トヨタ最新自動車インプレ:エスティマ ハイブリット
2016.9.21
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紹介/試走
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トヨタ
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ミッドクラスミニバンの代名詞的存在の「エスティマ」。
初代はMRレイアウトがもたらすキャビンスペースと走りをトピックとしていたが、2世代目からはFFレイアウトへとスイッチし、現行型となる3世代目モデルは、2世代目のコンセプトをさらにブラシュアップ。
そして、その現行型もすでに10年を経過したロングライフモデルとなり、6月にマイナーチェンジを受けた。今でも通用するポテンシャルがあるのか、テストしてみることにした。
(本文:吉田直志/写真:佐久間 清人)
イメージを一新!
エスティマが、このままに販売を続けますよと宣言をするかのように、デザインから走りに至るまで、大掛かりなマイナーチェンジを行った。
最も特徴的なのは、薄型のランプユニットと大型の開口部を組み合わせた最新のトヨタフェイス。しかし、そのために、ボンネット、ラジエターグリル、 バンパー、フェンダー、そして、ヘッドランプユニットまで一新させ、さらにはフロントノーズに与えた突き出し感や、バンパーコーナーを張り出させた造形などを組み合わせることで、新しい顔つきとエスティマらしさであるワンモーションフォルムをうまく融合させている。また、ミニバンとしては初となる、ルーフにブラックを用いたツートーンカラーを展開したこともトピックだ。
今回の取材した車両は、新色のダークシェリーマイカメタリックをベースにしたツートーンカラーだったが、これまでにはないという目新しさはもちろん、落ち着きを与える色合いも手伝って、アッパークラス感が強く感じられる。
インテリアは、レイアウトこそ大きく変わっていないが、その表現方法は大きく異なっている。インパネでは、合成皮革にステッチを施したインストルメントパネル、そして、その下にサテン調加飾を用いたオーナメント、さらにはセンタークラスターをタブレット端末かのようにパネルでひとまとめとしたデザインによって、質感はもちろんのこと、広がりまで感じさせるデザインを手に入れた。インテリアカラーは、全てのグレードでブラックとなり、グレードによってシートカラーを変えている。
シート構成はこれまでと変わらず。フロント、セカンドシートが独立タイプ、サードをベンチタイプとした7名乗車タイプを基本とし、セカンドシートにもベンチタイプを採用した8名乗車モデルを、ボトムグレードに用意している。
パワーユニットも従来と変わらず、直4/2.4Lガソリンとハイブリッド(ガソリンエンジンは2.4L)の、2タイプを設定。駆動方式はガソリンがFF、ハイブリッドが、リアを独立したモーターで駆動するE-Fourとしている。
もちろん、先進安全技術である “Toyota Safety Sense C” を採用したこともトピック。レーザーレーダーと単眼カメラを用いて、万一の時に、衝突を回避、もしくは軽減してくれる衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ、レーンからのはみ出しを警告してくれるレーンディパーチャーアラート、周囲の状況に応じてヘッドランプのハイ/ローを自動的に切り替えてくれるオートマチックハイビームの3つの機能をもつ。
熟成を感じさせる走り
取材に連れ出したのはハイブリッドモデルのトップグレード「AERAS PREMIUM-G」。
大改良を受けたエクステリアやインテリアばかりが注目されるが、実は走りもブラッシュアップされており、それは走り出してすぐに感じ取れるものとなっている。
しっかりとタイヤを路面に接地させ、そして滑らかに転がり出していくフィーリングはまさに快適性を謳うに相応しいもの。そして、しなやかさを与えられたサスペンションは、ストロークによって路面からの初期入力をしっかりといなし、心地良さを語れる乗り心地を提供。まさに、改良を重ねて得た “熟成” と表現できるフィーリングだ。
高速走行になると、フラットライド感と直進安定性が際立って感じられるようになり、まさにラグジュアリーといえる乗り味を手に入れていた。ただしその分、市街地では、マンホールの凹凸や修復によって継ぎはぎとなった路面などでは、ゴトンといった挙動、音が伝わってくることもあり、10年前にデビューしたモデルであること、つまり設計の古さを感じさせるところもあった。しかし、先の乗り味を知ってしまうと、なんら気にならないレベルと言えよう。
パワーユニットは、これまでのエスティマに採用されてきた直4/2.4Lガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッドユニットを流用。世代としては最新ではないが、最新世代である直4/2.5Lと組み合わされたユニットと比較しない限り、不足を感じることはない。
ただ、アクセル踏み込み加減とパワー発生量については、イマドキのモデルに多く見られるような、少し踏んだだけで加速が立ち上がるタイプではなく、踏み込み量に比例してパワーを引き出すタイプとなっている。ゆえに、最新のクルマに慣れている人からすると、走り出しがモッサリしていると感じるかもしれないが、それはパワーが出ていないのではなく、アクセルペダルを踏み込めていないだけのこと。アクセルペダルからの反力を感じるくらいまでに踏み込むと、力強いパワーが立ち上がってくる。
実は、このエスティマの仕立てのほうが、穏やかにパワーを引き出すことができるため、乗員に対して不快感を与えることが少ない。そう、まさしくそれは、エスティマの“美点”と言えるものだ。
また、意外と思われるかもしれないが、コーナーにおけるスタビリティーがすこぶる高いこともお伝えしておきたい。
ロールスピード、ロール量ともに良くコントロールされており、スッと姿勢を決めると余計な動きを見せることなく、コーナーを駆け抜けて行く。リアタイヤのグリップ感、グリップ力が高く、それもまた乗員に快適性と安心感を与えており、もはや、そこにはミニバンだからという言い訳は見当たらない。
ちなみに…
10年前のモデルであるという事実は隠せないが、10年分の熟成を得ていたこともまた、マイナーチェンジを受けたエスティマの真価だ。そう、まだまだ、現行型でいける、そんなことを感じたテストドライブとなった。
ちなみに燃費は、ひとつの目安として高速道路を80km/h前後で走行したところ、カタログ燃費(18.0km/L)を上回る 20.8km/L を記録した。
あえてエコドライブを行った訳でもなく、法定速度前後で走るトラックについて行っての話。車両重量 が2t近いモデルとしては、満足できる燃費と言えよう。