東北から活力を発信

2011.12.5

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2011年3月11日に発生した未曾有の大災害、東日本大震災。この震災は、エヌズ・ステージ&GMシボレー盛岡の代表を務め、業界を牽引してきた矢羽々氏の胸中にも大きな影響を与えた。

 

岩手県盛岡市の中心部にあるエヌズ・ステージ&GMシボレー盛岡。内陸にあるため地震や津波による直接的被害は免れたが、スタッフの中には実家 が沿岸部にあり、震災発生以降、連絡がとれない者がいた。店舗は電力の供給が途絶え、4日間の停電。店舗には防災電話を設備していたが、相手側の回線が完 全に遮断されているために連絡がとれない。これは直接安否確認しに行くしかない! ということで、すぐさま行動をおこし、スタッフを引き連れて被災エリアへと向かった。

 

スタッフの実家はギリギリのところで津波の被害を免れており、無事が確認できたが、そこで目にした光景は壮絶なものだった。被災直後で自衛隊な どの救助活動も行き渡っておらず、津波に押し流された家屋やクルマ、絶命した姿のままの遺体が目に飛び込んできたという。また全ての幹線道路は検問があ り、路面は至る所で陥没し、移動もままならない。4×4の必要性も改めて認識した。

 

盛岡に帰った代表は、GMシボレー盛岡をベースに支援物資を募り、被災地に直接届ける活動を開始。国や自治体、民間の救助活動も先が見えない 中、自ら被災した人々を助けるしかない、という決意からの行動だ。地元TV局やラジオでその情報を発信すると、全国各地から多くの物資が届き始めた。避難 先では冷たい土間の床に直接寝ている人々が大勢いる…という情報を発信すると、コンプリートカー・エヌズリミテッドやJSTC運営などで連携している 千葉のVIPオートから大量の畳が送り届けられた。

 

また、震災発生から約10日後には、ジムニー祭りの総合MCとして活躍している地元アイドル、ふじポンを登用した「LOVE岩手ふじポン義援金 事務局」を開設。民間からの支援のほか、エヌズ・ステージと普段から協力関係にあるCross-j、ハイブリッジファースト、トライフォースなど多くの企 業からの支援も得て、約500万円もの支援金が集まった。仕事を通じて出逢った多くの仲間たちに助けられた。

 

物資や支援金を集めること自体ももちろん大切な目的だったが、自らの足で被災地に運ぶ…という行為こそが重要な意味を持っていた。被災地で 今、求められているモノを肌で感じることができたからだ。震災直後にはまず食糧、次に求められたのは毛布などの物資、そして復興に必要な資金…と、そ れは日を追うごとに刻々と変化していった。代表だけでなく、スタッフ皆で被災地支援活動に出掛けた。今年新卒で採用した5人の社員は、就職して最初の仕事 がなんとボランティアだったという。

 

毎年恒例で開催してきた「ジムニー祭り」の今年度開催を決意したのも、そうした被災地の現状を見てきたからこそだ。

 

大きなダメージを受けている東北で、クルマのイベントなど…当時は世の中全体がそうした気運だったが、現場を見てきた矢羽々代表は「これか らの東北に必要なのは自粛することよりも、落ち込んだ気持ちを再び奮い立たせ、経済を活性化し、復興への足がかりを摑むことだ!」と確信していた。そうし て第12回目の開催となったジムニー祭りは今年7月、日本最大級のアメ車イベント「IKURA’Sアメリカンフェスティバル」とのコラボレーション、しか も東日本大震災復興チャリティーイベントとして、これまでを上回る規模で開催されることとなったのだ。

 

実は、プレミアムコンプリートカーを販売する「M’z SPEED(エムズスピード)盛岡」を新たにオープンした背景にも、震災の影響があったいう。

 

電気やガス、水道、そして燃料といったライフラインが遮断される中で、ハイブリッド車の優位性は明らかだった。ガソリンの消費量が少ないだけで なく、いざという時には電源としても活用できるからだ。しかし、エヌズ・ステージでもGMシボレー盛岡でも現在のラインナップにはハイブリッド車が存在し ない。エコカーも扱うべきだと実感した。

 

大阪に本社を置き、現在大阪と千葉にショールームを持つM’z SPEEDを東北でも展開しないか、という提案は以前からあったが、この震災を経て出店を決意したのは、同社がハイブリッドカー「プリウス」をベースとし たコンプリートカーに力を入れていたこと大きな理由のひとつだったのだ。

 

また、皆が肩を落としている今だからこそ、プレミアムなクルマを扱って、東北に活力を与えたい! という意図もあった。震災がなければ、また被災地に直接足を運んでいなければ、そうした判断もなかっただろう、と語る。

 

ジムニー祭りの開催、M’z SPEED盛岡の新規オープン、そして直近ではジムニーに新たな遊びを提案する軽自動車用カーゴトレーラーの新発売と、震災発生後、以前にも増して精力的 に活動する矢羽々代表。すべては「東北にいるからこそ、前を向いて歩いていこう」という想いからだ。