【INTERVIEW】TOYOTA LAND CRUISER 300 開発主査に聞く
2021.10.28
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インタビュー
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トヨタ
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「スタートは “素性の刷新” からでした」
さらなる電子制御技術の投入と、シャーシやボディーなど基本部分の見直し等によって大きく進化したランドクルーザー。今回その開発の先頭に立ち指揮を執ったトヨタ自動車:森津圭太氏にお話をうかがった。
森津圭太(もりつ けいた)
Mid-size Vehicle Company
BR LC製品化室 主査
1999年トヨタ自動車入社。
2006年までボディー設計(主にアンダーボディー系)に携わり、2006年以降は北米モデル(主にRX)の開発、カムリの商品企画等を経た後、タコマや4ランナーも含めたSUVの開発責任者として現在に至る。
4×4:今回のオフロード試乗では、とりわけ電子制御デバイスの大幅な進化が印象的でした。
目指したポイントとは?
森津主査(以下、敬称略):簡単に言うと “動いて(作動して)いることを感じさせない制御” を目指しました。ドライバーが違和感を覚えることなく、ごく自然に効果を発揮している…といったような。
クロールコントロールの速度設定などで言うと、先代の200系では、例えば「速度1」から「速度2」に切り換えると、直ちにスパッとその速度に到達させるような制御でした。
しかし、300系では路面の状況に合わせてジワッと速度を上げるような制御にしたんです。減速の場合も穏やかに速度を落とす感じで、スイッチ操作で切り換えた途端、急激に変化するということをなくしました。
4×4:それはハードウェアの進化によって可能になった、ということなんでしょうか?
森津:もちろんハードウェアもそうですが、一番は “制御” でしょうか。
今までの技術ですと、ブレーキだとかサスペンションだとか、そういったものを単独で制御していたんですね。それが最新の技術では、それらを統合的に制御してクルマを動かすことができるようになった、ということなんです。そして、それには各種センサーであるとか、カメラ、レーダー等によるセンシング技術の発達も大きく寄与しているわけです。
したがって、クルマの情報を、よりきめ細やかに伝えて、それを統合的な制御をもってより滑らかで自然なクルマの動きに繋げられるようになった、ということですね。
4×4:今回のオフロード試乗では、AVSやE-KDSSといった電子制御デバイスの設定がないモデルと、それらを標準装備するモデルとの比較ができ、その違いがしっかり体感できました。
ただ、このサスペンションに関しては、電子制御以外の部分にも基本性能の高さを感じたのですが…。
森津:この300系を作り込んでいくにあたって、まずは「素のポテンシャルを磨く」あるいは「素性の刷新」ということをテーマに掲げて開発に取り組みました。
その結果がまさにAXやVXグレードでの試乗で体感していただけた部分かと思います。もちろんこれはサスペンションだけの話ではなく、例えば、鋼材や構造の見直し等によるフレームの強化であったり、ボディーの軽量化や低重心化、悪路走破のためのディメンジョンの刷新なども全て含めての話ですね。
4×4:今後、例えば北米でこの9月にリリースされたタンドラ(2022年モデル)に搭載の3.5リッターツインターボV6ハイブリッドのような、さらにハイパワーなエンジンが搭載される可能性はありますか?
森津:もともと立ち上げの段階でも、ハイブリッド搭載の検討は行いました。
トヨタのハイブリッドシステムは非常に品質もポテンシャルも高いと考えていますが、ランクルというクルマの使命として「世界中どこにでも行けて、必ず帰って来られる」ことを最優先に考慮すべき、という考え方があります。そういう意味では、僻地と呼ばれる地域で万が一故障した場合、修理できるのか? という問題もあったため、その段階ではハイブリッド搭載は見送る、という形になりました。
しかし、もちろん今後はカーボン・ニュートラル等の対策も進めていく中で、ランクルに相応しいハイブリッドシステム、あるいは電動化のシステムはしっかりと導入を検討していきたいと考えています。
(文:内藤知己/写真:佐久間清人)
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