【紹介/試走】SUZUKI SX4 S-CROSS

2015.7.17

    • 四輪駆動車
    • スズキ

真面目が取り柄のヨーロピアン・コンパクト

s_A14K8694選択肢は「2WDか4WD」のみ
電子制御デバイスは標準装備

s_A14K8796スズキSX4がフィアットとの共同開発によって誕生したのが2005年。デビュー10周年とは言え、ハンガリーの子会社マジャールスズキ (Magyar Suzuki Zrt.)を生産拠点とし、欧州マーケットを中心に展開してきたこともあって、日本ではやや地味な存在であることは否めず…だが、逆に10年選手とは 思えない新鮮さを感じることも事実である。

 

もっとも、WRC(世界ラリー選手権)やパイクスピーク・ヒルクライムレース等、国際レースの舞台では大いに活躍してきたため、モータースポーツ・ファンにはよく知られた存在と言える。

 

第2世代となる現行モデルは、2013年から欧州をはじめ世界各国で販売されていたが、日本には今年2月に上陸を果たした。

 

初代モデルの一部は、静岡の相良工場でも生産されていたようだが、現行モデルはマジャールスズキ社と中国の重慶長安鈴木汽車で生産されており、このうち日本仕様車はマジャールスズキ製である。

 

s_A14K8480そんな”欧州車”SX4の日本仕様車S-CROSS(エス・クロス)のラインナップは極めてシンプルだ。エンジンは1.6リッター直4・ DOHCガソリンのみで、トランスミッションもCVTのみ。内装の素材や装備によるグレードもなく、選択肢は2WD/4WDのいずれか、である。

 

試乗車はもちろん4WD、車両本体価格は209万円(税別)で、2WDより20万円高という設定だ。最近流行りの自動ブレーキや車線逸脱警告機 構、先行車追従機構等の最新鋭のドライバー支援システムの設定はないものの、ESP(車両走行安定補助システム)やEBD(電子制御制動力配分システム) 等の電子制御デバイスは標準装備されており、この価格設定ならコストパフォーマンス的にはかなり期待できそうだ。

 

パワーは必要にして充分
エンジンノイズ少なめな高速巡航

発進時や追い越し時の加速フィーリングは、ごく平均的なNA(自然吸気)1.6リッターガソリンをイメージしてもらえば、そこから大きくは外れ ない。つまり、期待以上の大パワーでもなければ、それを裏切る非力さも感じない、いわゆる”必要充分”というレベル。ただし、レスポンスが良く、スムーズ に吹け上がるのでエンジンを回す楽しさがある。

 

そして思い切り踏み込んでいっても振り回されず、制御できる範囲のパワーをフルに使って走れる、という楽しさもある。

 

街中での取り回しの良さも、このサイズならでは。リアシートの窓面積が狭く、やや視界を妨げているが、車両感覚を掴みやすい車格とスタイルであるためか、後方視界が狭いことにそれほどマイナスな印象を受けない。

 

高速道路では静かで快適なクルージングが可能。エンジンの騒音に関しては、アイドリング時の実測値が低かったため、それなりに期待して高速走行を試みたのだが、遮音性能よりもエンジン自体のメカニカルノイズが低く、かえって風切り音やタイヤノイズの方が気になるくらいだ。

 

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ソフトライドなサスペンション
ボディー剛性の高さが光る

サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット、リアがトーションビーム+コイルのリジッド式。柔らかな乗り心地で、のんびり流すのに最適な脚だ。

 

ワインディングでは大きめにロールするが、素早く収まるので安定感は高い。

 

4WDシステムは「ALLGRIP(オールグリップ)」と呼ばれる電子制御システムが採用され、4通りの走行モードが選択できるようになっている。

 

このようなワインディングでSPORTモードを選択すると、直進加速中は4WD、コーナー侵入時にアクセルOFFで2WDに切り替わり旋回性を高め、コーナー出口でアクセルONすると4WDに…という制御を行う。

 

実際、この2WD↔4WD切り替わりはごく自然にスムーズに行われるので、ドライバーがその挙動変化を体感することはなく、無駄のないコーナリングが可能だ。

 

また、このような場面で感じるのはボディー剛性の高さ。脚まわりはソフトでも、フワフワせず、ステアリング操作にボディーが追従するときの一体感が心地良い。

 

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走行モードの特性を活かして
ダート走行が楽しめる4×4

この4×4システムに2WDモードの設定はないが、AUTOモードでの通常走行(直進加速時も)では前輪駆動(2WD)となる。状況により前後トルク配分を適正に調整、つまりスリップを検知すれば4WDに切り替わる。

 

ダート等、ある程度スピードが出せるオフロードではAUTOモードが適しているが、常に4WD走行で、空転を検知するとその車輪にブレーキをかけ、グリップしている車輪に最大限のトルクを配分するLOCKモードでも、もちろん安定した走行が可能だ。

 

高速ダートでは、少々凹凸が増えてくると接地感が急に弱まるのでムリは禁物だが、急激にパワーが出るエンジンではないことがプラスに働き総じて走りやすい。

 

タイヤも極端な扁平タイヤでないため、高級な4×4システムを搭載していてもオフロード走行が事実上NGな4×4に較べれば、よほど楽しめるのだ。

 

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平均点が高めで不満も少ない
欲しいのは際立った個性だ!

内装は、決して豪華でも上質でもないが、機能的で落ち着きのあるデザインが採用されていて、シートヒーターやデュアル・オートエアコン、オートクルーズ、雨滴感知式オートワイパー等の上級装備もあれば、CVTながらマニュアル操作可能なパドルシフトも標準装備。

 

4WDの公称燃費は17.2km/L(JC08モード)となっているが、今回400km程の試走では13km/Lをマークした。

 

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SX4 S-CROSSは、際立った何かがない代わりに、あらゆる部分において平均点が高めな、不満の少ない真面目な4×4というのが総合的な感想だ。

 

細かいことを言えば、”どんな人が選ぶの?”というユーザー像が今ひとつ見えてこない4×4でもあるので、ここはひとつ”真面目に作られた欧州製ジャパニーズSUV”であることを活かした上で何か際立った個性がぜひ欲しい! そんな1台である。

 

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1,586cc 直列4気筒DOHCガソリンエンジンを搭載。最高出力86kW(117ps)、最大トルク151Nm(15.4kgm)を発生するVVT(可変バルブタイミング)機構を採用する。
【騒音計測データ】
●車内・・・・40.5dB
●ボンネット閉・・・・53.0dB
●ボンネット開・・・・62.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時アイドリング時。
念入りな遮音処理が、と言うより、もともとメカノイズの小さなエンジンという印象。

 

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s_A14K8588上: シンプルな2眼メーター。必要最小限の情報を見やすく表示する。
下:豪華ではないが機能的で落ち着いたデザインのインテリア。

 

s_A14K8534パドルシフトによるマニュアル機構付きのCVT。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

s_A14K8542ALL GRIPと呼ばれる 4×4システムの操作スイッチ。フルタイム4WDなので2WDモードはないが、2WD走行可能な状況では前輪駆動にもなる。

 

150717seat表面が硬く、沈み込みの少ないシートにヨーロピアンのテイストを感じる。リアシートも座面が高く、車格の割には足元に余裕有り。

 

150717rearシートバックのみ2分割可倒式のリアシート。荷室フロア下にも収納スペース有り。

 

s_A14K8761LEDポジションライトをヘッドランプまわりに配置した大型のランプユニット。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

150717susフロントサスは、マクファーソン・ストラット(左)、リアサス(右)はトーションビーム式コイル。

 

s_A14K8750標準タイヤは全車205/50R17サイズ。ダート程度のオフロードなら使えるサイズ設定。