はxLine(エックスライン)。
トランスミッションはステップトロニック付き8 速ATを採用。シフトレバーの脇にはドライビング・パフォーマンス・コントロール(ECO PROモード付)のスイッチを配置。
フロントシート(右)はメモリー付き電動調整式。リアシート(左)座面は60:40分割式でスライドも可能。
オプションの電動スライドガラスサンルーフ。ガラス面積は広いが、開くのはこれだけ。
リアシートはMINIクラブマンと同様40:20:40分割式。4人乗車+長尺物積載に対応可能だ。
試乗車はランフラットタイヤ装着のため、スペアタイヤ不要。仕向地によってはフルサイズのスペアタイヤが積まれると思われるカーゴ床下スペース。かなり広い。
LEDヘッドライト。白色光の周波特性は太陽に近く、HIDを上回るコントラストでさらなる明るさが追求されている。
フロントサスは、ストラット式(上)、リアサス(下)はマルチリンク式コイルの独立懸架。MINIにはないリアデフ下ガードが装着されている。
標準タイヤは225/50R18のランフラットタイヤ。ソフトライドで快適、縁石を気にせず駐車できる。
文/内藤知己
写真/川上博司