ジオランダー X-AT × TRDハイラックス「全日本ダートトライアル 第3戦」

2021.5.19

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    • トヨタ

TRDハイラックスが全日本ダートトライアルに殴り込み!?
ジオランダーX-ATの真価が問われる全開走行

モータースポーツで活躍するハイラックス

皆さんは、全開で走るハイラックスを見たことがありますか?
 
世界戦略車として世界6カ国で生産され、180カ国以上の地域に供給されている トヨタ・ハイラックス。 働くクルマとしてだけでなく趣味のクルマとしても人気が高い車種ですが、近年はクロスカントリーラリーやサーキットのレースでも目にする機会が多くなっています。
 
クロスカントリーラリーといえば、日本ではパジェロやランドクルーザーのようなSUVタイプの競技車両がお馴染みですが、海外では10年近く前からピックアップタイプの車両で参戦することが流行ってきています。2019年のダカールラリーを制したのもトヨタ・ハイラックスですし、アジアクロスカントリーラリーでライバルのイスズ・D-MAXと激戦を繰り広げているTRDのハイラックスなども有名ですね。
 
ピックアップトラックはただ頑丈なだけでなく、近年は搭載エンジンのハイパワー化が進み、また荷台を簡単に取り外せるなど改造や軽量化が容易なことなどから、モータースポーツを楽しむ素材としてもメジャーになってきています。

 

全日本ダートトライアルへの参戦

こうしたハイラックスの魅力やモータースポーツの文化をニッポンにも伝えるべく、競技用ハイラックスを知り尽くしたTRDが新たな挑戦を始めました。なんと、ダートトライアルの全日本戦に殴り込みをかけてきたのです。
 
4月24〜25日。丸和オートランド那須(栃木県)にて「全日本ダートトライアル選手権 第3戦」が行われたのですが、この大会にもハイラックスによる走行がエキシビションとして設定されていました。
 
そして4人のプロドライバーによる本気モードのタイムアタックが行われ、ダートラファンの皆さんからも注目を浴びていました。彼らにとっても重量級のクロスカントリーマシンが、コース狭しと暴れまわる姿を見るのは初めてだったのかもしれません。
 
殴り込みといっても、実際にはインプレッサやランエボといった軽量ハイパワーな乗用四駆に対し、ハイラックスがレコードタイムで勝ることはありません。でも、ダートトライアルはもともと排気量や駆動輪の種別などによって、細かくクラス分けがなされている競技です。したがって、現場でもハイラックス同士のクラス戦として認知されていました。とは言え、ハイラックスは2WDマシンの中段以降のタイムに肉薄するほど速かったのですが。

 

装着タイヤはジオランダーX-AT

さて、このハイラックスの足を支えていたのが、ヨコハマタイヤのジオランダーX-ATです。サイズは純正と同じ呼びサイズのLT265/65R17。2020年に追加された両面ブラックレターのモデルです。 
 
ご存知の通り、X-ATは ジオランダーA/T G015とジオランダーM/T G003の中間の味付けを狙って、2019年夏から発売された比較的新しい銘柄です。その開発コンセプトから、我々は当初 “見た目重視の中途半端なATタイヤ” か? との意識を拭い切れなかったのですが、ジムニーやデリカなど様々な車種でテストを繰り返すうちに、マッドタイヤよりオンロードでの直進性やハンドリング、グリップ性能に優れ、乗り心地や騒音の面でもなかなか快適なことが判明。
 
アグレッシブな外観の魅力と相まって、普段使いプラスαで、たまにオフロードへ行くようなスタッフやライターたちがこぞってX-ATを支持。今では「愛車に履かせるならX-AT!」の大合唱……と、なかなか罪なタイヤだったりするのです。ちなみに私はA/T G015派です。
 

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このX-ATが重量級のハイラックスに組み合わされ、全日本戦の大舞台でプロドライバーによるハードなタイムアタックを受けるのです。
 
4月上旬、福岡県で開催された「第2戦」では、ジオランダーA/T G015が使われていたとの情報。これはつまり、プロドライバーから “2種類のジオランダーの比較インプレッション” が強いられることを意味します。取材しないワケには参りません。というワケで、実際に観戦してきました。
 
ちなみに、ハイラックスチームの監督を務めるTRD事業部 柏村勝敏さん、当日のトップタイムを記録したレーシングドライバー平塚忠博選手、横浜タイヤでジオランダーのプロジェクトを担当している小島弘行さんという、3人のキーマンにインタビューを行い、まとめたものが冒頭の映像です。
 
実のところ、今回の丸和のようにアスファルトとダート路が入り混じり、競技前に水をまかねばならぬほど乾燥した路面では、コンパウンドが柔らかく、グリップの高いジオランダーA/T G015の方が扱いやすいのではないか? と予想されていたのですが、ふたを開けてみると、剛性感に優るX-ATは路面からのインフォメーションがわかりやすく、コントロールしやすいとの意見が飛び交いました。
 
ただ、前回A/T G015で参戦した「第2戦」が極悪マッドコンディションだったとのことで、同一コンディションにおける比較インプレにはなりませんでしたが、それでも大変得難い収穫となりました。

 

とても貴重なATタイヤの競技インプレッション

アジアクロスカントリーラリーなど雨期に行われるラリーではMTタイヤの装着が当たり前で、ATタイヤの出る幕などないようなイメージですが、実際はそう単純なものではありません。
 
スタートからゴールまで延々と乾燥路が続く場合(実際によくあります)では、ATタイヤの方が速く走れることは分かっているのですが、ルートの途中にわずか数十メートルのマッド路面があったとして、そこでスタックしてしまっては元も子もないため、安全マージンをとってマッドタイヤを選択するというのが、実際のところです。また、マッドタイヤはサイドウォールの構造が頑丈で、サイドカット等によるバースト(パンク)にも強い一面があり、これも競技でのタイヤ選びに大きく影響していました。
 
ところが、X-ATはサイドカットに強く、ある程度のマッド路面も走ってしまいます。そして、乾燥路面での感触も良いとなれば、今後のクロスカントリーラリーの世界で、大きく活躍する可能性も出てくるのです。
 
こうしたインプレッションやタイヤ選びの考え方は、趣味でタイヤを選ぶユーザーには、たいへん参考になると思います。ほぼオンロード用途のHTタイヤを除き、MTタイヤかATタイヤか二択しかなかった状況から、用途や自分の好みに応じて、3種類のタイヤから選択することが可能となっているのですから。
 
私たち取材班は、次にハイラックスが参戦する全日本戦にも同行し、より詳しい取材を行っていきたいと考えています。その際にはハイラックスの競技車両の紹介も行う予定です。

 

見る競技としても楽しいダートトライアル

最後に、ダートトライアル全日本戦の観戦が、とても面白かったことを付け加えておきます。
 
ダートトライアルは、もともとラリーのSS区間だけを抜き出して純粋なタイム競技として始まったものだと言われています。極論すれば2分間だけ車両が持てばよく、その分、ラリーよりアグレッシブな走り方になることが多いようです。
 
また、ラリーではスタートかゴールか、あるいは途中区間を高速で通り過ぎるマシンを一度しか見ることができませんが、ダートトライアルではその走りを間近で、より長く見ることが可能です。緊張感の張り詰めた空気の中で行われる “一発勝負の走り” は見ていて爽快ですし、すぐにタイムが発表され順位が確定していく様も “見る競技” としての楽しさに溢れています。特に今回取材した丸和のコースはすり鉢状の地形の下に設定されており、スタートからゴールまですべての走りを堪能することができたのです。
 
これは、クロスカントリーラリーの取材に慣れていた私達にとっても、とても新鮮な体験でした。皆さんもご都合と状況が合えばぜひ、ダートトライアルの会場に足を運んでみてください。ハイラックスによるエキシビションが行われるかどうかは、事前に情報を集めて確認しておいてくださいね。
 
それでは皆さん、次のレポートをお楽しみに!
(レポート:河村 大)

 

昨年秋に発売されたばかりのトヨタ・GRヤリスも複数台出走していた。ADVANカラーのゼッケン62番は宝田ケンシロー選手。ランサーばかりのJD6クラスで健闘していた。

 

 

 

 

 

今回の動画では、以下3名のキーマンにお話しを伺っています。詳細は映像をご覧下さい!

 

トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
TRD事業部 第2MS事業室
室長 柏村勝敏さん

アジアクロスカントリーラリーの現場で陣頭指揮を執っていた柏村さんには、なぜハイラックスを全日本ダートトライアルで走らせるようになったのかを伺いました。 実はレギュレーションの変更によってハイラックスが走れるようになった!? ということにも触れています。

 

 

 

レーシングドライバー
平塚忠博さん

平塚さんは、全日本ラリーと全日本ダートトライアルの両部門でチャンピオンを獲得した経歴を持ち、“土系” のトップドライバーとして知られています。前回の大会で使用したジオランダーA/T G015と今回使用したX-ATの感触はどう違うのか、詳しく教えていただきました。

 

 

横浜ゴム株式会社
消費財製品企画部 製品企画3グループ
グループリーダー 小島弘行さん

ヨコハマタイヤのジオランダーシリーズを長年担当してきた小島さんには、平塚選手のコメントを踏まえ、ジオランダーA/T G015とX-ATが具体的にどう違うのか、トレッドゴムの硬さや構造面などの観点からコメントをいただきました。

 

 

参考サイト

■JAFが主催するダートトライアルの概説ページ
http://jaf-sports.jp/motorsports/dirttrial/ 
■今回の丸和オートランド那須の第3戦を紹介するページ
https://dirt-nasu.com 
■TRDハイラックスの競技車両を紹介するページ
https://trd-motorsports.jp/competition/hilux.html
■GEOLANDAR 公式サイト
https://www.y-yokohama.com/brand/tire/geolandar/