【紹介/試走】TOYOTA C-HR

2017.2.25

    • 四輪駆動車
    • トヨタ

新しいコンパクトクロスオーバーの形

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二駆と四駆2グレード4タイプ
ハイブリッドは2WDのみ

2017022501昨年12月に販売が開始され、発売前の予約だけでも3万台近くの受注を記録したとのことで、幸先の良いスタートを切ったトヨタC-HRだが、その後も順調に推移しており、納車も2〜3か月待ちだという。

 

ちなみにC-HRとは、「Compact High Rider(コンパクト・ハイ・ライダー)」と「Cross Hatch Run-about(クロス・ハッチ・ランナバウト)」から命名したとのことだが、若い頃ハイリフトで鳴らした4×4ファンからは「この程度でハイライダーか?」と文句が出そうではある。

 

余談はさておき、トヨタが全社を挙げてグローバルに取り組むクルマ作りの構造改革「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の、プリウスに続く第2弾として送り出された世界戦略車ということで、プラットフォームをプリウスと共有するコンパクトSUVである。

 

ラインナップは、4WD/2WD車それぞれにふたつのグレードを設定した計4タイプ。4WDには1.2リッター直4DOHCガソリンターボ(8NR-FTS型)を搭載、2WDは1.8リッタ直4-DOHCガソリンターボ(2ZR-FXE型)+電気モーター搭載の(1NM型)のハイブリッド車となっている。つまり、プリウスと同じハイブリッド車は2WDのみ、ということで、4×4ファンにとってはやや肩すかし気味なラインナップと言わざるを得ない。同じプラットフォームを使用するプリウスには4WD車(E-Four)が設定されているだけに、RAV4なき後ひさびさの新型コンパクトSUVということで期待していたファンには残念な設定だ。
20170225032017022504C-HR G-T(4WD)

 

 

ふたつのグレード(G-TとS-T)間の差は内外装の仕上げや装備の違いがほとんどで、動力性能や安全性能面での差はほぼないと言ってよい。単眼カメラとミリ波レーダによる先行車および歩行者との衝突回避システムやステアリング制御付きの車線逸脱警報、オートマチックハイビーム、全車速追従/ブレーキ制御付レーダークルーズコントロール等の安全装備も、駆動方式/グレードに関係なく全車標準装備となっている。

 

4×4システムは、「ダイナミックトルクコントロール4WD」と呼ばれるもので、通常は前輪駆動で走行し、発進時やスリップを検知したときに最適なトルクをリアにも配分する、というシステム。また、旋回時には、操舵量等からドライバーの意図する走行ラインを算出し、挙動に応じたトルク配分の微調整を行う、という電子制御が行われる。グリップの良い舗装路であっても常に4×4の恩恵を享受できる、という意味では、この手のオフロードを走らないクロスオーバーSUVには必須のシステムと言えるだろう。

キビキビ走る!街の駿足ランナー
エントリークラスらしい進化を

今回の試乗はメーカー主催の試乗会で、街中でのみ、ごく短時間で行われたもので、ごく限定的な試乗レポートになるが、瞬発力に優れ、キビキビと走るC-HRは、やはりまずは都会の市街地をドライブしてみるべきクルマだと実感する。

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最高出力で116PSを絞り出す1.2リッター直4ターボは、低回転域から力強く効くレスポンスに優れたターボのおかげですこぶる元気だが、ハイブリッドの2WD車と発進加速を比較すると、やや物足りなさを感じる。ガソリンエンジンのような内燃機関と違って発進時に最大トルクを発生する電気モーターの威力は絶大で、瞬発力という面ではハイブリッドに分があるようだ。

 

しかし、それ以外の場面では極めて軽快であり、同時に、どっしりとした安定感に包み込まれるようなフィーリングも持ち合わせている。

 

車内は外観から想像するほど狭くはないものの、リアシートのサイドと後方視界はかなり狭いので、少々慣れが必要だ。

 

ニュルブルグリンクで鍛えたというフロント・マクファーソンストラット、リア・ダブルウィッシュボーン+コイルの脚まわりは、意外にソフトで、さほどタイトに締め上げたようなセッティングではない。コーナーでは適度なロールを伴いつつも、しなやかに収束する。

 

オフロード走行がどのくらい視野に入れられているかは不明だが、オールテレイン系のタイヤでフラットダートを走らせるのは、楽しいかも知れない…と思わせるくらいのサスの許容量はありそうだ。

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このクラスではダントツの実績を誇るホンダ・ヴェゼルの刺客という前評判の中、颯爽とデビューしたC-HR。当然ながら、後発ゆえのアドバンテージは随所に見ることができるが、ラインナップの件も含めてまだまだ進化の余地はたくさんありそうだ。SUVのエントリーモデルとしてのポジション等、このクラスの役割にも目を向けた進化に期待したい。

 

 

【エンジン】
2017022507最高出力116PSを5,200〜5,600rpm、最大トルク18.9kgmを1,500〜4,000rpmで発生する1,196cc、直4DOHCガソリンターボエンジン。レスポンスの良さがもたらす軽快なパワーが魅力。

 

 

20170225082017022509上:シンプルなアナログメーターが好印象。
下:ドライバー本位の視認性、操作性が考慮されたデザインのインパネ。

 

 

2017022510トランスミッションは7速スポーツシーケンシャルシフトマチック搭載のCVT。

 

 

20170225_seatG-Tグレードには上級ファブリック+本革のシートが標準装備。本革シートのオプション設定もあり。

 

 

20170225_rear敢えて容積よりもリアを絞った外観スタイリングにこだわったというラゲッジルーム。ラゲッジ容量は318〜1,112L。

 

 

2017022516リアのドアハンドル形状にも、リアのスタイリングへのこだわりが感じられる。

 

 

2017022517全ての光源をLED化し、サイドまで大胆に回り込ませたヘッドランプユニット。ひとつの光源でロー/ハイビーム切り替えが行えるLEDを採用。

 

 

20170225_susフロント(左)はストラット+コイル、リア(右)はダブルウィッシュボーン+コイルのサスペンション。しなやかでコシのある自然なストローク感が好印象。

 

 

文/内藤知己
写真/宮島秀樹