【BACKWOODS】 宮島秀樹

2014.10.24

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LC70_2014106

 

10年ぶりに国内での復活を果たしたランドクルーザー70。発売後1か月で月販目標200台に対して約3,600台を受注したという報道があったが、その後も販売は好調のようで、トヨタでは嬉しい悲鳴を上げているそうだ。RVブームの頃のパジェロやサーフ、プラドに比べたら大した台数ではないのに…とも思ってしまうが、前後リジッドサスでマニュアルシフトしかないクルマが、これだけ売れて、ネットニュースになるほど話題となっているのは、高級化&快適化(=乗用車化)が進んでいる今のSUVマーケットにおいて確かに特異なことではある。

 

そんな状況もあって、最近取材などでナナマルに乗る機会が多いのだが、そこで感じたことをここで述べておこうと思う。ここでは細かいインプレッションには触れないが、ひと言で言えばナナマルは久しぶりに「ワクワク」するクルマだ。それはオフロードに限ったことではない。普通に街中で乗っているだけで、ワクワクするクルマなのだ。高い視点から見下ろす、今ドキのSUVにはない角張ったボンネット。ストロークの長いマニュアルシフトとペダル類。立ち気味の着座姿勢。すべてが乗用車や今様のSUVとは違っており、シートに腰掛けるだけでもオフロードカーに乗っているのだという実感が湧くのだ。それがワクワク感の根源となっている。

 

そのワクワク感も、バンよりピックアップの方が上に感じる。乗り心地や取り回しはバンよりも悪いのだが、かえってそれがイイ。全高はたった30㎜の違いだが、視点は明らかにバンよりも高く、背の高さを感じさせる。こうしたことが、デメリットではなく、かえってナナマル・ピックアップの”味”となっているのだ。もちろん、これは理屈ではなく感想にすぎないのだが、同行した取材スタッフも一様にピックアップの面白さを口にしていたのが印象的であった。

 

オンロード性能と快適性の向上と引き替えに最近のSUVが失ってしまったものを、ナナマルは持っている。本来オフロードとは道を外れた場所を意味する言葉であり、オフロードカーはスピードやパワー、快適性といったオンロードカーのベクトルだけでは語れないクルマであることを今更ながらに再認識させられた。ただ惜しむらくは、ナナマルは期間限定の販売であり、それに代わる国産四駆も今やジムニーくらいしか見当たらないことだ。こうした本格四駆が姿を消してしまうことは、ひとつの自動車文化の消失に等しい。幸運にもナナマルのオーナーになられた方には、くれぐれも末永く大切に乗っていただきたいと思う。

 

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