灼熱のラリーへ、AXCR 2025に挑む日本人選手たち

2025.7.30

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女性ふたりで彼の地へ! シェイクダウンレポート

今年、30回目を迎える「アジアクロスカントリーラリー」
灼熱の大地で繰り広げられるFIA公認の国際ラリーに、今年も多くの日本人選手が参戦する
そして時を同じくして、YOKOHAMA GEOLANDARもまたデビュー30周年を迎えた
このメモリアルイヤーに、
横浜ゴムは、PROPAK GEOLANDAR ASIAN RALLY TEAMを強力にバックアップ!
若き女性ふたりが、3,250kmにも及ぶラリーに初挑戦する

 

 

30回目を迎えるAXCR 2025は、これまで以上の長丁場
さらに過酷になったラリーへ、今、女性ふたりが海を渡ろうとしている

毎年8月に開催されているアジアクロスカントリーラリー(以下、AXCR)が、今年で30回目を迎えようとしている。
 
節目となる今大会は、8月8日から16日まで8日間で開催が予定され、総距離は3,250km(近年は6日間 約2,000km)という長丁場。そして、隣国の情勢からタイ一国での開催となる。
 
これまでも4x4MAGAZINEでは、AXCRの模様を本誌でWEBで、そして動画でお伝えしてきた。優勝を狙うワークスの熾烈な戦い、ときに還暦を迎えたオヤジが3人で挑んだり、後輩たちにこれまで培ってきた自分のすべてを伝えるためにチームとして参戦したり…。泥にまみれ、疲れ切ったはずの身体を引きづりながらも、多くの選手がAXCRの虜となって帰国してきた。
 
そして今、この過酷で魅惑のラリー参戦に向けた準備を、急ピッチで進めている女性ふたりがいる。横浜ゴムがバックアップするPROPAK GEOLANDAR ASIAN RALLY TEAMの2号車を駆る「伊藤はづき選手(ドライバー)」と「槻島もも選手(コ・ドライバー)」の両名だ。
 
マシンのシェイクダウンそして公式練習となったこの日。「ともに国際ラリーは初挑戦」という彼女たちに、その意気込みやラリーに対する思いを伺うため、開催場所となった浅間サーキットへ向かうこととした…。

 

3,250km先のゴールへ
頑張れ! タフで底抜けに明るい女子コンビ!!

シェイクダウン当日。オレンジ色のレーシングスーツを身に纏い、土砂降りのなかに現れたふたりの女性選手。正装したドライバーの伊藤はづき選手(写真左)とコ・ドライバー槻島もも選手(写真右)は、底抜けに明るい。
 
現在モリゾウチャレンジカップ(全日本選手権JN-2クラス)に参戦中の伊藤選手は、学生時代に林道ドライブにハマったことがきっかけで、ラリー競技の存在を知ることとなった。以来、モータースポーツの世界へ入っていくが、AXCR参戦直接のきっかけは塙選手だったという。「ジムニーもアドベンチャーラリーもすべてが初めてなんです」と語るが、「大好きなタイで走れるのなら!」と、“初” ということをまるで意に介さない。
 
一方、伊藤選手が姉御役と頼りする槻島選手は、全日本そしてXCR北海道ラリーで、やはりコ・ドライバーとして活躍する。「AXCRのような過酷な国際ラリーは、私も初挑戦なんです。これまでの経験を活かしながら、『はづきには無理をさせないこと』これが私の役割だと思っています」と気遣う。この日、人生初となるウインチングの練習に励んでいた彼女の姿が印象的だった。
 
さて、このふたり。知り合ったのはチームが結成されてからというが、「ももちゃんは、頼り甲斐がある!」と伊藤選手が語れば、「はづきとなら、どうにか生きて帰って来れそう!!」と槻島選手。国際ラリーも、ジャングルも、シエラも…すべてが初ということを一切気にも留めない “タフな精神” をもった茶目っ気たっぷりなふたりに、心から声援を送りたい。
(文章:水島 仁)

 

女性が操ることを考慮。そして学生の「必ずやゴールへ」という気概が伝わってくるJB74

マシン製作は、中央自動車大学校 一級自動車整備科に通う4年生たちが担当。ロスリンが駆るJB74ピックアップマシンと同様の補強やチューニングが2号車にも行われている。
写真1)軽量化を図るJB74のボンネットはTrasの天然繊維製。バンパーはウインチ搭載可能。
写真2)ロールバーが張り巡らされたコクピット。ボディ剛性もアップ。
写真3)KINGサブタンク式ショックを採用。その下のフレーム(白色)は徹底補強が行われた。
写真4)スペアタイヤは女性でも取りやすい位置に、その間には持ち運びが容易なウインチ。
 

持ち前の強心臓で
灼熱の大地を駆け抜けろ!
PROPAK GEOLANDAR
ASIAN RALLY TEAM
2号車:伊藤はづき/槻島もも 組

どこまでも明るいふたりの会話に初参戦という重圧は一切なかった!
ロスリン組とともにAXCR 2025完走を目指す。
 

昨年のリベンジを!
PROPAK GEOLANDAR ASIAN RALLY TEAM
1号車:Roslyn SHEN/Nada SIMARAKS 組

昨年マシントラブルに見舞われてしまったロスリン選手は、帯同した中央自動車大学校のメカニックによる応急処置で、なんとか完走を果たした。その悔しさをバネに、300mmストレッチし各部に補強が施されたジムニーJB74で、無事完走を目指す。
 

チームの総力を結集し、初挑戦・初完走を目指します!
SpringRoad GEOLANDAR Rally Team Japan 松原圭蔵/冨山巧大 組

ジムニーJB23(2006年式)をベースに作り上げたマシンを駆る冨山選手は、トライアル競技が専門で、ラリーといったスピード競技は自身初。一方、シェイクダウン当日はコ・ドライバーを務めた松原選手もまた、AXCRは初挑戦という。冨山選手が「完走が目標です!」ならば、松原選手は「初めてのAXCRを楽しみたい!」と抱負を語る。彼らを含む総勢6名が総力を挙げてAXCR 2025に挑む。
 

現地では、中央自動車大学校の精鋭5名と先生がフルサポート!

昨年、アクシデントで大破してしまったジムニーJB74は300mmストレッチされ、さらにサスペンションをはじめフレームやロールケージ等 各部には補強と改良が施され…。中央自動車大学校 一級自動車整備科に通う4年生たちにより、このJB74ピックアップはPROPAK GEOLANDAR ASIAN RALLY TEAMの1号車として生まれ変わった。一方、伊藤・槻島ペアが乗る2号車にも、同様の補強とサスペンションをはじめとするチューニングが行われた。
生徒を率いる小谷副校長は「スペアタイヤの取り付け位置やウィンチの軽量化など、女性が乗りやすく扱いやすいマシンに仕上げました。2台揃って無事にゴールして欲しいですね!」
 

赤土のジャングルでの戦いに向けた、日本人戦士それぞれの想い

PROPAK GEOLANDAR Asian Rally TeamやSpringRoad GEOLANDAR Rally Team Japanの他にも、GEOLANDAR M/T G003を装着する日本人選手が多数出場する。優勝を目指し、昨年よりも高みを目指し、これまで培ってきたすべてを後輩たちに伝え…。それぞれの選手がAXCRになにを求め参戦するのか、彼らの秘めた想いを、ここでご紹介しよう。

チームの総合力で、3年ぶりの総合優勝を奪還!
チーム三菱ラリーアート
田口 勝彦/保井 隆宏 組
チャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォン 組
小出 一登/千葉 栄二 組

山岳路、密林地帯、泥濘路、川渡りなど変化に富み、耐久性と走破性が問われる過酷なASEAN最大規模となるAXCRに、新型トライトンでは3度目のラリーとなる。増岡総監督は「今回はエンジンの高トルク化と耐久性向上のほか、足回りを中心に熟成を図り、総合優勝を狙えるクルマに仕上げています。メンバーは経験を積み、チームワークも高まり、チームとしての総合力が向上しています。3年ぶりの総合優勝に向けて最高の状態に仕上げていきますので、ご期待下さい」と抱負を語る。
 

まずは完走、
そしてFIA最年長優勝記録更新!
TOYOTA GAZZO RACING INDONESIA
塙 郁夫/染宮弘和 組

かつて日本で人気だったハイラックスサーフのアジア版 “Fortuner(2017年式)” は、パワートレインは現行HILUXと共通。そしてリアサスが5リンク、ホイールベースもHILUXより約200mm短いので、スポーティーな走りが期待できます。(還暦を過ぎた自分の)老後にちょっぴり不安を覚えながら(笑)、まずは完走そしてFIA最年長優勝記録更新が目標ですが、これまで世界各国で戦ってきたラリー仲間たちと会えることもまた、楽しみにしています。
 

プライベートチームで参戦
目指すは王座奪還!
GEOLANDAR takuma-gp FORTUNER
青木拓磨/ヨーン、ティー組

車椅子のドライバー青木選手は、久しぶりとなるプライベートチームでの参戦だ。ASEANを中心に販売され今人気の “TOYOTA FORTUNER(2024年式)” で、市販車無改造クラスに出場する。プライベーターで優勝ができるよう体制を整えて臨む青木選手は「GEOLANDAR 30周年に華を添えられるよう、そして僕自身も今年で15回目の参戦となりますので、王座奪還と総合優勝を目指して頑張ります!」
 

毎日楽しくゴールを目指して、上位入賞を目指します!
Tras Power 135 TRD HILUX 新田正直/門馬孝之 組

コ・ドライバーが育休のため、今年は新たに日野自動車ダカール・チャレンジグループの門馬孝之選手とペアを組みHILUX GR Sport(2025年式)で出場する新田選手はTCD Asiaスタッフと再会し、チームとして戦うことを楽しみにしている。「イケイケな走りをする車に乗ってしまうと調子に乗っちゃうので、頑張らない走りをするように頑張り続けるメンタルコントロールに徹し、ゴールを目指します」が、日程も走行距離も延長となったAXCR 2025への抱負だ。
 

2回目の参戦。昨年からのジャンプアップを目指したい!
CUSCO RACING 柳澤宏至/加勢直毅 組

これまで競技で培ってきたクスコのノウハウがフィードバックされた、トライトンでの参戦だ。初参戦だった昨年は驚きの連続だったと言う柳沢選手は、「舞台がタイ一国となり走行距離も延長。どんなコースが出て来るのか? 期待と不安が入り混じった気持ちです。まあ、大概なことでは驚かなくなりましたが…!」と頼もしい。「昨年はクラス8位という結果だったので、今年はひとつでも順位を上げられたらと思います!」
 

ワクワクとこれまでの経験を糧に、
勝負に徹します!
CUSCO RACING
番場 彬/藤田めぐみ 組

国内XCRスプリントカップ3連続チャンピオンとして、また競技用パーツの開発が認められ、タイと日本の相互参戦・交流を目的とし、AXCR 2025に出場することとなった番場選手。2023年チーム三菱ラリーアートが使用したトライトンにCUSCOパーツを盛り込み改良を加えたマシンは、タイのTant Sportにて製作された。「2012年以来となる海外ラリーに、とてもワクワクしています。不要なクラッシュとロードブックを間違える回数を極力減らして、勝負権がなくならないようチーム一丸で頑張ります!」
 

ともに戦ったハチマルと
有終の美を飾りたい! そして…
九州男児Team Japan
森川金也/内田雅彦 組

‘08年から’12年のAXCRに参戦したランドクルーザー80(1993年式)を2023年にリニューアル。3年限定で出場することを決意した最後の年を迎えることとなった。「若い世代へ、ドライバー・メカニックのバトンタッチが出来ました。そんな彼らの成長と頑張る姿を目の当たりすることが楽しみです。それから、自分自身ガチでモータースポーツにチャレンジするのは、最後になると思います。今まで支えて下さった皆様、ともに切磋琢磨して下さった皆様に感謝しつつ、走らせて頂こうと思います」
 

スイフト・エンジンに換装
みんな笑顔で、ゴールを目指します!
Garage Monchi & Yanagawa iron works JAPIND
竹野悟史/柳川直之 組

ジムニーJB33をベースにしたマシンでは6回目の出場となる竹野選手。スイフトスポーツのエンジン(H81 1500CC)と同型式のコンピューター(ともに純正品)に換装しての参戦だ。「ジムニーでも戦えること、そして勝てることを信じて、その活躍がジムニーファンにも伝わればと思い走ってきました。今年の目標はT1Gクラス優勝! そしてジムニークラス優勝! その前にノーペナルティでの完走です! 最高の笑顔とガッツポーズで、ゴールセレモニーを迎えます!」
 

全マシンで完走・ゴールを目指したい!
THE SRS-OSAKA WELPORT RALLY TEAM
1号車:飯島祐一/和久田浩史、青木孝次 組(Land Cruiser 300 GR-Sport)
2号車:鈴木一也/Thachapon MUAGSIRI 組(いすゞ D-MAX)
3号車:北浦一司/鎌野賢志 組(いすゞ D-MAX)
4号車:中井匡者/吉村明人 組(JIMNY JB43)

今年は4台のマシンと、サービスクルーが5台+12名の陣容で本戦に臨みます。すべてのマシンがゴール(パタヤ)まで無事辿り着けるよう、21人全員で力を合わせて戦って来ます。それから、今大会に新型ランドクルーザー70をサポートカーに採用したのですが、このナナマルを来年以降ランクル300に変わる参戦車両に仕立てる予定です。

30周年を迎えるAXCRへの想い

AXCRはいい大人が無心で泥んこ遊びできる、唯一無二の競技です。コンクリートジャングルで忙しく働く我々が、年に一度 “人間に戻れる感覚” とでも申しましょうか。私自身、選手として参戦を続ける一方で、一人でも多くの方にAXCRの魅力を知って欲しい! との思いから、大会スポンサーとなり体制の充実を図っていく道を選びました。この素晴らしく “人間的” な競技が30周年を迎えることに、心からお祝いを申し上げたいと思います。
 

AXCR 2025 公式サイト

https://asiacrosscountryrally.com/

 

30周年を迎えたGEOLANDAR
選手たちが選ぶ理由とは!

マシンの動力を大地に伝えることができるパーツは、4本のタイヤでしかない。そして生命の危機と隣り合わせとも言えるラリーに、多くの選手たちが「GEOLANDAR M/T G003」を選択する。なぜか、各選手に問うてみた。
 

チーム三菱ラリーアート

オフロードでのグリップ性能が高く、思い通りの走りを提供してくれます。マッドでの走破性、脱出性も高く、AXCRのようなあらゆる路面を走行する競技には、非常に頼もしいタイヤだと感じています。
 

TOYOTA GAZZO RACING INDONESIA/塙 郁夫 選手

僕のマシンに装着したタイヤは市販品のG003 245/75R16。極悪のMUDはもちろんのこと、MTタイヤながら高速ダートや雨の舗装路も得意とする、AXCRのためにある様なタイヤです。
 

GEOLANDAR takuma-gp FORTUNER/青木拓磨 選手

G003は、僕と一緒に戦ってきた仲間です。このG003があったからこそ、2023年に総合優勝を飾ることが出来ました!
 

Tras Power 135 TRD HILUX/新田正直選手

昨年は、パンクゼロで完走。空気圧は朝メカニックが調整してくれた状態のままで走行しました。内圧が変わっても大きな変化は感じられず、SSに入ってもエアー調整なく走り切る性能を持ったタイヤだと思います。
 

CUSCO RACING/柳澤宏至 選手

昨年も装着させていただきましたが、どんな路面でも安定したグリップが得られ、特にコントロール性が良いと感じます。また、耐久性に関しても優れたタイヤです。一度もパンクせず、ゴールすることが出来ました!
 

CUSCO RACING/番場 彬 選手

鋭い岩場でも剛性の高さからパンクしにくく、安心感が得られたことが印象的でした。性能の高さはもちろんですが、個人的にオススメなのがデザイン性が高いこと。足元から気持ちを高めてくれるのも魅力の一つですね。
 

九州男児Team Japan/森川金也 選手

ハチマルにG003 285/70R17を装着しています。特にタテ方向のトラクションが良く、ターマックでのグリップ力も良好です。オン・オフともにコントロールがしやすいので、アクセル/ブレーキを安心して踏むことができますね。
 

GEOLANDAR 公式サイト

https://www.y-yokohama.com/brand/tire/geolandar/