秋の琵琶湖でキャンプ 〜オフロードサービスタニグチ

2023.11.5

    • キャンプ
    • スズキ

秋の夜長を、先代とともに

キャンプに長けた人たちは、道具を積み込んだ荷室がキレイだ。
JB74デモカーで琵琶湖湖畔に現れた谷口 武社長も、まさにそれ!
助手席を倒すことなく、キャリアに積載することもなく
出てくる道具の数々…は、まるでドラえもんのポケットだ。
武氏の作る料理に舌鼓を打ち、夜が更けるまで語らい、朝日を拝みながらのカヤック。
明日からのタニグチにも、ご期待あれ!

自然の中で遊ぶことを生業にしていた谷口社長と、琵琶湖湖畔のキャンプを堪能する

デモカー・ジムニーJB74から、満載されたキャンプ道具の下ろしをひと通り終えると、早速、サイト設営が始まった。ここからは、谷口 武社長の独り舞台だ。
 
まだキャンプ歴の浅いカメラマンへ時折解説を向けながら、タープやテントを立てていく。その速さに撮影が追いつかない。そして、私(筆者)はと云えば、ただ傍観しているだけ。生意気にも手を出そうものなら…。要は足手まといになってしまうほどなのだ。これまで、谷口社長の流れるようなテント設営を何度か拝見したが、今回もまた魅入ってしまった。
 
大学時代を体育会系探検部で過ごし、やがて卒業すると、長良川(岐阜県)でダウンリバー等のガイドを生業としていた。そして谷口守史 前社長が病に倒れると、その志を引き継ぐべくオフロードサービスタニグチへ入社することとなった。やがて代表に就任。デビュー間もないJB64・74用のパーツ開発が一段落すると、同社ショールームの片隅にはアウトドアギアやカヤックが並ぶようになっていた。「元々、これが僕の得意分野でしたからね」。
 
湖畔のテントサイトに設置された道具の数々、そしてサップやパックラフト(カヤック)。いずれも、そのほとんどは同社が取り扱っている製品だ。
 
「ジムニーを購入して愛車をカスタムしたら、次はジムニーを使って遊ぶことじゃないですか! ツーリングや林道、オフローディングを楽しむのでしたら、弊社のパーツを取付けて頂ければ十分なんですけど、ジムニーがアクティビティーを楽しむためのトランポであるならば、これまでアウトドアスポーツに従事してきた者として、その楽しさをお伝えしなければならない。そんな気持ちが、自分の中で芽生えてきたんです」と、アウトドアギアを扱い始めた頃の、気持ちの変化を語ってくれた。
 
漆黒の闇と静寂に包まれたテントサイト。時折吹く琵琶湖からの風に、多少の寒さを感じ始めた身体を焚き火に近づけ、深更まで談義に耽った。リーリスしたばかりの製品や現在開発中のパーツ、そしてタニグチの方向性…。ランタンに照らされた谷口社長は、いつになく雄弁だった。

 

昇る朝日に、サップやカヤックを向けて

AM5:30 起床。
向こうの山並みは確認出来るようになってきたが、辺りはまだ暗い。ウェットスーツに着替え、強ばった身体をほぐしながら…。まるで、部活の合宿シーンのようだ。
 
キャンプ風景をカメラに収めることだけが目的ではなかった。琵琶湖に昇る朝日を浴びながら、サップとカヤックを漕ぐことこそが、私たちが掲げた最大のテーマだった。
 
谷口社長はサップに立ち、私はカヤックにコシを沈め、琵琶湖を進む。プライベートでも谷口社長がガイドとなって、(私にとっては激流の)ホワイトウォーターが続く長良川を下ったりしているのだが、対して、当然ながら琵琶湖は穏やかだ。雲の切れ目から顔を見せ始めた朝日の方向へカヤックを進ませながら、心の中で合掌。いつもよりひと回りもふた回りも大きい太陽を、拝ませて頂いた…。
 
陸へ上がり、谷口社長によるホットサンドとモーニングコーヒーをいただいて…。と、ここまで書くと「取材にかこつけて、ただ遊んでいるだけではないか!」と、お叱りが聞こえてきそうなので、ジムニーファンには嬉しいタニグチの新製品情報を、ふたつ触れておこう。
 
ひとつ目は、「RVレベリングパッド」とネーミングされたレスキュー道具サンドラダーだ。詳細は下段を参照頂きたいが、最大の特徴はレゴブロックのように思いのまま組立てられるということ。縦横に敷いたり、深い溝や轍に幾段か重ねてみることも出来る。さらには、最近はやりの車中泊の際には、車体を水平に調整することもできる…と云うスグレモノ。アイデア次第で、様々な使い方が可能となる。耐荷重も4トンなので、ジムニーオーナーのみならず、多くのヨンク乗りにもオススメしたい。
 
そしてふたつ目は、オンロード性能を追求した20mmアップサスペンションコイル(キット)「SOLVE ACE Ride20」。これまで同社では、JB64用にSOLVE ACE20・40・60の3種類を、一方、JB74用はSOLVE ACE40・60 2種にとどめていた。そこに要望の多かった20mmアップサスペンション(JB64・74共用)が、新たにラインナップされることとなった。こちらもまた、4x4MAGAZINE公式サイトとYouTubeチャンネルで、来月お届けする予定だ。
 
予定していた取材を終え道具たちをデモカーに積み込みむと、私たちは東京へ、谷口社長は姫路へ戻るためキャンプ場での解散となった。自然の中で遊び、ジムニー談義に華を咲かせた二日間。パーツの創り手の脳裏には、なにが浮かんだのだろう。

 

 

「自然を楽しもう!」
長年、長良川でガイドを勤めた谷口社長からの提案

大学時代では体育会系「探検部」に所属し、ラフティングでは日本代表選手として海外遠征にも派遣された谷口 武社長。大学卒業後は、自然豊かな岐阜県の長良川で、ダウンリバーをはじめとするガイドを行なっていた。
そんな谷口社長の経歴を活かし、同社・本社屋の一画には、写真(左)にも写っている「マルチファイアテーブル」をはじめ、「ハンディトライボッド」や「フォールディングファイアグリル」「フォールディングラック」etc.を展示・販売。さらに、軽量ながらも十分な強度と安定感を誇る「パッククラフト」や「サップ」(写真:右)を取り扱う代理店にもなっている。
「ダウンリバーなどのアクティビティーを盛り込んだキャンプイベントも、今後は行なっていきたいんです」と谷口社長。実現の際には、奮って参加されることを、オススメしたい。

 

新発売! 愛車の荷室に備えておきたい『RVレベリングパッド』
10枚セット:¥9,350(税込)

オフロードや砂浜、雪道…での、万一のスタックに備えて携行したい「RVレベリングパッド」。レゴブロックのような構造となっているため、高く積み上げたり、サンドラダーのように直線状に敷いたりと、使い方の自由度が高いことが最大の特徴だ。1枚あたりの大きさはW211×D211×H38.5mmで、重さが280g。10枚を重ねた収納時の高さも268mmとコンパクトゆえ、ぜひ愛車に載せておきたいレスキュー道具だ。耐荷重は4トン。カラーはレッドとなっている。

 

こちらも新発売! オンロード性能を追求した『SOLVE ACE Ride20』
キット:¥158,400/コイル単体:¥46,200(ともに税込)

ジムニーJB64/JB74用20mmアップサスペンションとして、新たにラインナップされた「SOLVE ACE Ride20」。デュアルレート設計の採用により、(柔らかい)第1ばね定数でソフトな乗り心地を確保しつつ、(硬めの)第2ばね定数がコーナリングやワインディング時にコシのある走りを提供する。さらに、サスペンションキットを構成する専用ストロークの「14段調整式ショックアブソーバー」により、オフローディングでも十分な走破性を実現した。
デビューしたばかりの「SOLVE ACE Ride20」の実力度を計るべく、近々、徹底検証を行なうこととなっている。乞う、ご期待!

 

ジムニーに生涯を捧げ、その志を受け継いだ“父子鷹”

1982年3月20日、四駆&ジムニーショップとして兵庫県姫路市で産声を上げた「オフロードサービスタニグチ」。翌’83年、同社初のオリジナルパーツとしてジムニーSJ30用「サイドステップ」を世に送り出して以来、世の中がJAからJBへモデルチェンジをしようとも、つねにジムニー業界のリーダーとして牽引してきた創業者 谷口守史氏が永眠された。享年71歳。
私(筆者)は、4x4MAGAZINEの担当者として幾度となくオフロードサービスタニグチを訪れさせて頂いたが、夜は必ず宴を開いて頂いた。「午前様を大きく過ぎた刻まで、そして心行くまで杯を交わす」が、谷口 前社長との間にあった暗黙のルールだった。偉大で豪快な父の背中を見て育った谷口 武 現社長と、お父様との思い出話にはじまり、パーツ開発やこれからのタニグチについて、琵琶湖からくる心地よい秋の風を感じながら、深更まで語り合った。
「若きリーダー武社長には、十分にあなたのDNAが流れています。温かく見守っていて下さい。心よりご冥福をお祈り申し上げます。そして、これまで本当にありがとうございました」。
(文章:水島 仁/写真:佐久間 清人)

 
オフロードサービスタニグチ
https://www.ors-taniguchi.co.jp/