【試走】NISSAN X-TRAIL 20X & 20X HYBRID

2017.6.28

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ブレないXスピリット

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ガソリン車とハイブリッド車
強風と豪雨の中で試乗敢行

 

主なマイナーチェンジの内容や細部の解説、およびグレード展開等の詳細に関しては前回の記事「日産、エクストレイル」をマイナーチェンジ】をご参照いただくことにして、今回はオフロードも含めた試走のインプレッションをお届けしたい。

 

試走は、先日開催された新型車試乗会で行ったが、当日は俄に活発化した梅雨前線の影響により、猛烈な強風と豪雨の中、敢行された。

 

写真撮影には最悪の条件とはなったものの、もともと“苛酷な条件下でもタフな走り”をアピールしてきたエクストレイルの試乗には、まさに好都合…ということで、横殴りの雨の中、車内に駆け込み、さっそくガソリン車から試乗開始だ。

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すぶ濡れになりながら乗り込み、そのうえドア開閉時に雨が大量に降り注いだが、防水仕様のシート表面に着いた水玉は手で払うだけできれいになくなり、快適そのもの。しかも、このシートは進化していて、防水仕様であると同時に透湿性も兼ね備えており、シートに着いた水滴を拭き取りきれなくてもムレない…という性質を持つ。

 

また、肌触りの良いウレタン状の表皮部分は滑りにくく質感も向上している。シート関連で“上質”を謳うクルマは、レザーシートを指す場合が多いが、新型エクストレイルの防水シートもなかなかの上質感だ。

 

試乗車の20X 4WDが搭載するガソリンエンジンは、最高出力108kW(147PS)/6,000rpm、最大トルク207Nm(21.1kgm)/4,400rpmを発生する2リッター直4DOHC。立ち上がりや加速フィーリングにシャープさはないが、必要充分なパワーとトルクを備えている。

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リアシートから撮影していたカメラマン氏が「けっこう細かく揺れますね…」と、乗り心地の硬さを指摘。車内でファインダーを覗くカメラマンは、揺れには敏感なのだ。ドライバーズシートではさほど硬く感じないが、リアシートでの印象はやや違うようだ。

 

雨足がさらに強まり、車外での撮影が困難なので、とりあえず高速道路へ。ここで、アクセル、ブレーキ、ステアリングの自動制御によって一定の車間距離と車線を保持する「プロパイロット」を試そうというわけだ。

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しかし、激しい雨と先行車が巻き起こすしぶきによって車線を監視するカメラが機能しないことを想定した安全装置が働き、車線中央を走行させるステアリング制御機構はキャンセル。これはワイパースピードを「間欠モード」より速くした場合も自動的にキャンセルされるよう設定されている。

さらにワイパー速度を上げるとオートクルーズ機構に連動した車間距離制御もキャンセルされる。

 

それならば、と、トンネルに入ったところでワイパーを間欠モードにして、再度プロパイロットのスイッチをON。すると今度は設定した速度を上限とした自動運転制御がキチンと機能し始めた。車間距離保持のスピード調節や、車線キープのステアリング制御はごく自然に行われるため、不安感はほとんどない。スイッチ操作も直感的に行えるしくみになっており、使い慣れればかなりドライバーの疲労が軽減できるシステムだ。

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「PILOT」スイッチON後、「SET」で速度設定し、「+/−」で速度調整。左ボタンで車間距離を設定する。

 

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自動運転の設定状況がメーター中央に表示される。

 

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車線キープのためのステアリング制御が働くと同時に表示と警報で警告。

 

 

乗り心地ソフトなハイブリッド車
LOCK時はモーター駆動が使えない!?

 

高速試走後、今度は20X ハイブリッド 4WDに車両チェンジして近くの川原に向かう。途中、先ほどのガソリン車で走った同じルート上で、リアシートのカメラマン氏が「あれ?コレはあんまり揺れないな。乗り心地もソフトですね」と、ガソリン車との違いを指摘。

 

後に開発部門に確認したところ、これはダンパー(ショックアブソーバー)減衰力設定の違い以外にも大きな要因があるとのこと。具体的には、リア・アクスル上に重いリチウムイオンバッテリーを搭載するハイブリッド車には、ガソリン車に無いリア・スタビライザーが装着されており、これがローリングを強く規制しているため揺れも少ないようだ。そもそもリア荷重が大きい時点で跳ねが抑えられ、乗り心地がソフトになるケースも考えられる。

 

ハイブリッドモデルのパワーユニットは、ガソリン車と同じ2リッター直4DOHCに電気モーターを組み合わせ、最高出力108kW(147PS)/6,000rpm+30kW(41PS)、最大トルク207Nm(21.1kgm)/4,400rpm+160Nm(16.3kgm)を発生する強心臓だ。

 

公道での加速フィーリングも、ガソリン車試乗の直後ということもあって非常に軽快に感じる。グレードや仕様によっては車重がガソリン車より100kg以上重くなるハイブリッド車だが、取り回しは実に軽快だ。

 

直4エンジンに関しては同じスペックであるとは言え、エアコンが電動式でエンジンに負担をかけない等の違いもあり、これに発進時から最大トルクを発揮する電気モーターのアシストが加わるため、とりわけ発進加速はトルクフルである。

 

川原に到着すると、さっそく駆動モードをLOCK ONに切り換える。AUTOモードでは前後の駆動力配分が状況に応じて100:0〜約50:50に可変するが、このLOCKモードでは配分が約50:50に固定され、不整地に適したした4×4走行が可能となる。

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ハイブリッド車の標準タイヤサイズは225/65R17。さほどホイールリムと岩の干渉を気にしなくても走れるサイズと言える。

 

 

ただ、非常に残念な点は、LOCKモードではモーター駆動がキャンセルされる、というシステムであること。特にこのような石や岩が多い場所では、低回転から高トルクを発揮するモーターのアシストが大きなパフォーマンスを生むはず。

 

もちろん、制御上の問題や、同じオフロードでも雪上走行等、発進時に過大なトルクを掛けたくないケースもあるのでモーター駆動にも一長一短あろうが、ここはぜひモーターの特性がメリットとしてオフロード走行に活かされるような開発に期待したいところだ。

 

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「2WD」「AUTO」「LOCK」の切り替えダイアル(上)。AUTOモードでは通常(前:後)100:0で走行し、走行状況により最大約50:50まで自動調整される。LOCKモードでは約50:50固定となる(左下)。充電(回生)状態やエンジン/モーター駆動のモニター表示(右下)。

 

 

タフギアでなければならない
初代モデルからブレないコンセプト

 

エクストレイルは「ブレないクルマ」…今回のマイナーチェンジで、さらにその印象が強まった。もちろん、本格クロカンと呼べるほどのスペックを持ち合わせているわけではない。

 

しかし、SUV、とりわけこのコンパクトクラスのSUVは、得てして売れれば売れるほど肥大化が進み、高級路線にまっしぐら…というケースも少なくない。

 

そんな中にあって、このエクストレイルは、初代モデルに溢れていた個性こそ薄れたものの、当初からの四駆=タフギアという路線はいまだ健在で、中途半端な高級化路線とは無縁の趣だ。

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文/内藤知己

写真/川上博司