【紹介/試走】新型プリウス

2016.1.29

    • 最新クルマ事情
    • トヨタ

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時代を牽引

初代プリウスが誕生したのは’97年のこと。ハイブリッドユニットを専用ボディに組み合わせ、低燃費と実用性に優れた、まさに先進性あふれるパッケージを提案。低燃費・低公害車への減税、免税措置もあって、その販売台数を伸ばしていく。そして、プリウスに追い付け、追い越せとばかりに、ハイブリッドユニットを搭載したモデルが各メーカーから続々と登場。また、ガソリンエンジンそのものも効率化を求めて大きな進化を果たし、さらにはディーゼルエンジンも追撃するなど、プリウスたるアドバンテージが以前よりも薄れてきていたのもまた事実だ。もちろん、そんな状況をプリウスが黙って見ているわけがない。この最新型では、その全てを一新して、エコカーのベンチマークたるポジションをさらに引き上げている。

 

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TNGA採用第一弾=豊富なトピックス!!

 

トピックは数多くあるが、トヨタの、もっといいクルマづくりの実現に向けたクルマ作りの構造改革であるTNGA(Toyota New Grobal Architecture)を採用したことがキーとなっている。ちなみにこのTNGAはトヨタ車すべてに展開されていくが、このプリウスが採用第一弾となった。

 

そのメリットは数多い。

 

まず、ボディは高剛性を謳うだけではなく、低重心を誇りながらも、快適な居住空間も確保したパッケージングをバランスさせたことがトピックとなる。ボディサイズは全長60mmロング、全幅15mmワイドとなっているが、低重心化によって全高は20mmダウン、パワーユニットは約10mmダウン、ラゲッジルームのフロアは110mmも下げられている。だからといってキャビンスペースを犠牲にはしていない。ヒップポイントは59mmと大きく下げているが、ヘッドクリアランスをフロントで+21mmアップさせており、相反するはずのスペックを、走りに、そして快適性にプラスになるようにデザインしている。

 

パワーユニットは、型式こそ先代と変わっていないが、JC08モード燃費で40.8km/L(Eグレード)を実現していることからもお分かりの通り、ユニットそのものも大改良を受けている。ガソリンエンジンは2ZR-FXE・直4/1.8Lで、吸気ポートの形状変更、大容量クールドEGR、ウォータージャケットスペーサーなどの採用もあって、熱交換効率40%を達成。さらにハイブリッドシステムでは小型・軽量化と効率化が図られ、低燃費・低排出ガスを実現している。

 

また、新型プリウスのトピックのひとつに、プリウス初となる4WDモデルのラインナップがある。リアを独立して駆動するモーターを備えた電気式4WDシステムだが、低燃費と4×4に期待される低μ路でのトラクションをハイバランスしているおり、雪国でも”使える”システムとなっていることがポイント。ちなみにEグレードを除く全グレードで選択することができる。

 

いうまでもなく、先進安全装備の採用も行われた。プリクラッシュセーフティ、レーダークルーズコントロール、レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御付)、オートマチックハイビームをパッケージとしたToyota Safety Sence PをAグレードに標準装備とした。ご存知の通り、このToyota Safety Sence Pは、昨年夏に登場した大改良版ランドクルーザー200から搭載されている技術だが、その中でもプリウスのレーダークルーズコントロールではいち早く全車速追従機能を採用しており、まさに、安全装備でもトヨタの最新を謳う内容となっている。

 

と、解説が長くなったが、それほどにプリウスのトピックは多く、書き残したことはまだまだあるほど。しかし、それに負けないほどに、走りにも多くの魅力、新しさがある。

 

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長旅したくなるプリウス走りの魅力

プラットフォームの一新は、走りの全てを大きくブラッシュアップさせており、それはブレーキペダルから足を離した瞬間から、誰しも感じ取れるもの。たとえば、駐車場から路上へ出ようとする際の段差を下りる際、その衝撃をシャシーで確実にいなしながらも、完全に消し去るのではなくボディに伝えてくるのだが、大小含めてその振動を乗員に伝えることなく、まさに、何かありましたか? といわんばかりにその剛性ぶりを誇る。

 

そして、走り出せば、ドライブトレインの抵抗を感じることなく、新開発となった15インチタイヤの転がり抵抗の低さも相まって、まさに抵抗を感じさせることなく滑らかに転がるように走っていく。シャシーは、高剛性ボディにしっかりと支えられながら、衝撃をいなす、タイヤを路面に押し付けるという役割を確実にこなしており、そこに一世代以上の進化を感じたほどだ。

 

パワーユニットはアクセル開度に対してのパワーの出方を改良しており、加速におけるゆとりと、伸び感を表現。つまり、ストレスなく発進する気持ち良さを変化させることなく、そのまま、気持ちよく走って行ける。

 

かといって、市街地での渋滞でペダル操作に気を遣うこともなく、従来モデルにも表現されていたコントロールのしやすさもしっかりと存在する。今回のテストドライブで、モーターの活躍シーンが多くなり、時にエンジンがアシストしているように感じることが多くあり、カタログ燃費だけではなく、実用燃費が良くなりそうな予感を覚えた。

 

もちろん、高速道路へと入っても、それら印象は変わらない。それどころか、フラットライド感が高く、あまり使いたくない表現方法ではあるが、まさに、”クラスを超えたレベル”を感じ取った。それはただ快適なだけではなく、路面の状態を伝えながらも衝撃を確実にいなし、そして多少ボディが揺れようとも、サスペンションはバウンド、リバウンドの1行程で収めてしまうもの。いうまでもなく、そのサスペンションの動きはしなやかで、そのストロークフィールから乗り味の質感の高さを感じた。そして、パワー感についても不足なく、追い越し加速も難なくこなしてしまう。つまり、乗員は快適さを感じ、ドライバーはどこまでも走っていきたくなる衝動に駆られるのだ。

 

ワインディングでは、よく躾けられたシャシーによって、まさに理想とするハンドリングを愉しめる。コーナー手前で減速してフロントへと荷重を移していくと、ステアリング操作に見合ったロールが発生する。そう、ロールそのものを感じるのだが、このある程度のロールによってグリップ感をドライバーに伝えてくれるもの。いうまでもなく、ロールスピードは良くコントロールされており、このロールによって、むしろドライバーはもとより、乗員も安心感を覚えるはず。そして、走らせる愉しさも手に入れている。

 

と、ここまではFF、4WDに共通したフィーリングだ。

 

4WDモデルは、低μ路での安定性を求めて、発進時からリアモーターを駆動するように仕立てられているが、実は路面状況に関わらず、全てのシーンでこの制御を行っている。ドライ路面では意味があるのだろうか、と思われるかもしれないが、リアがしっかりと踏ん張っている感、つまり、前へと蹴り出そうとしているフィーリングが加わっているし、リアにユニットを配置した分、タイヤのグリップ感、サスペンションの動きに重厚感がプラスされるなど、スノードライブ以外でもそのメリットは大きい。ちなみに、約70km/h以上でリアモーターの駆動は停止するとのこと。4WDシステム採用による燃費悪化が気になるかもしれないが、ユニットのフリクション低減、制御によって37.2(Eグレード以外のFF)→34.0km/L(4WD)程度に抑えている。

 

今回のテストドライブにおける燃費は、あちらこちらへと立ち寄りながら、つまり写真撮影をしながらという悪条件にあったものの、トータルで25.4km/Lと優秀な数値となった。そう、新しいのプリウスは、燃費から機能、装備、走りに至るまで、すべてがいい。そのステップアップは途中でも触れたように1世代分以上ある。たぶん、それをいちばんクヤシイと思うのは、旧型オーナーかもしれない。

 

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プリウスらしさを大きく進化させた4世代目プリウス。斬新さと先進性をデザインが与えられたボディサイズは全長4540mm、全幅1760mm、全高1470mmと、ロング&ワイド、かつローフォームとなった。従来モデルから引き継がれたトヨタエンブレムを強調する造形を、トヨタのキーンルックコンセプトを用いて表現。低重心を感じさせるデザインもポイント。

 

 

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ハイビームとロービームをひとつのユニットにまとめたBi-Beam LEDヘッドランプ(オートレベリング機能付)・LEDクリアランスランプを全グレードに標準採用。ちなみにフォグランプもLEDとなる(一部グレードに標準装備)。

 

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ドアトリムからインパネまで乗員を包み込むような造形が特徴的。グラフィックメーターとマルチインフォメーションディスプレイ(いずれも4.2インチカラーTFT液晶)を備えたメーターをセンタークラスター上部に備える。また、ステアリングホイール、フロントコンソールトレイにホワイトの加飾パネルを採用し、先進性だけではなく親しみやすさも醸し出している。

 

 

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フロントシートはショルダーからサイサポートまで、ゆとりを感じさせるサイズ感をデザイン。さらにはフィット感も高く、ロングドライブでも疲れ知らずであることを感じた。同様に十分なサイズがゆとりを提供してくれるリアシート。気になるヘッドクリアランスは、ルーフラインから想像されるようなタイトさはない。ただ、ゆとりがあるとも言えず。なお、リアシートは6:4分割可倒式を採用。背もたれを倒すだけ、つまりワンアクションでシートアレンジが行えるようになったこともトピックだ。

 

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ランドクルーザー200に続いて採用された「Toyota Safety Sense P」。フロントウインドウの単眼カメラとグリル上のエンブレム裏側のミリ波レーダーを用いたシステムで、プリクラッシュセーフティ、レーダークルーズコントロール、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームの4機能を備える。

 

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4WD駆動切り替えスイッチは設けられていない。走りを変えられるドライブモードスイッチは、ノーマルのほか、パワフルに走らせることができるパワーモード、低燃費を引き出しやすくしてくれるエコドライブモードを選択可能。モーターのみで走行できるEVモードスイッチも備えている。

 

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家庭用電気製品を利用できるAC100Vコンセントを2つ採用(一部グレード)。ひとつは、コンソールボックスの後ろ側、もうひとつはラゲッジルームの左側に設置されている。合計1500Wまで対応可能。

 

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リアヘ向かって傾斜していくルーフラインはスポーティさを感じさせるが、同時にリアシートの乗降性に不安を覚える。頭をかがめるようにして乗り込むことになるが、シートポジションが低いこともあって、実際にはルーフを意識することはなかった。

 

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プリウス専用となるT-Connectナビ9インチモデルをメーカーオプションとして設定。サイズだけではなく、インパネにぴたりとはまるデザイン性もトピック。T-Connectによるエージェント機能、オンラインケア、アプリによるカスタマイズなども特徴。

 

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超音波センサーによって周囲の障害物を検知して駐車操作をアシストしてくれる機能。従来のカメラを用いたシステムと異なり、白線がなかったり、夜間であってもアシスト可能となっている。A、Aプレミアムに標準装備。

 

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4WDモデルではマルチインフォメーションディスプレイに前後駆動配分を表示可能。発進から10km/hまではドライ路面でもリアモーターを駆動しており、ご覧のような表示となっている。

 

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スペアタイヤスペース部にリア駆動ユニットを収めているため、4WDであってもフロア上のスペースはFFと変わらない。その容量は457L(FFスペアタイヤありモデルと同じ)。