復活!! ジムニー祭り

2016.1.31

    • インタビュー
    • スズキ

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ジムニー祭りに見た有終の美学

数万人規模を抱えた「ジムニー祭り」。
第二回大会以来、本誌ではこのイベントを毎年の恒例行事としてお届けして来た。
訪れるギャラリーは毎年増え続け、一大イベントへと成長。
メインレースとなる「ジムニーレース(JSTC)」は、エントラントが200台を超えた。

 

毎年カメラを片手に参加をしていると、顔見知りが多くなる。
あのとき子供だったあの子が運転免許を取得…
東北人にとって、否、ジムニー乗りにとって
ライフワークのひとつとして、すっかり定着していたイベントだった。

 

「惜しまれながら、フィナレーを迎えたい」。
一本太い筋の通った、ジムニー祭り主催者矢羽々氏(エヌズステージグループ代表)らしい終わりの美学を貫いた。

 

それゆえ、20年近く親交を頂いている私からしてみれば、
今一度「ジムニー祭り」の名称を持ち出してくることは、想像すら出来ないことだった…。

 

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骨太な漢を動かした、選手奥さんのひと言

yahaba01_3682-thumb-250x350-28550矢羽々社長(以下、敬称略)「もうジムニー祭りは、思い出のひとつにしまっておこうと思っていたんだ。
しかし、いざ終わりを告げてみると、”続けて下さい!”と、多くの声が寄せられてね。
僕だけじゃなく、30人からのスタッフたちが、それぞれの持ち場で、声をかけて頂いてね。こんなにも多くの方達に、愛され、惜しまれていたことに、改めて気付かされたんだ」。

 

本誌「私も同感(笑)。ところで、社長の気持ちを動かすきっかけは何だったんですか?」

 

矢羽々「たまたまFacebookを見ていたら、毎年ジムニー祭りに選手として、ご主人が参加しているという奥さんからのメールが届いていたんです。
今年、あのとき生まれた子供が三歳の誕生日を迎えました。そんな折なので、メールしたんです…という書き出しでね」。

 

本誌「………!?」

 

矢羽々「陣痛が始まり病院に入りました。折しも、そのときがジムニー祭りの日に重なってしまって。
旦那は、ジムニー祭りで走るんだと言って、私独りで出産を迎えたんです。でもそのことを矢羽々さんに伝えたいのではないんです。
ウチの旦那からジムニー祭りを取り上げないで下さい!」

 

矢羽々「さすがにこの手紙には参った。女性にとって最も大切な瞬間を、ジムニー祭りが奪い取ってしまった。
謝るべき立場の俺が、逆に、取り上げないで下さいって。そんなエピソードを、別のお客さんについ話したら、実はウチも、私の旦那も…って。
こんなにも生活に根付いていたことを教えてくれて、俺こそ責任を全うしなければいけないって、この時感じたんだ」。

 

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ジムニー乗りのためのジムニーイベントへ

本誌「復活するジムニー祭りですが、新たに考えていることがあるかと想像されますが」

 

矢羽々「これまでジムニー祭りは、複合車種によるイベント要素も強かった。しかし、これからのジムニー祭りは、イベン ト名の通り、ジムニーだけのイベントにしたいんだ。レースはもちろん、女性も子供も、ジムニーで一日遊べるようにね。原点に還る。これがエヌズステージス タッフ全員の意見かな」。

 

本誌「JSTCレースは、ノーテストガイズなど、様々なクラブチームや選手達が切磋琢磨して、全国規模のレースになりました。若者達が入って来ているものの、僕たち同様、一線級の選手達も中年の仲間入りを果たしましたね」

 

矢羽々「ジムニーの草レースからJSTCへの道のりは、ノーテストガイズをはじめとする選手達が生み育ててくれたんです。でもこれからは、エヌズステージがレースを創って行きたいんです」。

 

本誌「そういえば、昨年一年間、矢羽々さんは可能な限りレースに参戦していましたね」

 

矢羽々「昨年は、イベントを主催しながら、必ず僕もいちエントラントとして、レースに参戦して来ました。それは選手達 とともに走ることで、生の声を拾いたかったし、レースというカテゴリーを自分の中で感じてみたかった。選手達はレースに何を求め、どんなレギュレーション が公平で、そんな声に主催者はどう応えるべきかってね」。

 

本誌「そして見つかったものは!」

 

矢羽々「ひとつ目は、レースに格式を持たせたいと言うこと。
テストケースとして行って来たジムニーダートレース(JDR )は、今年正式レースとして開催したい。それもJAF公認のレースとしてね。本物の競技としてJDRを育てて行きたいんだ。
そして二つ目は、JSTCにもっともっと若者を呼び込みたい」。

 

本誌「具体的には?」

 

矢羽々「TOYOTAさんが運営しているハチロクのレースの様に、指定部品を決めて同一コンディションでしのぎを削る。そうすれば、最低限の装備品でレースへの出場が可能になる。そうやって、裾野を広げ、次世代にこのイベントとレースを残して行きたいんだ!」

 

本誌「最後に、矢羽々さんにとって、ジムニー祭りとは」

 

矢羽々「ジムニー祭りは、参加してくれた皆に育てられ、愛され続けて来たイベント。
そして僕を、エヌズステージ社員達を育ててくれたイベントだと思っています。
だから今度は、俺たちエヌズステージが恩返しをさせて頂く番。
三年前独りで分娩台に上った奥さんがくれた命がけの言葉にも必ず応えたい。
そう、あのときのお子さんが、エントラントとして出場してくれるよう、俺たちも頑張らないとね!」

 

2016年5月29日。
ジムニー祭りJSTC決勝レースを終え夕餉を迎えた食卓。
「パパが一番格好よかった!」
「そうだよね!」
4歳になったあのときのお子さんを真ん中に、家族の団らんが営まれているに違いない。

 

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<ジムニー祭り第16章(仮題)>
◆開催日:2016年5月28(土)〜29日(日)
◆開催場所:サーキットパーク切谷内(青森県八戸市)
◆お問い合わせ:エヌズステージグループHP/http://www.ns-stage.com