【紹介/試走】SUZUKI XBEE HYBRID MZ 4WD

2018.4.9

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軽快!楽しい!
クロスオーバーの新種デビュー

 

 

 

 

 

 


お馴染みのマイルドハイブリッド
パワフルな直3直噴ターボを搭載
昨年の東京モーターショーにて初公開され、年末に発売となったスズキXBEE(クロスビー)。愛嬌たっぷりの顔つきや、スクエアかつ腰高なその外観から、人気軽ワゴン「ハスラー」の小型車版…つまりジムニーなら660とシエラの関係か? という認識の4×4ファンも少なからず居るようだ。確かに「ハスラーの兄弟分」とも言える立ち位置ではあるが、正確には、同クラスのイグニスとプラットフォームを共有する“小型クロスオーバーワゴン”という位置付けだ。


イグニスと同様、スズキ独自の“マイルドハイブリッド”と呼ばれるガソリンエンジン+ISG(モーター機能付き発電機)のパワーユニットが採用されているが、イグニスの1.2リッター直4-DOHCガソリンの自然吸気エンジンよりパワフルな1.0リッター直3・DOHCガソリンターボエンジンが搭載される。これをアシストするISGはイグニスと同スペックの電気モーターだ。
 
ラインナップは、ふたつのグレード(MZとMX)にそれぞれ2WD(前輪駆動)とフルタイム4WDが設定された全4モデル。全車マイルドハイブリッド仕様で、トランスミッションは6速ATである。
 
上級グレード:MZと標準グレード:MXの差は、主に誤発進抑制機能やブレーキサポート機能、車線逸脱警報といった類の、いわゆる先進安全機能装備の有無であり、基本的な走行性能や装備に大きな違いはない。また、MXであっても「スズキセーフティサポートパッケージ装着車」を選択すれば、上記のような先進安全機能が装備されるので、さほどグレード差を感じさせない設定と言って良いだろう。

 


走りは軽快そのもの
余裕のパワーとレスポンス
試乗車両は上級グレードのMZに全方位モニター用カメラパッケージやパナソニック製ナビ、ドライブレコーダー等のオプションが追加された豪華仕様車で、もちろん4WDモデルだ。ボディー色はキャラバンアイボリーパールメタリックで、ホワイトの2トーンルーフ仕様はメーカーオプションとなっている。
 
派手さはないものの、なかなかにオシャレで落ち着きのあるオトナなカラーリングで、個人的にはイチ押し。ちなみに、軽のハスラーでは、パッションオレンジやフェニックスレッドパールといったポップなカラーを基調とした2トーンカラーが人気の上位を占めている一方で、クロスビーはこの手のシックなカラーが人気とのこと。姿形は一見似ている両者だが、ユーザー層やその嗜好の違いは明らかだ。
 
車内に乗り込んでみると、イグニスよりも“遊び”をアピールしたポップなデザインが施されたインパネが眼前に迫ってくる。しかし実用面で見ると、スイッチ類が大きく、視認性や操作性がよく考えられたデザインで、インパネシフトのATセレクトレバーも操作しやすい。
 
運転姿勢はジムニーやハスラーと同様アップライトポジションで、全方向の視界が広く、車両感覚もつかみやすい。空力的には不利かも知れないが、ほぼ垂直に立ち上がったサイド・ウインドゥと、やはり立ち上がりの角度が急なフロント・ウインドシールドのおかげで前席頭上の圧迫感は非常に少ない。また、夏場の車内に差し込む日射しが少ないこともメリットのひとつと言える。
 
ひととおり操作系を確認し、さっそく街中での試走を開始する。このクロスビー、見た目の可愛らしさとは裏腹にけっこうキビキビと走る。ハスラーのように軽快でありながら、剛性感や操安性は明らかに1クラス上の走りだ。


“必要充分なパワー”を提供するノンターボ1.2リッター4気筒搭載のイグニスに較べると、クロスビーの1リッター直噴ターボ3気筒は、余裕のパワーとシャープなレスポンスが売りだ。同等グレードの4WDモデルで較べるとイグニスの方が80kgほど軽量だが、それでも軽快さではこのクロスビーが一枚上手である。
 
また、イグニスと同様ドライビングモードの切り替え(SNOW/SPORT)が可能。SPORTモードONでハッキリと走りが変わるので、メリハリを効かせた走りとエコランを使い分けたいドライバーに対してはアピール度が高そうだ。


ビスカス式センターデフ採用
機能拡張スイッチONで気分もup!
4×4システムは、やはりこれもイグニスと同様、ビスカスカップリング式センターデフによって前後輪に適切な駆動力を配分するタイプのフルタイム4×4を採用している。通常はほぼ前輪駆動配分で、空転を検知するなどトラクションの変化に応じて後輪に駆動力を配分する。
 
トラクションは常にESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)、つまりエンジン出力や各輪のブレーキ制御等によってコントロールされているが、さらに、インパネ中央部にスイッチが設置されているグリップコントロールをONにすると、ブレーキ制御によるトラクションコントロールの効きが早まり、より積極的なトラクション確保ができる仕掛けとなっている。


今回はクルマの性格上、本格クロスカントリーと呼べるような試走は行っていないが、海水浴場などでよく見られる砂浜の駐車場のような場所で、このグリップコントロール機構を試してみた。
 
やや傾斜した砂浜を低速で走り、片輪が空転するポイントを見つけたら、そこをゆっくり前進する。グリップコントロールOFFであっても、一輪が空転し始めて前進が阻まれると、空転したタイヤにブレーキがかかり他の接地輪に駆動力が配分され、前進が再開できる。
 
ここをグリップコントロールONで走ると、空転が始まってから制御が効くまでの時間が早まり、よりスムースに前進を続けられる。もちろん、タイヤが砂に潜ってしまうような空転の場合は、さすがに歯が立たないが、スイッチONでスタック回避の可能性が高まることは間違いなさそうだ。
 
なお、この手の機構をセンターデフロック機構と混同するケースもあるようだが、もちろん舗装路上でこれをONにしても、曲がりにくくなったり、タイトコーナーブレーキング現象が発生するようなことはない。
 
舗装路上でONにしても問題は起きないのだから、スイッチなど着けず最初からそのような設定で一向に構わないと思うのだが、そこはやはり「機能拡張」的な演出も楽しい、と理解すべきなのだろう。
 
現在ではほとんど採用されなくなったパートタイム4×4の愉しさ…つまり、ドライバーが自分で判断して4輪駆動に切り換える、という操作(儀式)も楽しみのひとつであったことを考えると、このグリップコントロール・スイッチの存在も、あながちムダではないかも知れない。


ハスラーはもちろん、兄弟車とも言うべきイグニスと較べても、明らかにテイストの異なるクロスビー。一部では、ハスラー同様カスタムのベース車としても人気上昇中だという。
 
快適でストレスのない走り、街中でもオフロードでも絵になるスタイルを持ちつつ実用性も兼ね備える…まさにクロスオーバーなキャラクター。様々な方向性へのポテンシャルを感じさせる1台だ。

K10C型996cc 直列3気筒DOHC直噴ガソリンターボエンジンを搭載。最高出力73kW(99PS)、最大トルク150Nm(15.3kgm)を発生するVVT(可変バルブタイミング)機構搭載のパワフルなユニットだ。最高出力2.3kW(3.1PS)/最大トルク50Nm(5.1kgm)を発生するISG(モーター機能付き発電機)によってエンジンをアシストするマイルドハイブリッドシステムを採用。

【騒音計測データ】
●車内・・・・42.0dB
●ボンネット閉・・・・55.5dB
●ボンネット開・・・・68.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

アナログメーターはイグニスと共通デザイン。

全体的なインパネデザインは、イグニスよりもポップな印象。操作性と視認性に優れたデザインでもある。

トランスミッションは、6速ATを採用。パドルシフトによるマニュアル操作も可能。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インパネ中央部の左側にヒルディセントコントロールとグリップコントロール、右側にドライブモード(SNOW/SPORT)の各スイッチを配置。

 

座面に撥水加工が施されたファブリックシートは全車標準装備。アップライトなポジションのフロントシート(右)。リアシート(左)は3人掛けでスライド、リクライニング可能。

リアシートは50:50分割式。助手席の背もたれを倒せば、さらに長尺物積載が可能。防汚素材のラゲッジフロアは、濡れた荷物でも気兼ねなく積める。

ラゲッジスペース最後部の床下には37リッターの容量を持つラゲッジアンダーボックスが仕込まれている(下左)。それを外すと、さらに広いスペースが現れる(下右)。

 

 

 

オートレベリング機構付きヘッドライト、ポジションランプ、フォグランプはすべてLED。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロントサスは、マクファーソン・ストラット(左)、リアサス(右)はアイソレーテッド・トレーリングリンク式と呼ばれるリジッドアクスル式コイル。これもイグニスと同形式。


 
タイヤサイズは全車とも175/60R16。