Rubber Sole『OPEN COUNTRY R/T TRAIL』
2025.4.15
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タイヤ
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トヨタ
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よりアグレッシブ、なのにより快適
SUVタイヤの新境地を拓くタフネスR/T
マッドテレーンとオールテレーン、それぞれの長所を兼ね備えた新カテゴリーの4×4&SUVタイヤとして人気を集める「TOYOオープンカントリーR/T」。
そのシリーズに新たなラインナップが加わった。
サステナブル素材を採用しながら、オンロードをより快適に、またオフロードをよりタフネスに駆け抜けるために生まれた「オープンカントリーR/T TRAIL(トレイル)」だ。
よりオンロードの快適性を追求した
大型4×4向けラギッドテレーン
マッドテレーンタイヤ(M/T)のようなアグレッシブなデザインを採用しながら、オールテレーンタイヤ(A/T)のような快適な乗り味を提供。M/TとA/Tの長所を兼ね備えた新しいカテゴリーのタイヤ “ラギッドテレーン(R/T)” として人気を集めているトーヨー「オープンカントリーR/T」だが、今回、また新たなモデルがシリーズに追加された。再生ビードワイヤーなどサステナブルな素材を採用した「オープンカントリーR/T TRAIL(トレイル)」だ。
メーカーによるとTRAILの位置づけはオープンカントリーR/TとオープンカントリーA/T III(エーティースリー、オープンカントリーのA/Tモデル)の間を埋めるもの、つまりR/Tより少しオンロード指向とのことだが、レポーターとしてはちょっと疑問が残る。
その理由は、まずトレッドデザインを見ると、従来のR/Tよりブロックの1つ1つが大型になり、溝面積が増えているように思えるから。タテ方向には太い溝のジグザグワイドグルーブが刻まれ、横方向にもラテラルジグザグワイドグルーブがはっきりと現出している。タテ、ヨコとも路面を捉えるエッジ成分は、R/Tより明らかに増加していて、要するにオフロード指向が高められているように印象づけられるからだ。
ちなみにサイズラインナップはタイヤ幅265~285㎜、リム径16~20インチという大径サイズが中心。すべてLT規格サイズで、ランドクルーザーやJeep、ディフェンダーなど大型4×4をターゲットにしている。従来からのオープンカントリーR/Tはジムニー、ハスラーなど軽自動車SUVからミドルサイズSUV、大型SUVまでをターゲットにしたラインナップで、ホワイトレター仕様なども人気だが、TRAILに関しては今のところ、小型向けやホワイトレターの設定は考えていない、とのこと。その意味でも本格指向のユーザー向けで、よりオフロード指向が高い、とも言えそうなのだが……。
荒々しいトレッドからは想像できない
しなやかな乗り心地と静粛性の高さ!
ラギッドテレーンのカテゴリーを、さらに細分化したキャラクターを持つ「オープンカントリーR/T TRAIL」。メーカーによれば、よりA/Tに寄せた性能を持つというが、さて実際はどうだろう? さっそく試乗してみよう。
試乗車両はランドクルーザー250・ガソリン搭載車、装着したTRAILのサイズはLT275/70R18 125/122Q、プライ数は10PR。負荷能力の高さ、プライ数の多さを見ても、かなり屈強なタイヤで、しかもトレッドパターンはワイルドそのもの。乗り心地は、相当硬くなってしまっているのでは? と想像できるのだが……。
しかし、オンロードを走らせてみると、そんな想像は吹き飛んでしまった! 乗り味はフラットそのもので、まったくゴツゴツしたところもない。タイヤノイズもほとんど発生せず、中速域から上では、参考までに比較試乗したオープンカントリーR/Tよりも静かなほどだ。エア圧はLTタイヤということで純正指定(230kPa)より高めの320kPaに設定されていたが、路面からの衝撃をタイヤ全体がしなやかに受け止め、快適な乗り心地を提供してくれる。ロングドライブもストレスないだろう。もちろんタイヤ構造がしっかりしているので、ハンドリングの反応も良好。ワインディングも楽しく走れる。
なるほど、メーカーが “R/TとA/T IIIの中間的なキャラクター” と位置づけるのも、この時初めて頷くことができた。見た目は荒々しいが、このタイヤサイズに限っては間違いなくオンロード指向はR/Tより強まっているように思えたのだ。
M/Tに匹敵すると思える
オフロード性能の高さ
オンロード性能を強化……。ではオフロードでのパフォーマンスはどうだろう? ここも車両は異なるが、同じランクル250・ディーゼル仕様に装着。オフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」で試してみた。サイズはオンロードで乗ったLT275/70R18で同じ、エア圧もLTタイヤの荷重能力を最大限に発揮できる320kPaという、純正より高めの数値に設定している。4x4MAGAZINE読者の皆さんなら“オフロード走行時はエア圧を下げるよ”なんて方が多そうだが、ここはあえて推奨エア圧の320kPaだ。
「さなげ」のコースは外周路のみの対応だったが、一般的なダートはもとより、ウェットな場所や、ガレ場、砂利の浮いた所の駆け上がり、急登坂、急勾配の下りなどがあり、タイヤにとっては厳しいシチュエーションが次々と現れる。しかし、こんなシーンの各所でオープンカントリーR/T TRAILは頼もしい走りを披露してくれた。
まず印象的だったのはタテ方向のトラクションの強さだ。路面がウェットで緩めの登りでは、蹴り返しの強さを見せる。意地悪く登り斜面の途中から発進を試みても、ほとんどスリップする様子がなく、路面を噛むようにクルマを上に押し上げる。また、砂利の浮いた斜度30度の下り。下りながらブレーキをグッと踏み込むと、そのままカチっと止まってくれる。M/Tならこんな具合だろうが、A/Tだとズルっと滑ってしまうようなシーンだ。つまりM/T並みの安心感をTRAILは見せてくれたのだ。
さらにステアケースのような場所を斜めに駆け上がったり,下ったりする場面。とくに下りはタイヤがズルっと滑ってしまいそうで、ドライバーにとっては怖いシチュエーションだがTRAILはしっかり、横方向にも踏ん張ってくれた。ここでの安心感もM/Tタイヤのレベルといっていいもので、オフロードの戦闘能力はかなり高いと言える。
バハ1000でも証明された
トータル性能の高さ
ちなみにこの「オープンカントリーR/T TRAIL」、2024年のアメリカン・デザートレース「バハ1000」において、レクサスLX600で参戦した “TEAM JAOS” が装着して、ストック・フルサイズ部門でみごと完走、クラス優勝を果たしている! もちろん、それはTRAILの耐久性や走破性を証明するもの、と言っていいだろう。
そして今回の取材当日、TEAM JAOSのドライバーを努めた能戸知徳選手が、実際のバハマシンに同乗させてくれた! かなりハイスピードで「さなげ」の、外周路より荒れた場所を駆け抜けてくれたが、コーナリング時の安定感や、乗り心地の良さを再確認できた。
「バハ1000に参戦する前に、オープンカントリーのM/T、R/T、そしてこのR/T TRAILをテストしたんですが、やはりTRAILが一番バランスがよかった。バハは意外と砂漠が多いんですが、M/Tだと掘りすぎてしまうこともあるので。結果、ソロドライブで29時間以内に完走することができました。タイヤ交換も、一度もなかったんですよ!」
能戸選手のお話が、オープンカントリーR/T TRAILというタイヤをすべてを語ってくれているかもしれない。
長時間ドライブも安心、快適にこなしてくれて、タフな耐久性、高いオフロード性能。冒頭、R/TとA/Tの中間的キャラクターとは言ったが、もはやそんなことは関係なく、TRAILはすべての性能に秀でた、唯一無比の4×4タイヤ、と言えるかもしれない。
(文:高坂義信/写真提供:TOYOTIRES)
タテ方向にジグザグワイドグルーブ、ヨコ方向にラテラルジグザグワイドグルーブをメインに刻み、バランスのいいトラクション性能を発揮。3バリアブルピッチを採用するなど、パターンノイズの低減や快適な乗り味に寄与する技術も多数採用する。
ディープバットレスデザイン、バイティングエッジなど、実性能の向上とアグレッシブな見栄えに貢献するショルダーからサイド部。内部にはサステナブル素材である再生ビードワイヤーも採用する。
アグレッシブな外観からは想像できないほど、オンロードの走りは静かでしなやか。とくに中速域から上での静粛性の高さは印象的だ。タイヤの構造もしっかりしているので、ハンドリングにもリニア感がある。長距離ドライブもストレスがなさそう。
同サイズの「オープンカントリーR/T」に試乗。こちらは路面への当たりが柔らかめで、もちろん乗り心地は良好だ。静粛性の高さも特筆ものだが、このサイズではスピードが上がった時、TRAILのほうが静かだと感じた。
コーナーを伴った急登坂でも、ハンドルがしっかり効いてくれるし、リヤも簡単にグリップを失わない。トラクションをしっかり確保しながら、グイグイクルマを上に押し上げていった。
溝が大きく、ブロックのひとつひとつが大きなトレッドは、M/Tのようなトラクションを発揮。ウェットな路面でもタイヤが路面を噛み込むような安心感がある。
当初、オンロード寄りとの説明を受けたが、オフロード性能の高さも確認できた。ガレ場や河原、林道などにも安心して踏み込んでいけるパフォーマンス、そして秀でたオンロードの快適性は、もはや真の意味での “オールテレーン” と呼べるかも!普段乗りの快適さと本格オフロード性能を満たす、希有なタイヤの誕生だ。
「さなげ」の名物でもある斜度30度のヒルダウン。路面も緩く、下っていくとクルマが思いもしない方向に向いてしまうこともある怖い場面だが、TRAILはしっかり路面を捉えてくれた。途中、ブレーキを踏むと、クルマをカチっと停めてくれるほどのグリップの強さを発揮。
’24年11月に開催されたアメリカンデザートレース「バハ1000」でクラス優勝を果たした「TEAM JAOS」のレクサスLX600。装着タイヤはオープンカントリーR/T TRAIL(37×12.50R17LT=日本未発売)で、29時間・1000マイルのハードなレースをタイヤ無交換で走りきった。
’24バハ1000を、たった一人のドライブで完走・クラス優勝を果たした「TEAM JAOS」能戸知徳選手。’21年からオープンカントリーのアンバサダーも務める。