【紹介/試走】TOYOTA YARIS(ヤリス)

2020.6.26

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99年よりトヨタ・ヴィッツ(それまではスターレット)として親しまれてきたトヨタのコンパクトハッチバックモデルが、名称を新たにヤリスへと変更してデビューした。このネーミングで、国内外で車名が統一されたことになるが、大きく変わったのはネーミングだけはないようだ。

 

話題を集めたヤリス
これぞ、コンパクトカーの新たなるスタンダード!

ヴィッツという名称になってから約20年、ヴィッツ最終モデルとなった3世代目が登場してから約10年を経た、2020年2月、今回紹介するヤリスがデビューを果たした。国内での名称と海外での車名を統合することは昨今珍しくはないが、こうしてネーミングが変わったことで、すべてを一新した、生まれ変わったという印象を受けるもの。実際、このヤリスは、トヨタの新プラットフォームであるTNGAをベースに、すべてをゼロベースから作り上げたと謳われ、10年分、いや、それ以上の進化を遂げている。
 
試乗記へ入る前に、トヨタのコンパクトハッチバック(全高1,550mm未満)のラインナップからおさらいしておこう。
 
まず、Aセグメントモデルとしてパッソが、Bセグメントモデルにこのヤリスとアクアが、そして、Cセグメントモデルとしてカローラスポーツを揃えているが、5ナンバーサイズとなるのはBセグ以下。
 
ヤリスは全幅1,695mmと5ナンバーサイズギリギリの全幅とし、さらに全長を3,940mmと4m未満に抑えていることがポイント。このサイズは先代とほぼ同じだが、最近の欧州Bセグメントモデルは5ナンバーサイズを突破することが当たり前となっているが、それらと比較するとトヨタは、コンパクトカーとはどうあるべきかを熟考し、そして、これで十分、これでいいんだを主張しているかのようにも思えてくる。
 
ちなみに、全長4mを切っていることは、取り回しやすい、駐車しやすいだけではなく、カーフェリーの乗船において、この4mを境にガクっと料金が下がるため、リーズナブルに旅行が愉しめる、そんなところにもメリットがある。
 
ボディーはコンパクトでも、そのエクステリアデザイン、そしてインテリア、さらには居住性は、クラス感を超えた存在感、実用性にあふれている。アクティブと表現したくなる走りをダイレクトに表現したエクステリアは、ダイナミックでありスポーティー。その造形は写真で見る以上に実際は複雑であり、最初目にした時には、ちょっと要素を詰め込み過ぎではないか、と思えたが、やがてそこにエレガントさを感じるようになり、同時に運転してみたくなるワクワク感に駆られるから不思議だ。
 
インテリアも同様だが、トレー類にしても、メーター部にしても取って付けたかのようなテイストではなく、造形にうまく溶け込んでいるおり、それはあたかも自然の中で歳月を経て削られていった造形物かのよう。シートは、コンパクトカーと思えぬサイズ感とサポート性をバランスしており、リアシートの脚下スペースは広い! と叫ぶまでには至らないが、これでいいんじゃない!? そんな広さを獲得している。
 
パワーユニットは、新世代ハイブリッドユニット(1.5Lガソリン+モーター)のほか、1.5Lガソリン、1.0Lガソリンを設定。ハイブリッドユニットでは、リアをモーターで駆動するE-Four(4WD)も用意している。
 

新しい「ヤリス」の実力と魅力

今回試乗したのは、新開発1.5Lガソリンモデル。燃焼効率を追求し、低燃費と高出力をバランスさせつつ、発進用ギアをプラスしたダイレクトシフトCVTとの組み合わせにより、発進時から高速域までストレスフリーのパワーを提供してくれる。アクセルを強く踏み込むと少々ノイジーにはなるが、その加速は途切れることなく続き、ストレスを感じさせないどころか十二分だと思えてくるほどだ。
 
プラットフォームは、TNGAコンセプトをBセグメント用に仕立てたGA-Bを採用。軽量かつ高剛性なだけではなく、さらに低重心も実現。ちなみに、先代と比較すると車両重量を50kg軽量としながら、ねじり剛性を30%以上も高めているという。
 
それらは走り出した瞬間に、軽快感とボディーのしっかり感として、誰しもすぐに感じ取れるものだ。また、15mm下げられたという重心高は、走りに想像以上にキビキビ感を与えている。言い方を変えれば、ハンドリングから素直さを強く感じ取れるようになり、また、コーナーでの安定感もすこぶる高くなっている。つまり、安心感と快適性だけではなく、愉しさまで手に入れている。ただし、乗り心地は硬め。Gグレードの標準タイヤサイズは14インチだが、試乗車はオプションの15インチを採用していたことに起因している……、といっても、それは不快な硬めではない。どちらかといえば、シャシー剛性をすこぶる引き上げ、サスペンションの動きを明解にするために必要だった、硬さ。もちろん、ボディー剛性はそれにしっかりと対応できるポテンシャルを持ち、そして、しばらくするとその硬さにも慣れてくる。
 
安全性能については、おなじみToyota Safety Senceに、交差点右折時の対向直新車や、右左折後の横断歩行者まで検知対象とした仕様を、XBパッケージを除いて標準装備。さらに、駐車位置のメモリ機能を採用し、区画線のないスペースでのパーキングアシストも行ってくれる高度駐車支援システムToyota Teammateを設定するなど、安全安心はもちろん、使いたくなるシステムを提案していることもポイントだ。
 
アイテムにおいては、AM/FMラジオチューナーやUSB入力を備えた、ディスプレイオーディオ(もちろんスピーカー付)を全てのグレードに標準装備(一部7インチ)とし、必要に応じてナビゲーション機能をディーラーオプションとしてインストールするというスタイルを提供。もちろん、専用通信機であるDCMも標準装備しており、オペレーターサービスはもちろん、エアバッグが作動した際にオペレーターに自動接続してくれるヘルプネットも装備している。
 
すべてが新しいヤリス。その魅力は、コンパクトカーたるスタンダードな性能だけではなく、こうあるべきという新提案を積極的に行っているところにもあると思う。そして、すでに御存知のように、このヤリスをベースにしたハイパフォーマンスモデルであるGRヤリス、さらにはクロスオーバーモデルとなるヤリスクロスの存在も明らかになっており、しばらくはヤリスファミリーから目が離せなくなりそうだ。
(文:吉田直志/写真:佐久間 清人)

 

ボディーサイズは先代とほぼ変わらぬ全長3,940mm、全幅1,695mm、全高1,500mm(4WDは1,515mm)。ボディーカラーは、オプションとなるブラック×コーラルクリスタルシャイン(7万7,000円高)。

 

リアウインドウとコンビネーションランプを一体的な造形としたこともポイント。ボディーのツートンカラーは、その境をCピラー途中、ウエストラインに沿ったものとしており、ダイナミックに通じるスポーティーさを強調。

 

上下グリルを一体化したかのようなデザインが印象的なフロントフェイス。バンパー左右にはエアダクトを模した大型のブラックアウト部をプラス。
撮影車は、メーカーオプションとなる3灯式フルLEDヘッドランプ+LEDターンランプ+LEDクリアランスランプを装着。視認性だけではなく、フェイスに精悍さも与えている。

 

左右テールランプをガーニッシュで繋ぐスタイルは、最近のトヨタ車のデザイン手法のひとつ。
リアのフルLEDコンビネーションランプはメーカーオプション。フロントLEDユニットとのパッケージで、8万2,500円(税込)。

 

インパネ断面を薄くしてワイド感を強調したほか、ステアリングホイールの径を小さくすることでスポーティーかつ広さを感じさせるインパネ。

 

全グレードにスピーカー付きとなるディスプレイオーディオを標準装備。ディーラーオプションとしてT-Connectナビキット(11万円・税込)とエントリーナビキット(6.6万円・税込)を、また、スマホ(Apple CarPlay、Android Auto)との連携機能(3.3万円・税込)を設定。

 

サイズ感、サポート性に十分なフロントシート。シートポジションをメモリさせ、簡単に再現させることを可能とした運転席イージーリターン機能、乗降時にシート回転させることで乗降性をアシストするターンチルト機能(運転席、助手席)を設定していることもトピック。
脚もとは広々とまでは表現できないが、狭いとは感じさせないリアシート脚下。全グレードで6:4分割可倒式を標準装備している。

 

荷室幅は最大1,000mm、荷室長はセカンドシート使用時630mmを確保。デッキボード下段時(写真)では荷室高は830mmを確保。デッキボード上段時でも692mm。

 

撮影車両はメーカーオプションとなる185/60R15サイズのタイヤとアルミホイールを装着。ちなみに、Gに標準装備されるタイヤサイズは175/70R14で、スチールホイールが組み合わされている。

 

新開発となるM15-FKS型/直3・1.5Lエンジン。全域に渡ってトルクフルであり、かつ低燃費(21.4km/L・G 2WD)であることを特徴とするが、ダイレクトシフトCVTとの協調によって力強さも合わせ持っている。
コーナー手前でスタンスを決めると、それを崩すことなく、余計な動きを見せることなく、駆け抜けていってしまう。タイヤのグリップ感も明確になっており、ドライバーは操る愉しさを感じ取れる。

 

TNGAを採用したことでボディー剛性とシャシー剛性はすこぶるアップ。結果、サスペンションをしなやかに動かしながら、直進安定性を大きく高めるというハイバランスを手に入れている。
サイズとしてはひとつ大きくなるタイヤ、ホイールを組み合わせたこともあってか、乗り心地は少々硬め。しかし、不快感には届いていない。その分、ハンドリングに明確さが現れており、好印象。
 

 

トヨタ自動車 公式サイト

https://toyota.jp