【紹介/試走】 JIMNY SIERRA JC

2018.11.1

    • 最新クルマ事情
    • スズキ

シエラ覚醒!

今年7月のフルモデルチェンジで、新開発の1.5リッターエンジンが搭載された5ナンバーのジムニー「シエラ」が人気だ。
既存のジムニーファンのみならず、ジムニーを知らなかった新しい層のユーザーをも惹きつけるその魅力とは?

文/内藤知己 写真/佐久間清人
 

 

 

 

シンプルな2グレード
走りの電子制御は全車標準装備

発売からほぼ4か月が経過した新型ジムニー/シエラが、当初の販売目標を大幅に超える台数のバックオーダーを抱え、納期も数か月から数年に及ぶ…という状況に陥っていることは既に周知のとおりだ。
 
新型ジムニー(660)の受注は、発売から1か月足らずで国内年間販売目標台数である15,000台を突破し、同じく年間販売目標1,200台という設定のシエラでさえ5,000台を超える受注状況となっていて、この時点で既に「シエラは納車3年待ち」などという憶測も飛び交うなど、全国のスズキ・ディーラーでは依然、ちょっとしたパニック状態が続いているという。
 
現在、生産ラインでは懸命の増産体制の構築が進められていることと思うが、とりわけ、従来は軽ジムニーの影に隠れがちな存在だったシエラの健闘に水を差さずに済むよう、しっかりとした供給体制の改善が望まれるところである。
 
さて、こうした状況の中、メディア向けの広報車両にも試乗希望が殺到していて、ようやく順番が回ってきたのがこのシエラJC(4速AT)である。

ジムニー660(JB64W)のラインナップは「XG」「XL」「XC」の3グレードだが、シエラは「JC」「JL」の2グレードが用意されている。
 
デュアルセンサーブレーキサポートやウォッシャー付きのLEDヘッドランプ、オートライト、クルーズコントロール、本革巻きステアリングホイールといった上級アイテムは、上位グレードのJCに標準装備される。
 
なお、JB64Wも含めて、今回最も注目されている「ブレーキLSDトラクションコントロール」や「ヒルディセント・コントロール」「ESP」等の電子制御デバイスは、下位グレードであるJLにも標準装備されている。
 

静かで快適なオンロード走行
コーナリング性能もランクアップ

今回のモデルチェンジで、1.3リッター(M13A型)から1.5リッター(K15B型)エンジンにスケールアップされ、最高出力が10kW(14PS)、最大トルクは12Nm(1.3kgm)向上している。劇的に速くなったと言うより、余裕を感じられるパワーアップである。
 
ちなみに今回、AT車は最終減速比(ファイナルギア)が低速化(4.090→4.300)されてはいるものの、全体的には当然MT車よりもハイギアードな減速比設定になっている。しかし、市街地走行での発進時や加速フィーリングではMT車に引けを取らない俊敏さを備えている。

JCに新設されたクルーズコントロール機構は、45〜100km/hの範囲で速度設定可とのことだったが、実際には105km/hまで設定できる。100km/h巡航時のエンジン回転数は約3,000rpm。静かだ。新エンジンがもともと静かであることに加えて、各部に徹底して施された遮音の効果も大きいようだ。
 
タイトコーナーが連続する峠道では重心の高さもあって、大きめのロールは避けられない。ただ、従来のシエラと異なり、ロールしても左右にフラつく揺り戻しがなく自然に収束するので、安定した状態でコーナーをクリアできる。
 
また、この安定性は、ジムニー660より130mm拡大された前後トレッドやサス・セッティングの最適化も重要なポイントと言えるだろう。
 

強化フレームがサスを活かす!
オフロードでもより安全に

オフロード試乗は、深い轍や凹凸が点在する林道からスタートした。やや速度を上げ気味で走っても、驚くほど安定している。従来モデルから流用されたパーツも多いサスであるにもかかわらず、全く別モノに感じるレベルで、路面追従性も向上している。
 
これは、今回のモデルチェンジの目玉でもあるフレームの強化が重要な役割を果たしているように思う。
 
前回のレポートでも触れたとおり、クロスメンバーの改良や増設によってねじり剛性が1.5倍に強化されたラダーフレームの採用で、このコイル+リジッド式サスが本来のポテンシャルを発揮するようになったのではないだろうか。
 
また、路面追従性が向上した前脚はステア・コントロールも容易にし、このようなダートでも、非常にコントロールしやすくなっているのだ。
 
そして最後はモーグル・ステージ。タイヤが完全に地面を離れても、アクセルを一定に保っていれば、ブレーキLSDトラクションコントロールがごく自然に働き、前進できるという点だけ取っても、これは完全に機械式LSDを上回っている。
 

マニュアル式デフロックのような強烈な直進性も発生せず、ステアリングが利く状態で走行できることもありがたい。また、JB43に較べてホイールストローク量も増えており、接地性がさらに増し、安全性も向上している。
 
今回のシエラが、スタイルといい、性能といい、今までになく魅力的であることは、多くの人が感じていると思う。また、4×4としての性能、快適性の進化など、道具としての価値が正当に評価されたということも間違いなさそうだ。
 
もう軽のジムニーの添えモノではなく、ジムニーを象徴する存在に昇格したという風格さえ感じるシエラ。今後続々と出てくるであろうアフターマーケット・パーツにも、多いに期待したい。

 

1,460cc 直列4気筒DOHCガソリンエンジン搭載。最高出力75kW(102PS)/6,000rpm、最大トルク130Nm(13.3kgm)/4,000rpmを発生する。今年4月にデビューした7人乗りミニバン「エルティガ」(インドネシアで製造・販売、日本未発売)にも搭載されている最新型ユニット。
【騒音計測データ】
●車内・・・・37.0dB
●ボンネット閉・・・・57.0dB
●ボンネット開・・・・63.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

上:視認性が高く、シンプルでスポーティーな二眼メーターパネル。
下:左右の傾きを認識しやすいデザインとしたとされるインパネ。

 

トランスミッションは、4速AT(マニュアルシフト機構無し)を採用。シフトはゲートパターンから直線パターンに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左から「助手席パワーウインドゥ」「ESP解除/ヒルホールドコントロール解除(4L時)」「ヒルディセントコントロールON」「運転席パワーウインドゥ」の各スイッチ。

 

 

撥水加工が施されたファブリックシート。最上級グレードとは言え、電動や本革は似合わない。

 

ラゲッジルーム展開パターン。50:50分割の背もたれを倒す方式で、畳んだ背もたれと肘掛け部分が面一になる。シート後方にはフタ付き床下ボックス(④)あり。

 

JCにはヘッドランプウォッシャーとLEDヘッドランプを標準装備。ハロゲンフォグランプは全車標準装備。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リジッドアクスル+コイル式の前後サスペンション。JB43と共通部品も多いが、トレッドは前後とも45ミリ拡大されている。ステアリングダンパーが新設された。

 

 

 

 

 

 

 

標準タイヤは、先代モデル(JB43)の205/70R15より1サイズ細身の195/80R15を装着。