最新自動車情報〜スズキ スイフト

2017.7.22

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操ることの楽しさを=ハイブリッド

ハイブリッドユニットと訊くと、ついつい低燃費・環境性能だけを期待してしまうが、スズキ・スイフトに採用されたハイブリッドユニットは、それに加えて、走る愉しさを引き上げてくれるフィーリングを作り込んでいる。

これまでスズキが提案してきたハイブリッドシステムは、マイルドハイブリッドと呼ばれ、発電を行うオルタネーターにモーター機能を加えたISGを用いることで、減速エネルギーによる発電はもちろん、モーターによってエンジン再始動時や加速時にアシストをするもので、シンプルなシステム構成を特徴とした簡易型ハイブリッドシステムだった。
 
それに対して、新たに採用したハイブリッドシステムは、CVTよりも小さいシングルクラッチタイプの2ペダルMT(AGS)の出力側にコンパクトな駆動用モーター(MGU)を組み合わせ、状況に応じてエンジンを停止させ、減速エネルギーを効率よく回生、モーター単体による走行も可能としたもの。このAGSの採用は、コンパクトであることの他、MT由来でもある駆動伝達ロスを小さくできる(ダイレクト感がある)といったメリットがあるが、欧州車で多く見られるデュアルクラッチ式とは異なり、シフト時に次のギアをセレクトするためにトルク変動が大きく、フィーリングとしては空走感を乗員に伝えてしまうというデメリットも併せ持つ。
 
しかし、このハイブリッドユニットに組み合わされたAGSは、そのラグ(空走感)をモーターアシストによってギアセレクト時であっても、ナチュラルなつながりを作り上げており、デメリットを解消。実は、この技術、前回(2015年)の東京モーターショーにて出展され、その後、昨年11月に発売されたソリオハイブリッドにて初採用となったテクノロジーだ。
 
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ハイブリッドシステムを搭載した走り

このハイブリッドシステムを採用したスイフトの走りは、愉しさにあふれていた。シフト時の空走感は完全に消えてはいないが、不快に感じるようなレベルだけを取り除き、シフトしたという感覚が残されており、ドライバーにとっては自らがクルマを走らせているといった愉しさを助長してくれるものとなっていた。
 
パワーについてはアクセルを大きく踏み込めば1.2Lデュアルジェットガソリンエンジンにモーターによる駆動が加わり、気持ちのよい加速を披露してくれるなど、メリットを強く感じる。ハイブリッドユニットによる重量増が気になるかもしれないが、実はその分、シャシーの動きにしっとりとしたフィーリングが加わっており、重厚感を印象付けるような乗り味を手に入れている。
 
最近のスズキ車はボディーの軽量化を果たし、低燃費や運動性能に貢献していることを謳っているが、その分、しっとりとした重厚さを感じさせるような乗り味が少々薄れていた印象を持っていた。しかし、今回の重量増は、たまたまとはいえ、それを上手く補ったかのような印象があり、そういった面でもバランスの良さを感じた。
 
今回の試乗会では、スイフトの走りの良さだけではなく、AGSを組み合わせたハイブリッドシステムの他車種への展開も想像させてくれるものだった。
 
AGS単体では、先に述べたような空走感は消しきれないが、モーターによるアシストを組み合わせることで、それは気にならないレベルまで改善できることをこのスイフトにて実証。そう考えると、クラッチレス2ペダルモデルをATからCVTへとスイッチさせられずに地団駄を踏んでいる、軽トラックのキャリィや軽ワンボックスのエブリィ系、さらにはジムニーに組み合わせられるのではないかと思った。もちろん、そこには信頼性や耐久性といった大きな課題が立ちはだかるが、このスイフトを試乗してスイフトの素性の良さに改めて感心しながら、そんな期待も感じた。(文章:吉田直志)
 
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新たに登場したハイブリッドシステムは、1.2Lデュアルジェットエンジンに駆動用モーター(MGU)、オートギアシフト(AGS)、インバーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたパワーパックから構成される。
 

 
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重量が増したとは言っても、車両重量はハイブリッドSGで940kg、ハイブリッドSLで960kg。エコカー減税は免税を達成。
ちなみにラゲッジ容量は178L(そのほかのモデルは265L)となる。
 

 
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2017年1月にデビューを果たしたばかりの4世代目スイフトに追加されたハイブリッドモデル。外観では、ハイブリッド専用フロントグリル、フロントフェンダー左右とバックドアにハイブリッドエンブレムを採用。オプション設定となっていた先進安全技術&運転サポートを最上級グレードハイブリッドSLで標準装備とした。
なお、JC08モード燃費はマイルドハイブリッドモデルの27.4km/Lに対して4.6km/L(約17%向上となる)32.0km/Lを達成。