4代目ジムニー堂々のデビュー

2018.7.7

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復活と進化の融合

スズキ ジムニー&シエラ
SUZUKI JIMNY & SIERRA

ファンの期待に応えた進化
ジムニー&シエラついに新型へ
かくも多くの熱狂的なファンの期待を背負い、しかもその期待にこれだけ正面から応えたフルモデルチェンジがあっただろうか?
と、これが今回の新型ジムニー&シエラに対する率直な印象である。
 
多くのクロカン4×4が“近代化”の名のもとに放棄してきたラダーフレーム+車軸懸架、エンジン縦置きFRレイアウト、副変速機(Loレンジ)付き4×4システムといったメカニズムをしっかり踏襲した新型ジムニー(&シエラ)は、古くからのファンやクロカン性能にこだわるコアなマニアをも納得させるに充分な仕様で登場した。

さて、前回の予告発表と重複するが、ここであらためてそのラインナップを押さえておこう。
軽乗用のジムニー(660)がXC、XL、XGの3グレード、小型乗用シエラ(1.5リッター)がJCとJLの2グレードで、4×2車や商用車の設定は無し。全車とも、4AT/5MTが選択可能だ。
 
ボディーカラーはキネティックイエロー、シフォンアイボリーM、ブリスクブルーM等の新色を含めた全9色を用意。ルーフをブラックとする2トーン仕様はジムニーXCとシエラJCに、そしてキネティックイエローのボディーにルーフ、Aピラー、ボンネットをブラックとする「ブラックトップ2トーン」はジムニーXCのみに設定(受注生産)される。

 


ジムニー660はR06A型搭載
シエラは排気量アップでさらにパワフルに
エンジンはジムニー、シエラとも刷新された。
ジムニー660は、R06A型直3-DOHCガソリンターボを搭載。最大出力47kW/6,000rpm、最大トルク96Nm/3,500rpmというスペックで、先代K6A型に較べて最大トルク値をややダウン(103→96kW)させているが、最高出力の発生回転数を下げる(6,500→6,000rpm)などして扱いやすさを重視したセッティングとした。
また、エンジン本体の幅を60mm縮小し、アルミ製オイルパンの採用等で単体重量も4.8kg軽量化された。
 

一方のシエラは、1.3リッターのM13A型に代わり、1.5リッター直4-DOHCガソリンのK15B型を搭載。最大出力75kW/6,000rpm、最大トルク130Nm/4,000rpmと、M13A型よりそれぞれ10kW/12Nmアップし、単体重量は14.3kgの軽量化を果たしている。
 
トランスミッションは両者とも4速ATと5速MTの二本立てで、ATはゲートパターンが廃止され、オーソドックスな一直線パターンとなった。
 
先代モデル初期型まで存在したトランスファーレバーが復活し、これも直線パターンが採用された。2H(2WD)/4H(4WD)/4L(4WD-L)の切り替えをボタン式の電磁スイッチでなく機械式のレバーで行う方式は、オフローダーにはちょっと嬉しい仕様だ。
 
コンピューターが「必要なときだけ4輪を駆動する」という電子制御に頼った4×4システムは便利かつ効率も良いはずだが、ドライバーには「いつ4駆になっているのか」今イチ分かりづらい。ジムニーが今回も踏襲しているパートタイム4×4というシンプルな4駆システムは、そういった意味でも信頼性は高い。
 
ただし、新型にはABS回路を利用した「ブレーキLSDトラクションコントロール」や「ヒルディセントコントロール」が新採用され、電子制御がドライバーの操作を一部サポートする。
 
前者は、オフロード走行時に空転した車輪にブレーキをかけ、デファレンシャルギアの差動を制限(=LSD効果)して反対側車輪に駆動力を配分する、言わば“自動ブレーキタッピング”。
 
後者は、本来トランスファーにローレンジ設定のない4×4、つまり急勾配を下る際に充分なエンジンブレーキがかからないクルマのための装備である“急勾配で車輪をロックさせずにブレーキをかけてくれる”機構だ。ローレンジを備えるジムニーに必要かどうかは賛否の分かれるところだが、安心装備のひとつとして有効だろう。
 
このほか、坂道発進時のブレーキホールドを行う「ヒルホールドコントロール」も、ベテランドライバーには不要と思われるシステムだが、オフロード走行時にデメリットが無いかどうかの検証はぜひ行いたい。
 
サスペンションも前後3リンク式リジッドアクスル+コイルスプリングという形式が踏襲されたが、クロスメンバーの追加や形状変更が施され、ねじり剛性50%増という新開発ラダーフレームと組み合わされたこともあり、大幅な進化も期待できそうだ。
 


四角いボディーが新鮮!
復活と進化が交錯する新世代ジムニー
スタイリングは、もちろん個人の指向で好みが分かれるところだが、やはりこのスクエアなボディー形状がもたらす恩恵は、クロカン4×4ならではのモノも含めて相当ある。
 
このボディー形状だからこそ実現したルーフドリップの復活は、降雨時の乗降ストレスをずいぶん軽減してくれるし、汎用ステーが使用可能になったことでルーフキャリア/ラック類の選択肢がグンと広がったことも大きい。
 
直立したウインドゥ類は、強烈な夏の太陽光線が車内に射し込むのを最小下に押さえてくれるし、サイドガラスの角度は降雪時、雪塊の堆積を抑え、あるいは落ちやすくしてくれる。
 
そして何より、四角いボディーは車内容積、とりわけ乗員のヘッドルームやカーゴスペースの余裕確保に直結する。ドライバーも車両感覚が掴みやすく、死角も最小限に抑えられた。

 

機能的なインテリアデザイン
実用性重視を感じさせるインパネ
「飾らず、機能に徹した」というインテリアは、なるほど機能性が増している印象だ。
まず、スイッチ類が大きく、操作法がシンプル。いわゆる「分厚い手袋を着用していても操作可能」という実用四駆の心得みたいな意気込みが見えるインパネデザインだけでも、それが確認できる。
 
前述したトランスファーレバーの復活もそうだが、よく見ると助手席側ダッシュボード上に太めのアシストグリップが復活している。スズキの説明によれば、これは主に乗降時に使うもので、走行中に乗員が身体を支えるためのアシストグリップではないとのこと。
 
つまり、公式には「走行中にココを掴んでいると、万一の時シートベルトやエアバッグが正常に機能しないおそれがある」ということらしく、これはあくまでも乗降用…ということらしい。
 
しかし、実際の話、オフロード走行時にここに頑丈なグリップがあることは、乗員にとって非常に有効かつ安全だし、いろいろ使い勝手が良いことは、往年の歴代ジムニー達が証明している。公式にはともかく、個人的にはこのグリップ復活も大いに歓迎したいところである。
 
車内の使い勝手や居住性などに関しては、今後の試乗でじっくりと観察していきたいが、総じてスペースに余裕を持ったデザインとなっていて、実用面でかなり「使えそう」という印象だ。
 
もちろん、この潔いまでに四角いボディーが、メリットだけではなく、走行時の空気抵抗等から燃費や騒音面で不利に作用するケースもあるわけで、その辺りの開発陣の苦労は想像に難くないが、多くのジムニーファンが「よくぞここまで!」と歓迎していることもまた紛れもない事実だろう。
 
細かい点を挙げれば、まだまだご紹介したいポイントは数多くあり、現時点で気づけずにいる点も少なくないと思うが、後は次回以降の本格的な試乗の機会に譲るとして、まずは期待以上に
“ジムニーらしい”新型の誕生を素直に喜びたい。

 


上がジムニー660、下がシエラのインパネ。
水平のラインが基調となっているのは、クルマの傾きを実感しやすいデザインとしたから。スイッチ類が大きく、操作がシンプルなのも特徴のひとつ。

 

助手席アシストグリップの復活もファンには嬉しい。丈夫な造りが飾りでないことを主張している。

 

 

 

 

 

 
始動はボタン式に。車線逸脱警報システムやデュアルセンサーブレーキサポート等の先進安全技術も採用。

 

 

 

 

 

 
5速MT(左)と4速AT(右)のセレクターとトランスファーレバー。
ATはゲートパターンを廃止して直線パターンに。Nポジションのないトランスファーレバーも直線パターンを採用。

 

 

 
フロントシートは前後に30mm、リアシートは同じく40mm、足元スペースが拡がった。
ボディーが四角くなった分、ヘッドルームも横方向の余裕ができた。

 

 

 

 

 

 
ジムニー、シエラとも、ワゴンのみなので、
リアシート使用時の荷室スペースはわずか。
50:50分割のシートバックを倒すのみのシートアレンジだ。
荷室の開口寸法は高さ850mm、
幅(上)1,030mm(下)1,015mm。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
荷室最後部には床下収納が。
ケースごと外すこともできる。

 

 

 

 

 

 

 
リアゲートのヒンジ部分。デザイン的にはムキだしの方が良いような…

 

 

 

 

 

上級グレードでも、前後バンパーにボディー同色塗装は施されていない。
気兼ねなくオフロード走行可能…というのが謳い文句だが、カスタム派にとっても余計なコストがかかっていなくて好都合か。

 

コイル+リジッドアクスル式のフロントサスペンション。ステアリングダンパーが新設された。

 

リアサスペンションも同じくコイル+リジッドアクスル式。最低地上高が先代より5mm増えて205mmとなった(シエラは10mm増えて210mm)。

 

 

 

 

 
タイダウン(固定用)フックが巨大化し、ちょっとした牽引なら使えそうな形状に。