【紹介/試走】MAZDA CX-3 XD PROACTIVE 4WD
2017.9.29
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紹介/試走
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マツダ
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サイレント・ディーゼルのさらなる進化
マツダCX-3の試乗レポートは2015年発売直後の春以来なので、およそ2年ぶりの試走となる。この間、CX-3にはグレード展開も含めて要所要所に改良や仕様変更が施されており、外観はデビュー当初と同じながら中身には注目すべき進化も少なくないため、その辺りを検証すべく試走に出かけた。
文/内藤知己 写真/川上博司
7月にガソリンモデル追加
選択肢が一気に拡がったCX-3
デビューから現在までの一番大きな変更点と言えば、グレードの見直しとガソリンエンジンの追加が真っ先に挙げられるだろう。デビュー当時の「1.5リッター直4-DOHC、クリーンディーゼルのみの設定」を本誌でも“潔し”と評したが、今年7月から2リッター直4-DOHC直噴ガソリンエンジン搭載車の販売が始まっている。
また、デビュー時のグレード展開は、下から「XD」「XD Touring」「XD Touring L Package」の3グレード(ディーゼルのみ)だったが、現在は「XD」「XD PROACTIVE(プロアクティブ)」「XD L Package」に豪華な内装の「XD Noble Brown(ノーブルブラウン)」を加えた4グレードとなり、ガソリン車にも同様に「20S」「20S PROACTIVE」「20S L Package」「20S Noble Brown」の4グレードが用意されている。
そして、全てのグレードに4×2/4×4モデルが設定され、ディーゼルモデルでは引き続き6速A/Tと6速M/Tの両方が選べる(ガソリンモデルはA/Tのみ)。つまり、ガソリンモデル8タイプ、ディーゼルモデル16タイプの合計24タイプの選択肢が用意されていることになる。
この選択肢の豊富さはユーザーにとって大歓迎であるし、ディーゼルモデル限定とは言え、MT車が選べることを喜ぶSUVファンも少なくないだろう。
また、デビュー当初は上級モデルにだけ標準装備され、下位モデルではオプション、あるいは設定のなかった「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」と呼ばれる先進安全技術を駆使した各種検知デバイス(レーダークルーズコントロールや車線逸脱警報、スマートブレーキ・サポート等)の標準装備化など、グレード名が変わっただけでなくその内容も大幅に進化しているようだ。
この他、初期モデルになかった安全装備として、歩行者検知が可能になり、作動速度域が拡大された「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(アドバンストSCBS)」が全車に標準装備され、後退時の衝突被害軽減をサポートする「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS R)」も、一部グレードに新設定されている。
徹底した静粛性向上対策を投入
グレード間の差がさらに縮まった!
試乗車はディーゼルモデルの中間グレードにあたる「XD PROACTIVE」の4WDモデル/MT車を選んだ。余談になるが、どのメーカーも試乗車として貸し出す広報車両は最上級グレード+フルオプション仕様を設定するのが常だが、このような中間グレードも積極的に貸し出すのは、「上級グレードじゃなくても内容の充実ぶりをご覧あれ!」と言われてるようで、自信のほどが窺える…そんな風に感じるのだが、考えすぎだろうか。
始動時、そしてアイドリング時はディーゼルであることを自覚させる音質のエンジンだが、走り始めるとその軽快な吹け上がりに、ガソリンとの区別が曖昧になる。ストロークが短く、小気味良い節度感を持つMTは、相変わらず素早く確実なギアチェンジが可能だ。
アイドリング時には感じなかったが、高速走行時に、初期型より静かになっていることに気付く。いや、正確に言えば「上級グレードでなくても静かになった」と言うべきか。というのも、この1.5リッター直4ディーゼルターボには、「ナチュラルサウンドスムーザー」と呼ばれる技術が導入されており、初期型では上位グレードのAT車のみにオプション設定されていた。これは、ピストンとコネクティングロッドの連結部にダンパーを圧入し、ピストンの振動を打ち消す、という技術だ。
この、ディーゼルノック音を抑制するという技術では、他にも、燃料噴射タイミングを0.1ミリ秒単位で制御することでノック音の発生そのものを抑制する「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」が2016年10月以降、全車に標準装備されている。
また、これに加えてフロントドアガラスやリフトゲートガラスの板厚をアップし、遮音・吸音材も追加するなどの改良が段階的に行われており、風切り音やロードノイズ対策も強化されている。
試走時に毎回実施するアイドリング騒音の実測値(細部解説参照)では、初期モデルと大きな差は見られなかったが、高速走行時にはハッキリと体感できる差を確認できたので、例えばXD系の中古車を検討する場合は、この2016年10月の小変更を意識したほうが得策だろう。
“タイトながら快適”を実現
先進の4×4制御システムも健在
一方、走りの方はと言えば、相変わらずの瞬発力と吹け上がりのシャープさが際立つ。エンジンの基本性能に変更はないが、前回「1クラス上の排気量を持つガソリンエンジンに引けを取らないパワー感」と表現した印象に変わりはない。低回転域の粘り、トルク特性はディーゼルそのもので、こまめなシフト操作を放棄してこれらを活かしたAT的なズボラ運転が可能なのも同じである。
適度なタイト感がありつつ、不快な硬さのないサスペンションは、快適な乗り心地とコーナリングの楽しさの両立が図られたセッティングで、ワインディングではSUVに乗っていることをついつい忘れる。
一方、オフロード走行は凹凸の少ないフラットダートで実施。215/50R18のオンロードタイヤでは、たとえ車両通行が可能な林道でも不安要素は多い。特にリムが突出したホイールへのダメージは避けがたく、せっかくの4WD機構や先進のトラクションデバイスも活かせないのが残念だ。
通常は前輪で駆動し、タイヤが空転すると後輪にトルクを適正配分する、というお馴染みの4×4機構には、センターデフロックやそれに類する機能切り替えスイッチはない。タイヤ空転以外にも、アクセル開度、ステア角度、ワイパー作動状態や外気温、路面摩擦反力まで検知して、4輪駆動制御に反映されるという、極めて繊細なコントロールが行われているとのことだが、ドライバーはそれらを一切気にすることなく、ステアリング操作に集中できる。
今回は静粛性の大幅な向上が際立った試走レポートとなったが、今後のCX-3には、CX-5との差別化、棲み分けをさらに進めるためにも、さらにホットな走りの進化に期待したい。この夏に追加された2リッター直4-DOHC直噴ガソリン搭載車との比較試乗も視野に入れつつ、試走を終了した。
【細部解説】
1,498cc 直列4気筒DOHC直噴ターボ・ディーゼルエンジン。最高出力77kW(105ps)、最大トルク270Nm(27.5kgm)と、スペックは初期モデルと変わっていない。
【騒音計測データ】
- 車内・・・・43.0dB
- ボンネット閉・・・・54.5dB
- ボンネット開・・・・67.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時
上:外観とは違って落ち着いた雰囲気の車内。ステアリング形状が初期モデルと若干異なる。
下:大型タコメーターもデザインが落ち着いた雰囲気に。
XD系(つまりディーゼル車)には全てのモデルに6速MTが用意される。第4〜6速はO/D(オーバードライブ)の設定。
カーナビやオーディオはセンターコンソールに配置された「コマンダーコントロール」で操作する。パーキングブレーキはレバー式。
「PROACTIVE」 には合成皮革/クロスのシートが標準装備。運転席にはラチェットレバー(手動)式シートリフターが備わる。
リアドアガラスは全開でこの位置
6:4分割可倒式のリアシート。
操作が軽くて容易だが、完全なフラットにはならない。
フロア下にも収納スペース有り。
固定用フックもキチンと四隅に備わる。
対向車や先行車のドライバーを眩惑させることなく、常時ハイビームでの走行を可能にした「アダプティブ・フロントライティング・システム(AFS)」は全車に採用。
フロントサス(上)はマクファーソン・ストラット式、リアサスはトーションビーム式。
「PROACTIVE」の標準タイヤは215/50R18サイズ。アルミホイールは、7J×18。