【紹介/試走】JAGUAR F-PACE S
2017.5.27
-
-
プレミアムSUV
-
ヨーロッパ車
-
SUVの醍醐味を体感!
ディーゼルとガソリンの計5タイプ
「S」のライバルはマカンとX4
日本国内のカタログラインナップは、2リッター直4DOHCターボディーゼル搭載の「20d」に「PURE(ピュア)」「PRESTIGE(プレステージ)」「R-SPORT(Rスポーツ)」の3グレード、そして3リッターV6DOHCスーパーチャージドガソリン搭載の「35t R-SPORT」と「S」を合わせて計5タイプとなっている。
これらにFペース発売記念特別仕様車(世界限定生産2,000台のうち、日本限定50台)の「FIRST EDITION(ファーストエディション)」が加わるが、これも搭載エンジンはSと同じ3リッターV6ガソリンであり、実質的にはこれが最上級モデルということになる。
試乗車両は、オプションのブラックパックSが追加されたエボニーブラックのボディーに、40%扁平タイヤ+22インチホイール…という佇まいのせいか、前回のホワイトボディーのディーゼルモデル(20dプレステージ)に較べ、かなりアグレッシブな印象を与えるが、フロントまわりの形状が少々異なるだけで大きな違いはない。
ガソリンエンジンは、このSに搭載される最高出力280kW(380PS)仕様と、35t R-SPORTの同250kW(340PS)仕様の2タイプがあるが、これはセッティングの違いによるもので、同型ユニットだ。ちなみに最大トルク値は両者とも450Nm(45.9kgm)と、同一である。
同クラスのポルシェ・マカンGTS(最高出力360PS)やBMW X4 M40i(最高出力360PS)をライバルに想定して開発されたとされるFペースだから、やはりこのSグレードこそがFペースの真打ち…というわけで、さっそく試走を開始した。
余裕のハイウェイクルージング
街中では扱いやすさが光る
0-100km/h加速5.5秒。これはカタログ上の数値だが、例えば高速道路PAからの合流車線で、本線の交通量が多くても余裕で合流、続いて追い越し車線にラクに入ることができる加速性能だ。この“余裕”は安全にも直結し、快適でストレスのないドライブを約束してくれる。
もちろん、アクセルを豪快に踏み込めば、あっという間に法定速度を超えるので、自制心はディーゼルモデルよりも多めに必要。しっかりと路面を捉え、安定感に優れた脚まわりはかなりの高速域でも乗員に恐怖感を与えない。高速巡航は安全な速度に設定し、全車標準装備のアダプティブクルーズコントロールを活かした先行車追従がオススメだ。
また、ディーゼルモデルでも遮音性能が高いためか騒音レベルは低く、ほとんど気にならなかったが、このガソリンV6も同様に静粛性は高い。ディーゼルよりもさらに静かなだけでなく、ノイズの音質も不快なものではない。
一方、街中では、アクセルをそっと踏むだけでスイスイ加速し、細かいコントロールに対してもレスポンス良好なので、非常に扱いやすい。いわゆる“ホットモデル”的な、パワーを持て余すような感覚は希薄だ。踏み込まないで済む分、省燃費運転も容易に感じる。最高出力の数値だけにとらわれず、コントロール性に目を向けても、この380PSはストレスフリーだ。
先進技術を最大限に活かして
巨体を軽々と操る醍醐味
フロント:ダブルウイッシュボーン、リア:マルチリンクの脚は、常に安定した接地感を確保し、4輪を素早く路面に追従させる優秀なサスペンションであり、これはディーゼルモデルでも確認済みだ。
また、このSには、路面状況やそれに対するドライバーの操作のモニタリングおよび分析を行い、瞬時に最適なダンパー減衰力を調整する「アダプティブダイナミクス」が搭載されているため、快適な乗り心地と安定した挙動が常に確保される。
これに加えて、前後のトルク配分を10:90から90:10まで、状況に合わせて常に変化させ、最適なトラクションを確保する4×4システムが、コーナーで思い通りのラインをトレースができる快感を提供してくれる。
重く、重心の高い巨体を意のままにそして軽々と操れる愉しさは、SUVならではと言って良く、これは、Fペースとシャーシーを共有するスポーツサルーンのジャガーXEやラグジュアリーサルーンのXFでは決して味わうことの出来ない醍醐味だろう。
走る愉しみを実感!
3リッターV6にしては好燃費
今回の試走での燃費は、市街地、高速道路、山岳路(ワインディング路)の総走行距離400kmほどの走行で12.7km/lをマークした。高速や市街地ではECOモードで省燃費運転を実践し、ワインディングや一般道ではダイナミックモードで積極的な加減速を繰り返すというパターンだが、全行程の約8割が高速巡航だったことがこの好結果に繋がったようだ。
ビッグパワーを持て余すことなく愉しめて燃費も期待以上。ディーゼルモデルで感じた以上のものがガソリン車で体感できた試走だった。
【細部解説】
最高出力380PSを6,500rpm、最大トルク45.9kgmを3,500rpmで発生する3リッターV6-DOHCスーパーチャージドガソリンエンジン。
【騒音計測データ】
●車内・・・・38.5dB
●ボンネット閉・・・・57.5dB
●ボンネット開・・・・65.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。
上:アナログ表示だが、メーターは全て液晶パネル。欲しい情報に切り換える。
下:意外にタイトなコックピット。ただし窮屈感はなく、ホールド性と操作性が良好。
トランスミッションは8速AT。ダイアル式セレクターはスポーティーとは言えないが慣れれば操作性は良い。走行モードの選択は◀▶ボタンで。
Sグレードにはウィンザーレザースポーツシートが標準装備。エンボス加工が施され、滑りにくい点は実用性高し。
40:20:40分割可倒式リアシートは全車共通。最大で1,598リッターの荷室容量が確保できる。フロアがフラットで使いやすい。
荷室の床下にはテンパータイヤが収納され、さらにこの下にバッテリーが。ジャンピングやヒューズ交換はエンジンルームで行える。
Sグレードは、LED「J」ブレードポジショニングライト付きアダプティブLEDヘッドライトを標準装備。高い鮮明度で自然光に近い光を照射し、物体を鮮明に認識しやすい。
ドアの開閉に連動するサイドステップはスマートで便利そうだが、必要性はさほど感じない。
フロント:ダブルウィッシュボーン+コイル(左)、リア:インテグラルリンク+コイル(右)のサスペンション。前後とも軽量なアルミ製アッパー&ロアアームを採用。
タイヤはオプションの265/40R22を装着。「S」の標準サイズは255/50R20。
文/内藤知己
写真/佐久間清人