【紹介/試走】TOYOTA LAND CRUISER PRADO TZ-G

2017.11.30

    • 紹介/試走
    • トヨタ

完熟のプラド、150系最終ステージ

image2

文/内藤知己

写真/宮島秀樹

 

主な変更は外観デザインと安全装備
ディーゼル車の選択肢拡大も

 

初代70系、2代目90系、3代目120系、そして現行型150系は4代目となり、今回は2013年9月に続く2回目のマイナーチェンジとなる。これまで6〜7年おきにフルモデルチェンジされてきたプラドだが、150系は既に9年目に突入…ということで、モデル末期らしく「完熟」のマイナーチェンジということになろう。

 

なるほど主な内容としては外観のリフレッシュと、衝突回避支援を軸とした先進安全機能「Toyota Safety Sense P」の全車標準化ということで、どちらかと言えば新機軸や変化よりも熟成に重きを置いたマイナーチェンジだ。

 

ラインナップは、上級グレードのTZ-Gと標準グレードであるTXの2タイプで、TXに“Lパッケージ”の設定があるのも従来どおり。エンジンは2.7リッター直4ガソリンと2.8リッター直4ディーゼルターボの2本立てで、TXではどちらも選べるがTZ-Gはディーゼル車のみ、と、これも従来どおりだ。

 

今回のマイナーチェンジでは、TXのディーゼル車に7人乗り、TX “Lパッケージ”に5人乗り仕様が追加され、ディーゼルモデルの選択肢が拡大されている。

image3image4

試乗車は上級グレードのTZ-Gで、これは「ディーゼル/7人乗り」のみの設定。エンジンは一昨年の国内ディーゼル復活以来お馴染みの1GD-FTV型で、最高出力130kW(177PS)/3,400rpm、最大トルク450Nm(45.9kgm)/1,600〜2,400rpmを発生する頼もしいクリーンディーゼルだ。

 

トランスミッションはシーケンシャルシフトマチック(マニュアルシフト)付き6速AT。減速比2.566:1のローレンジを持つトランスファーを備えたフルタイム4×4で、TG-Zにのみ設定のあるマルチテレインセレクト+クロールコントロールのセットオプションも装備されている。

 

リア・トルセンLSDを新採用
リアデフロックは全車にオプション

 

外観は主にボンネットとフロントまわりのデザインが刷新され、前回ののマイナーチェンジ時にややアグレッシブになった顔つきが少々落ち着きを取り戻した印象。インテリアもセンターパネルを中心に意匠変更が施され、メタリックな加飾が増えている。ただし、見た目の変更だけでなく、走行モード選択やトランスファースイッチが大振りなダイアル式になるなど操作性も向上している。

 

AT/トランスファーの変速比はガソリン/ディーゼルとも同一設定で、これは前回試乗したハイラックスとも同様。最終減速比はガソリン車の方がややローギアードな設定となっている。

 

駆動方式がフルタイム4×4であるプラドには、トルセンLSD式センターデフを持つトランスファーが採用されているが、今回のマイナーチェンジでは、TZ-Gに限りリアデフにもトルセンLSDが標準装備となった。

 

トルセンLSDとはトルク・センシング(トルク感知)型のリミテッドスリップデフのことで、これは多板クラッチ等を使わず、ギア配列のみでデフの差動を制限するタイプのLSDだ。

 

プラドのセンターデフの場合、通常走行時は前40:後60のトルク配分とし、旋回加速時にはリア寄りに配分したり、前後輪のいずれかがスリップした時に、空転していない側寄りに配分するなどして、パワーを効率良く路面に伝え、安定した走行状態にもっていく役目を担う。

image5

一方、新しくTZ-Gのリアデフに標準装備されたトルセンLSDは、後左右輪のトルク配分でこれを行うわけで、主にコーナリング時に威力を発揮する。旋回時、外側輪に荷重がかかって内側輪のトラクションが希薄になると外側寄りにトルク配分を行う。LSDは、電子制御を軸とする最先端テクノロジーとはある意味対極にあるメカニカルな技術だが、最新のプラドに今さらのように採用された点は興味深い。

 

なお、全車にオプション設定されている「電動リアデフロック」を選択した場合、このリア・トルセンLSDは非装着となるので、クロカン走行で「リアデフロックはマストアイテム」というオフロード重視派は、このリア・トルセンLSDの新採用にはさして魅力を感じないかも知れない。

 

とは言え、トルセンLSDはダートや氷雪路、そしてクロカン走行でも大いに効果が期待できるメカニズムなので、これはこれで幅広いニーズに対応できる設定と言える。

 

TZ-GにはエアサスとKDSSを装備
電子制御に頼らないシステムの安心

 

プラドの脚まわりは、前:ダブルウイッシュボーン式コイルスプリング、後:トレーリングリンク+リジッドアクスル式コイルスプリングで、試乗車のTZ-Gはリアが車高調整機構付きのエアスプリングとなっている。

 

ふつうに街中を流していても、しなやかな乗り心地で、けっして硬質なセッティングとは感じないサスだが、ワインディングではロールが少なく常にシャキッとコーナーをクリアできて気持ちが良い。

この「硬くないのにタイトな脚」には、TZ-Gに標準装備されるKDSS(キネティック・ダイナミック・サスペンション・システム)の効果が大きく寄与している。

image6

 

KDSSとは、サスの状態に応じて前後スタビライザーの効力を油圧によってコントロールするシステムで、電子制御に頼らない技術。例えば、オンロードのコーナーではスタビライザーを効かせて車体のローリングを抑え込み、前後サスが逆位相にねじれるようなオフロードでは、スタビ効力をなくして最大限のサス・ストロークを確保する、というしくみだ。

 

メカニズムとしては目新しいモノではないが、独自の技術であり、オフロードSUVならではのシステムと言える。何より、前述のトルセンLSDと同様、電子制御に頼っていない点に「辺境の地でも通用する四駆」という安心感をユーザーに与える装備である。

 

LOレンジ/フルタイム4×4走行可
プラドだからこそ廉価版標準グレードを!

 

ちょっとしたオフロード試走のための人口セクションを走るため、ダイアル式になったトランスファー・スイッチをローレンジにシフトしてみて、あらためて気付いたのは、ローレンジでもフルタイム4×4走行可能、つまり、センターデフはドライバーの任意でロックする、という操作が可能なシステムだということ。

 

今も昔も「ローレンジにシフトすると自動的にセンターデフロック」されるタイプのフルタイム4×4がほとんどで、空前の4×4ブームと言われた90年代でもフルタイム4×4でローレンジ走行が可能だったのは、メルセデスGとレンジローバーくらいだったと記憶している。

 

トランスファーのローレンジ(LOポジション)は、多くの場合、下の写真のようなシチュエーションで選択する走行モードだが、例えば、そこそこ荒れた林道をスイスイ走りたいときなど、「ハイレンジだと1速しか使えないが、ローレンジだと3速まで使える」といった場面もあり、意外に走りやすかったりするケースもあるので、このプラドのような設定は走りの選択肢が拡がって好都合である。

image7image8

試乗車はオプションの「マルチテレインセレクト+クロールコントロール」を装備していたので、何も考えず電子制御に身を任せ、ステアリング操作にだけ集中していればOKというズボラ運転も可能。

 

ただし、これらの電子制御に頼らずとも、ドライバーが自ら判断し、前述のトルセンLSD、あるいは電動リアデフロック等を駆使して走破する醍醐味も味わえるのが、このプラドの最大の魅力と言える。

 

できれば、これらのオフロードで有効な装備が上級グレード以外のモデルでも選択できる設定を望みたいし、もっと贅沢装備や装飾を抑えた廉価グレードのバリエーションが欲しいコアなファンもプラドなら多いはず。しかし、高級車指向がますます色濃くなってきたプラドには、難しい要求なのだろうか。

image9

 

 

 

【細部解説】

image10

2,754cc 直列4気筒直噴ディーゼルターボエンジンを搭載。最高出力130kW(177PS)、最大トルク450Nm(45.9kgm)を発生する。尿素SCRシステムによりNOxを大幅に低減している。

 

【騒音計測データ】

  • 車内・・・・42.5dB
  • ボンネット閉・・・・62.5dB
  • ボンネット開・・・・70.0dB

※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

image11image12

上:視認性では定評のあるオプティトロンメーターと4.2”TFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ。

下:センターパネルのスクリーンが大型化され、操作系も使いやすくなったインパネ。ステアリングホイールのデザインも刷新。

 

image13

オプションのマルチテレインセレクト+クロールコントロール、トランスファーの走行モード選択、車高調整、センターデフロック等の操作スイッチ。スイッチが大振りで操作性が向上した。

 

image14

トランスミッションはスーパーインテリジェント6速AT(6 Super ECT)。シーケンシャルシフトマチック付き。

 

image30image17

TZ-GとTX“Lパッケージ”には本革シートを標準装備。運転席は8ウェイ、助手席は4ウェイパワーシートを装備。

2ndシートは60:40分割スライド式でシートバックは40:20:40分割。3rdシートは50:50分割フロア格納式。足元の低床化により、座り心地の向上を図っている。

 

image31

シートアレンジのパターンは多彩。サードシート付き車でも、フロア格納式にすることによって余裕のラゲッジルームを確保している。

 

image22image23image24

リアサスの車高調整は3段階。写真上から「ローモード−20mm」「ノーマルモード±0mm」「ハイモード+40mm」。このほか、積載量に関わらず一定の車高を保持するオートレベリング機構や車速感応制御等の機能も備える。

 

image25

リアハッチガラスのみの開閉も可能。最近は珍しくなったが、やはり便利。

 

image26

全車に標準でオートレベリング機構付きのLEDヘッドランプを採用。LEDクリアランスランプ(デイライト機能付き)とヘッドランプクリーナーも標準装備だ。

 

image27image28

フロントサスは、ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング(上)、リアサス(下)はリジッドアクスル+エアスプリング。KDSSも標準装備。

 

image29

TZ-Gの標準タイヤは265/55R19サイズ。TX系には265/65R17サイズが装着される。