GEOLANDAR 25周年を記念した、フェアレディベースの「Z-ADVENTURE」

2021.2.26

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ジオランダー25周年を象徴する
オールラウンダー
「Z-ADVENTURE」登場!!

4×4・SUVタイヤのスペシャリスト、ヨコハマタイヤの『ジオランダー』が、ブランド誕生から25周年を迎えた。それを記念して、“Mr.ジオランダー” こと塙郁夫選手が完成させたのが、「Z-ADVENTURE」。33インチ外径のマッドテレーンタイヤを履くスタイリッシュで快適な、オールラウンダーなのだ!

レポート:高坂義信/写真:浅井岳男

 

4×4・SUV専用タイヤのベストセラー・ブランド、ヨコハマタイヤの『ジオランダー』が誕生から25周年を迎えた。25年前といえば、空前の4×4ブームも一段落、むしろ一般的なファミリーカーとして4×4が受け入れられ始めた時期だ。しかし当時、アフターマーケットの4×4用タイヤといえば、商業車用タイヤと同じ扱い。ヘビーデューティーではあるものの、日常ユースの快適性などは二の次で、一般ユーザーには近寄りがたい存在だった。
 
そんな中、『ジオランダー』は、ヘビーデューティーな性能はそのままに、乗り心地の良さや静粛性の高さを同時に追求しながら登場。次々と世に送り出される新世代4×4にフィットする新しいコンセプトでスタートし、そのまま歴史と進化を重ねてきた。今でこそ、各タイヤメーカーが4×4タイヤ開発でしのぎを削っているが、そのマーケットを切り開いてきた立て役者として、『ジオランダー』の築いた功績はとても大きい。また “MT=マッドテレーン”、“AT=オールテレーン”、“HT=ハイウェイテレーン” と、4×4タイヤのパフォーマンスを明確に棲み分けるラインナップも、ジオランダーが先鞭をつけたものだ。

 

フェアレディベースの

アドベンチャラスSUV

そんなジオランダー誕生25周年を記念して、そのブランド立ち上げから開発試験、レース出場による実戦テストなどに携わり、“Mr.ジオランダー” と呼ばれる塙郁夫選手が特別な一台を造り上げた。
 
「Z-ADVENTURE」。
 
なんと日産・フェアレディZをベースに、アドベンチャラスなスポーツSUVを完成させてしまったのだ!
「コロナ禍で様々なレースやラリーが中止になってしまって時間があるものだから、それまで頭の中にあったクルマを、実際にカタチにしてみたんだよね」
 
と塙選手。最近の4×4・SUVシーンはまさにクロスオーバー。本格オフロード4×4は健在だが、ほか、たとえばSUVにはふたつのタイプがあるという。ひとつは本格4×4が車高ダウンしてSUVになったタイプ。もうひとつは乗用クーペやステーションワゴンが車高アップしてSUVになったタイプ。つまり “SUVになるため” には2通りのアプローチがあるというのだ。
 
「以前、参戦した “パイクスピーク・ヒルクライム” はそんなマシンが多くて気になっていたし、それに最近の市販車もBMWのX6や、メルセデスのGLEなど、明らかにクーペのシルエットなのに、大きなタイヤを履いてSUVとして仕立てたクルマが存在感を見せているよね。そういえば昔のパリ-ダカールラリーにも、車高を上げたポルシェ953が出場していたよな、なんてね」
 
ちなみに’84年のパリ-ダカではルネ・メッジ駆るポルシェ953 “ロスマンズ・ポルシェ” が総合優勝も果たしている。フェアレディZの車高アップ仕様も、あながち的はずれではない、のだ。
「今回、まずこだわったのはタイヤサイズ。最低地上高や対地アングルを稼ぐためにも(直径)33インチのタイヤを履きたかった。ZはFRだけど、2WDでもこのサイズだとエンジンパワーさえあればクロカン4×4並みに走れてしまうんだ」。
 
なるほど、オフロードレースの最高峰・バハ1000を走るモンスターマシンも、昔から2WD車が多い。

 

セレブなイメージをかき立てる

スタイリッシュな存在感

「それともうひとつ、フェアレディZのスタイリッシュなフォルムを絶対、崩したくなかった。スポーツカーの車高を上げるカスタムだと、オモチャっぽくなってしまう例が多いんだけど、そうはしたくなかった。あくまでヨーロッパの余裕あるお金持ちが、砂漠をツーリングしながらアフリカの高級ホテルに乗りつけるようなクルマ、を目指したんだ」
 
ちなみに車高アップはわずか50㎜。Zの純正タイヤは外径約680㎜、一方、今回装着の33インチタイヤは約830㎜で、150㎜も大きい。さらにタイヤ幅も広く、装着できるようにするには相当な苦労があったはずだ。
「フォルムをキープするために、とにかくインナーフェンダーを可能な限り切りつめてね。外側の前後フェンダーはワンオフ製作で、片側50㎜ワイドに収まっている」
 
ワイド&ローなシルエットだが、最低地上高は実に250㎜を確保。実際、オフロードコースのモーグルを走らせてくれたが、塙選手が操るとFR車も普通のクロカン4×4並み……いや、それ以上の走破力を見せてくれた! 下周りをヒットさせることもなく、またタイヤの空転もほとんどなく、コースを走り切ってしまったのだ。
「ただ、やっぱりFRだから、スタックの可能性は4×4より大きい。だからウインチも搭載しているし、サンドラダーもGTウイング風に積んでおいたよ」
 
もちろん、通常のオンロード走行は快適そのもの! フェアレディZはこれがノーマルだったんじゃないか? と思えるほどZ-ADVENTUREは街を駆け抜けていく。普通のZのほうがシャコタンに見え、違和感が出てくるから不思議だ。
「このZ-ADVENTUREでレースやラリーに出ることは考えていないよ。ナンバーも取得しているし、普段、快適な移動手段にしたり、レースカーを載せたトレーラーを引っ張ったり。こんなクルマを、還暦のおじさんが乗りこなしているって、ステキだろ!」

 

塙 郁夫(はなわ いくお)

1960年生まれ。国内外のオフロードレース、ラリーなどで活躍するプロ・オフロードレーサーであり、自らマシンも製作するビルダーでもある。
「ジオランダー」開発に当初から携わり、実戦などでその製品品質を磨き上げてきた。

 

 

 

 

GEOLANDAR M/T G003

今回Z-ADVENTUREに装着されたのは、ジオランダーのフラッグシップ「ジオランダーM/T G003」。多くのオフローダーからの支持を集める本格マッドテレーンモデルだ。ラージメッシュ・ラググルーブ、シーケンシャルサイプなどを採用し、泥や岩への安定したトラクション性能が持ち味。37インチ外径から軽トラ用など、幅広いサイズラインアップも魅力だ。もちろんジオランダーにはこの他、オールテレーンモデルや、ヨコハマの先進技術「ブルーアース・テクノロジー」を採用したモデルなど、個性的な計7つのモデルが揃う。

 

ベースとなったフェアレディZのフォルムは絶対残したかった、と塙選手。サスペンションは大仰なリフトアップはせず、アームの変更をメインに50㎜だけ車高をアップ。タイヤ外径は純正に比べ150㎜大きくなっている。最低地上高は実に250㎜を稼ぐ。フェンダーは片側50㎜ワイド。

 

パワートレーンはフェアレディZそのまま。エンジンは3.7ℓ V6、トランスミッションは7速ATだ。スペックは336ps & 37.2kg-m。ファイナルは3.4から4.3に変更。33インチタイヤ装着でも、まだノーマルより7%ローギアードだ。リアデフにはOS技研のLSDも装着。

 

タイヤはジオランダーM/T G003の、フロントにはLT255/75R17を、リアには33×12.50R17 LTを装着。外径は前後でほぼ同等、この大径ファットタイヤを履かせるため、インナーフェンダーは大がかりな加工がされている。

 

 

 

 

 

 

サスペンションは基本的に四輪独立懸架式を踏襲。ただしアーム類を中心に変更され、約50㎜のリフトアップを実現。スプリング&ショックアブソーバーはKINGのコイルオーバー式&リザーバータンク付きに変更。
かなりレーシーな造り込みだが、レースなどに出場するわけでなく、あくまで快適な日常ユースを目指したという。

 

フロントセクションにはウインチも搭載。FRのため、攻めすぎた場合、スタックの可能性も……。自力で脱出するためのアイテムだ。ナイロンワイヤ仕様、ジムニー用などと同等の1.5トンクラスの性能だ。

 

フロントアンダーにはプロスペックのJAOS製ガードも装備。エンジン下を屈強に保護する。

 

 

 

 

 

 

リアにはヒッチメンバーも。
実際、今回はスモールクラスのレースマシンを載せたトレーラーを引いてもらったが、こうした使い方もできるのが、Z-ADVENTUREのパフォーマンスなのだ。

 

 

 

リアエンドには、自力脱出のためのサンドラダーも。
積載時、リアウイングスポイラーのように見える製品を選んだのだという。なかなかスタイリッシュ!

 

 

 

 

ラゲッジスペースにはスペアタイヤを1本積載。前後でタイヤサイズが異なるが、太いとフロントには履けないので、サイズはフロント用のLT255/75R17をチョイス。
 

 

 

 

インテリアは基本的にノーマルのまま。あくまでグランドツアラーとしての快適さが優先されている。
シートはBRIDEのセミバケット式に変更、CAMO柄の4点式シートベルトは特注品。

 

今どきのクーペタイプSUVそのもののフォルム。日常ユースでもまったく不便はないし、高速道路の走りも快速&快適だ。フォルムのバランスが良すぎるので、ノーマルのZがシャコタンに見えて違和感があるほど!

 
そのままオフロードレースやラリーでも通用しそうな走り。今回は深めの砂地も走ってみたが、塙選手の走りならFRでもハマる気配なし! 33インチタイヤが前提となった理由がよく分かる。

 

オフロードコースのモーグルセクションを走る。ボディーディメンションやサスペンションストロークの不足は心配だったが、塙選手はボディーヒットもタイヤの空転もなくセクションをクリア。ジオランダーM/T G003のトラクション性能に助けられた部分もあった、とのこと。