【紹介/試走】TOYOTA「GRANACE Premium」

2020.8.28

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    • トヨタ

運転が愉しいラグジュアリーワゴン

シンプルな2グレード構成
アル/ヴェルを凌ぐLLサイズ

昨年の東京モーターショーに出展され、11月に発売されたトヨタのグランエース。このカテゴリーにことさら興味のない層には “ハイエースの豪華版” という程度に認識されている大型ミニバンだが、その姿を見ても察しがつくとおり、単にハイエースのサイズを拡大して豪華装備を追加しただけのモデルというわけではない。
 
プラットフォームは輸出仕様のハイエースのシャシーをベースとするラダーフレームに縦置きFRの駆動系を採用した、フロント独立懸架+リア車軸懸架の後輪駆動車である。
 
トヨタの豪華なLサイズミニバン…といえば「アルファード/ヴェルファイア」が真っ先にアタマに浮かぶが、実際の寸法ではこのアル/ヴェルを、全長で365mm、全幅で120mm、ホイールベースで210mmも上回る巨漢だ。

 

ラインナップは、3列シート・6人乗りの「Premium(プレミアム)」と、4列シート・8人乗りである「G」の2タイプ。全車2WD(後輪駆動)という設定だ。
 
エンジンはランドクルーザープラド等でもお馴染みの1GD-FTV型2.8リッター直4・DOHCディーゼルターボを搭載。最高出力130kW(177PS)/3,400rpm、最大トルク450Nm(45.9 kgm)/1,600-2,400rpmを発生する高出力ユニットである。
 
ちなみに、現行型プラドに搭載される同ユニットは、この8月に行われたマイナーチェンジでパワー/トルクともに大幅アップされており、最高出力150kW (204PS)/最大トルク500Nm (51kgm)となっている。

 

操る快感、快適ドライブ
取り回しも意外にラク

試乗車両は上級グレードである「Premium」、分厚いキャプテンシートが3列に配置された6人乗り仕様。2列目シートに回転機構はなく、対面シートアレンジは設定されていないが、オットマン付き電動リクライニング仕様の極めて快適なシートがおごられている。旅客機のそれのような各席に設けられた読書灯やエアコンのダクト、照明付きバニティミラーも高級感を演出している。
 
アームレストさえ装備されないシンプルなフロントシートに対して、このリアシート4席の豪華さは実に対照的だが、このモデルのコンセプトをよく表している部分でもあると言えるだろう。
 
試乗を開始してまず最初の印象は、取り回しも含めたその軽快な操縦フィーリングだ。2.7トン超の車重を考えればいくらディーゼル車とは言え、鈍重な発進は避けられないだろうという、多分に見た目の印象からの先入観もあったせいか、フワッと発進し軽快に加速するさまに驚いた。しかも、極めて静かなムリのない余裕の加速である。
 
わずか1,600rpmから450Nmという図太いトルクを発生するこの直4ディーゼルターボは、頭打ちになる4,000rpm付近までストレスなく吹け上がり、6速ATの繫がりもスムースで、実に軽快。試乗は2名乗車で行ったが、6名のフル乗車でもこの軽快さは期待できそうな余裕あるパワーとトルクだ。
 
ラダーフレーム+リア車軸懸架という商用車やSUV系に多いサスペンション形式なので多少のバタバタ感は覚悟していたが、これも杞憂で、アスファルトの繋ぎ目やごく低い段差等はきれいに衝撃を吸収する。縁石などに片足ずつ乗り上げるような場所では、リジッドアクスル特有の伝わり方を感じるものの、いわゆる商用車バン的な衝撃は全く感じられない。
 
直進性も良く、長距離も苦にならない操安性を確保している…と言うと「今どき当たり前だろ!」とお叱りを受けそうだが、同様な脚まわり、フレーム構造を持つミニバンには今も直進性の悪さで酷く疲れるモデルが存在することを考えると、この点は無視できないのだが、グランエースは「問題無し」という結果だった。
 

また、想像以上に舵角が大きく、全長5.3m、ホイールベース3.2mのクルマとは思えないほど小回りが利く(最小回転半径5.6m)し、シンプルなスクエア形状のリアボディーは車両感覚を掴みやすく、巨漢ながらも車庫入れ等で取り回しの良さを発揮する。
 
フロント独懸+リア・コイルリジッドの脚まわりは、ランクルやレクサス系でも快適な脚の前例は少なくないので、特に驚くには当たらないかも知れない。しかし、運転することの愉しさという面で、これらのSUVに大きく劣ってはいない…という事実は少々意外だった。
 
巨漢を操り乗りこなす快感に、快適な乗り心地、取り回しの良さ、動力性能面での軽快感が加わった運転が楽しいミニバン。ともすれば、オーナーは移動のための単なる運転手になりがちなタイプのクルマでありながら、操る楽しみがちゃんと備わっている…そんなLサイズワゴンである。(文:内藤知己/写真:佐久間 清人)

 

最高出力130kW(177PS)/3,400rpm、最大トルク450Nm(45.9 kgm)/1,600-2,400rpmを発生する1GD-FTV型2.8リッター直4・DOHCディーゼルターボエンジン。

 

派手さはないが、質感や落ち着いたカラーリングで高級感をアピールしてくるインパネ。後席の豪華さを引き立たせる控えめな装飾が好印象。

 

8インチのディスプレイを備えるナビ/オーディオのほか、パノラミックビューモニターやブラインドスポットモニター等、死角の多い大型ワゴンならではの視界確保システムも万全。

 

 

いわゆるインパネシフトの6速ATセレクトレバー。マニュアルシフト機構も備わり、メリハリを利かせたドライブも可能。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大振りなセンターコンソールは使い勝手が良い。中蓋は脱着可能。

 

 

 

 

シンプルなフロントシートと豪華なリアシートが対照的。リア4席は前後のスライド量が大きく取られ、余裕の足もとスペースが確保できる。

 

オットマン付きの電動リクライニング機構を備えたエグゼクティブパワーシート。

 

旅客機のビジネスクラスを連想させる読書灯が各席に備わる。天井には照明付きのバニティミラーが。

 

2列目シート間には格納式テーブルが備わる。固定式アームレストにはドリンクホルダーも内蔵。

 

 

 

 

後席を全て前に移動すると広大な荷物スペースが確保できる。もちろん、片側だけに荷物を…も可能。これだけの開口部の広さと引き換えに、リアゲートを閉めるときは相当の力が必要。

 

標準タイヤは235/60R17サイズ。
アルミホイールも含めてPremiumとGのグレード差はない。

 

グランエース公式サイト

https://toyota.jp/granace/