【紹介/試走】 TOYOTA LAND CRUISER 300 ZX 3.3 V6 DIESEL TWIN TURBO

2021.9.26

    • 最新クルマ事情
    • トヨタ

磨かれた脚に注目!

 

 

目が離せない!新型トヨタSUV

前回お知らせしたとおり、8月2日にトヨタ・ランドクルーザー300系が発売され、4×4ファンの注目を集めている。先代200系に代わり14年振りのフルモデルチェンジということで、満を持して…という表現に相応しい進化を遂げている。
 
折しも北米では、トヨタのフルサイズピックアップであるタンドラの2022年モデルがリリースされ、ランクル300系と同形式の3.5リッターV6ガソリン・ツインターボと、さらに電気モーターが組み合わされたハイブリッド・エンジン(最高出力437HP)を搭載…というニュースも届いており、しばらくは新型トヨタSUVの話題で持ちきりとなりそうだ。
 
さて、今回は前回予告したとおり、オンロード走行を中心とした試走を行ったが、そのインプレッションをお届けする前に、この300系の概要をおさらいしておこう。

 

全車ワゴン(3ナンバー)登録で、エンジンは3.5リッターV6ガソリン・ツインターボ(V35A-FTS型)と、3.3リッター V6ディーゼル・ツインターボ(F33A-FTV型)の2種。ガソリン車には上から「ZX」「GRスポーツ」「VX」「AX」「GX」の5グレード、ディーゼル車には「ZX」「GRスポーツ」の2グレードがそれぞれ設定される。
 
なお、ガソリン車の「GX」を除く全グレードはサードシートを備える7人乗り仕様、そしてディーゼル全車とガソリン「GX」は5人乗り仕様となる。60系や80系に親しんだ世代のランクル・ファンにとって「GX」というグレードは、バン(1ナンバー)登録車を連想させるかも知れないが、前述のとおり300系は、エンジンや荷室の広さに関係なく全車ワゴン登録である。
 

軽快なフットワーク

ディーゼル搭載の100系バン(国内)が、2002年に施行された自動車NOx・PM法による排ガス規制で姿を消して以来のディーゼル車設定ということで、大いに注目しているファンも少なくないと思うが、今回はその3.3リッターV6ディーゼル・ツインターボ搭載のZXに試乗した。
 
60系以降のランクル・ステーションワゴン史上最もミニマムな3.3リッターという排気量で最高出力227kW(309PS)/最大トルク700Nm(71.4kgm)を叩き出すV6ディーゼル・ツインターボのインパクトは強烈で、これまでのディーゼル4×4のイメージを覆す軽快さと静粛性に驚かされる。
 
まず、発進/停止を頻繁に繰り返す市街地走行での印象は、とにかくそのフットワークの軽さが際立つ。これは、ラダーフレームやボディー鋼板の材質や板厚、その配置等を最適化することによってボディーのねじり剛性を向上(従来型比:約120%)させながらも大幅な軽量化(従来型比:約200kg減)を果たしていることや、この巨体と大パワーをキビキビと制御するサスペンション、そしてストレスのないシームレスなシフトチェンジを行う10速AT等が、それぞれバランス良く仕事をしているためだ。
 
もちろん、低回転域から分厚いトルクを発揮する新型ディーゼルエンジンのシャープで滑らかな立ち上がりが、このフットワークの軽さをドライバーに印象づける主な要因であることは言うまでもない。

 

余裕のハイウェイ・クルーズ

高速道路では、まず、そのガソリンライクな吹け上がりが楽しめる料金所ゲートからの発進加速が圧巻。アイドリング時、とりわけ車内ではガソリン車と区別が難しいほどおとなしいこのV6ディーゼルユニットは、フル加速時に少々荒々しい表情を覗かせるものの、巡航時は至って平穏。
 
ちょっとアクセルを踏み込むと、もう最大トルクを発生する1,600〜2,000rpmに達しているわけで、感覚的には、どの回転域からでも踏めば瞬時にモリモリと図太いトルクを体感できる。
 
それにしても、この面構えゆえか、先行車のルームミラーを介して相当の威圧感を与えるらしく、追い越し車線で先行車に追いつくと、早々に道を譲られるケースが多々あったことも、この新しいランクルの特徴のひとつと言えそうだ。

 

ワインディング・ロード自由自在

従来比200kg減の車重…とは言え、約2.5トン、全長5メートル近い巨体でワインディング路が楽しめるとは到底思えない…これが一般的なユーザーの感覚だろう。
 
しかし、苛酷なオフロードでのタイヤ接地性や乗り心地とオンロードでの操安性の、高次元での両立を課せられたランクル300系にはそのポテンシャルが充分与えられている。
 
直進時にさほど硬質な乗り心地を感じない、むしろ少々荒れたアスファルト路面の凹凸をふわりふわりとソフトにかわしている四肢が、コーナーではしっかり踏ん張り、ロールが抑制される。
 
これはAVS(Adaptive Variable Suspension=アダプティブ・バリアブル・サスペンションシステム)と呼ばれる機構の働きによるもので、運転操作や走行状況に応じて4輪それぞれのダンパー減衰力が瞬時に最適化される、という電子制御が行われているのだ。
 
もちろん、ドライバーの好みで走行モードを切り換えることによってダンピングレートを調整することも可能だが、このAVSが行う制御はなかなかに快適で、こんな巨体を狭いワインディングでコントロールする煩わしさを半減させてくれる。
 
連続するコーナーで不安を感じることなく軽快に走ることができ、そのフットワークを楽しめるレベルのエンジンパワーと、それを伝えるスムースでレスポンスの良いAT、そしてフトコロの深い脚まわり…これがワインディング路におけるランクル300の印象である。
 
聞けば、このAVSは、ローレンジにおけるオフロード走行時には、全く異なる制御を行うとのことなので、オフロード試乗も楽しみである。

 

もはや、都会の狭い路地や区画の狭いコインパーキング等の駐車場では、取り回しに辟易するサイズに育ってしまって久しいランドクルーザーワゴンだが、それでも最先端の技術を駆使して快適に進化していることは確かだ。
 
大きく重いことがそれだけで不利に作用しがちなオフロードでも、それを克服し、さらなる走破性向上を狙って最新技術が惜しみなく投入されている点は実に興味深く、今後のオフロード試乗にも大いに期待がかかるところだ。(文:内藤知己/写真:佐久間清人)

 

最高出力227kW(309PS)/4,000 rpm、最大トルク700Nm(71.4kgm)/1,600〜2,600 rpmを発生する3,345cc V6ディーゼル・ツインターボ搭載。シングル/ツインターボの切り替えによって、低速域から高速域まで高レスポンスで伸びやかな加速を狙っている。ラジエーター冷却は電動ファンではなく、電子制御式ファンカップリングを採用した冷却ファン(写真:左)によって、燃費と静粛性の向上が図られている。
【エンジン騒音計測データ】
●車内・・・・41.0dB
●ボンネット閉・・・・60.0dB
●ボンネット開・・・・66.5dB
※エアコンOFF、アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(気象状況や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

ランクルらしいか? と言われれば微妙だが、各スイッチ類が大振りで分かりやすく、操作性に優れたインパネ、コントロール系。アナログ表示の速度&タコメーター(オプティトロンメーター)も視認性良好。

 

電子制御式のダイレクトシフト10速AT。10速化による緻密な変速がスムースなドライビングを実現した。右側のスイッチで4H/4Loを切り換える。センターデフロックは手動スイッチでも可能。

 

 

 

 

 

 

 

「ドライブモードセレクト(MODE SELECT)」スイッチで走行シーンに応じた6種の走行モードを選択可能。ダンパー減衰力やシフトスケジュール等が切り換えられる。
 

 

 

 

 

 

タブレットが据え付けてある感覚の12.3インチTFTワイドタッチディスプレイ。カーナビ、オーディオ表示はもちろん、マルチテレインセレクトやパノラミックビュー等のモニターとして抜群の視認性と操作性を提供する。

 

 

 

始動ボタンの中央に指紋センサーを搭載したトヨタ初の指紋認証スタートスイッチを採用。セキュリティ強化アピールには有効な装備だ。
 

 

 

 

フロントは8ウェイパワーシート。全席にシートヒーターはもちろん、ベンチレーション(シートクーラー)を装備。ベンチレーションは冷風を吹き出すのではなく、熱気を吸い込む方式で冷却するのがミソ。

 

ディーゼル車は全て5人乗り(サードシート無し)仕様となる。リアシートは背もたれ3分割/座面2分割(6:4)可倒式。後席座面まで畳む場合はベルトで固定する方式。

 

オートレベリング機構付きプロジェクター式 LEDヘッドランプを採用。デイランプもウインカーも全てLED。ZXとGR SPORTに標準装備される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロントサス(右)とリアサス(左)。フロントはアーム配置が最適化されたダブルウイッシュボーン(独立懸架)式。リアはリジッドアクスル式を踏襲する5リンク式。ダンパー配置が最適化され、オン/オフ双方での安定性確保が図られた。

 

ガソリン/ディーゼル車ともZXの標準サイズは265/55R20。アルミホイールはスーパークロームメタリック塗装が施された8J×20サイズ。

 

ランドクルーザー300 公式サイト

https://toyota.jp/landcruiser/